あれは一昨年だったろうか。旧友が出演するというので作・演出が岩松了さんの芝居を下北沢スズナリに観に行った。劇場に入ったら、何かヘンな緊張感が漂っている。客入れの音楽が掛かってないのだ。作る側の思いがこもり過ぎたBGMを聞かされるより、静かでこれもまたオツなもんだと思っていたのだが、芝居が始まったら徹頭徹尾、ワケが分からない。内容が。全員日本語で喋っているのに、何をやっとるのかサッパリわからんのだ。上演時間が確か2時間半程。休憩もあり。エンディングも突然やってきて一同礼でハイオシマイ。終演後、出演していた旧友とイッパイ呑み、率直に聴いてみた。「何をやってるのかサッパリわかんないんだけど、出演者はわかってるのか?」「実は私達もわからないんです」との答え。いちど稽古中に某女優さんが演出家に設定等の意味を聞いたら、「そんなの俺にもワカンネエよ!」と激昂したそうだ。
洋楽を聴いて、歌詞の意味がわからないのに感動することがある。そんなとこか。こういうのは。
で、今回のカニクソ公演。様々なキーワードや言語をブッ飛ばした脚本と演出で、ラストに謎解きが明かされるというのはパンクな趣向でオモシロい。しかしそれがカタルシスを迎えなきゃ、後味が悪い。一部の商業演劇のようにすべて説明されるのもウンザリだけど、モヤモヤが残ったまま客を帰すのは如何なモノか。少なくとも僕はそうだった。チャレンジは買うのだが。未見だけど、大川興業の暗闇演劇もあるし。もっと練った再演を乞う。谷村好一好演。