1989年。バブル絶頂だったときの勢いで作った、実質上最期の「座頭市」。
勝さんの映画制作手法は、人聞きと各種の本からだいたい知っているつもりだが、いやはや、これどうやって撮ったんだろう。現場の大変さが、「撮影ノート」だけでは伝わってこない。
それだけ1シーンの密度が濃い。三木のり平さんとのシーンなんて、ほぼアドリブ合戦だ。緒形拳さんとの丁々発止の間合い。これ武士同士の間合いに通ずると観れる。ヒロイン“うめ”役の女の子の、アクのない演技。当時売れっ子だった陣内さんのブッチギレ方。俺の嫌いな鶴太郎でさえも、渾身込めた芝居がイイ。川谷さんがちょこっと出てるのも(アップが無いのに)イイ。エキストラの動き、いや芝居もいうことなし。黒澤の「影武者」を降ろされて、コカインで捕まらなかったら…勝新は何を魅せてくれていたのだろうか。いやこれ金払って観るのがいいな。現場に居たらタイヘンだぞ。