本来なら途方もなく不器用な俳優志願の男の役柄が、仁科貴にはハマリ役だったんだろう。映画をたまたま一発だけ当てたワガママ監督の役柄も意外に合っていた。いや、序盤はちょっと無理があるようにも見えた。(ヒゲとメガネのせいかも知れないが)そして、だんだん仁科本人の不器用さが露呈するとともに、俳優志願男とココロの融合が見えてくる。ここで、エドワード・オルビーの戯曲「動物園物語」を思い出した。(概要省略)あの戯曲のラストのように、カタストロフィーにもハッピーエンドにも取れるエンディングに持っていけたら10点だったのだが。このあっさりしたエンディングは昭和の男にとっては9点。仁科貴好演。他の出演者も、かなりの稽古量が忍ばれる自然な演技。仁科のイキツケの(たぶん)ゴールデン街の店のママは、俺好みで100点!
と書き終わろうと思ったのだが、この映画から伝わってくる「熱さ」は、今どこまで、どういうふうに伝わるのだろうか。俺のような昭和の演劇人は、アツイ男やアツイ話は大好物なのだが、今は「暑苦しく」感じるのではないか。だとしたら、エンディングは仁科の台詞のように「芝居、うまくなったな・・・」だけでもいいのか。「うるせー!いい映画(と書いてこの場合はシャシンと読む。※ホンペンでも可)撮れよ!」と、仁科は殴り倒される。もしくは刺される(武器は、手につかんだ沢蟹などで)。海に投げ出された仁科はカナヅチ。溺死寸前で「撮る!撮る!撮るからタスケテー!」と叫びながらエンドロール。などと自分勝手なラストを妄想してしまったぞ。これも映画の味わいのひとつか。今夜はゴールデン街に進出決定。ホナサイナラ。