中国の新きょうウイグル自治区で大虐殺が起きた。
実はその首都ウルムチに映画『モンゴル』の撮影で一昨年6度訪れたことがある。
北京から飛行機で8時間あまり、撮影場所である奥地にいくためにはウルムチのホテルで一泊まる必要があった。
今迄訪れたどこに都市にも似ていない街がウルムチだった。
ここが中国かと言えば、北京や上海とは全然違う。
大きなマーケットに出かけるとシルクロードの世界で、広場では上を見ると『マン・オン・ザ・ワイヤー』のように綱渡りをしている人がいて、ビアガーデンのステージでは中国歌謡とは違うイスラム圏の歌謡ショーが行われ、露天ではザクロの絞り立てのジュースが売られている。
建物の屋根はアラビアンナイトの丸い屋根といった具合だ。僕は、わずかな滞在時間だったがその街に魅せられ、どこ迄も続くマーケットを夜中じゅう歩いた。
撮影の帰りに再び立ち寄った時にはシネコンに入りそこでアメリカのサスペンス映画をウルムチ市民といっしょに観た記憶がある。
とにかく巨大な都市でどこまでいっても歌舞伎町と新橋のような雰囲気の街が続き活気に溢れていた。運転手は、経済成長が著しくいろんな物が値上がっていると嘆いていた。その経済成長の亀裂が今回の騒乱の原因となった。
街を歩くとウイグル人と漢人がミックスしていたが僕が惹かれた文化はウイグル人たちの文化だった。
ウイグル地区の資源を求めて漢族が東から移住し、ウイグル人は労働者として使われて来たのだ。
チベット自治区と同じく地下資源が豊富なのが新きょうウイグル自治区だった。
ホテルのロビーには二つの時計が掲げられている。一つは北京時間、一つはウルムチ時間。時差は2時間。ウルムチの9時は北京ではまだ7時だ。アメリカではニューヨークと西海岸のロスアンジェルスでは時差が3時間あり、時間も違う。しかしウルムチは北京時間で公式には動いているらしい。
遠くはなれた東海岸の北京が全て基準になっている中国という国、このへんからして現地にとっては非合理なことを押し付けられているのを感じた。
映画『モンゴル』は、モンゴル自治区、新きょうウイグル自治区と中国辺境であり、それぞれの文化が漢民族によって侵されている地域で撮影されたのだった。