26年続いた、M.O.P.という人気劇団が最終公演を迎える。
主宰のマキノノゾミさんと看板女優であるキムラ緑子さんとは、少し前にラジオCMのお仕事で御一緒したことがある。確か調味料のラジオCMだったような。ぼくは本業がナレーターなので、そこでキムラさんの息子役で台詞を読ませて戴いた。シンプルな演出の多いラジオCMが多いなか、登場人物のバックグラウンドに濃く愉快な解説や演出が彩られた記憶がある。そんな御縁もあり、やっと観れたM.O.P.なのだが残念なことに最終公演となってしまった。だが、その場に立ち会えてよかった作品になっていた。
ある「歌」を巡ったエピソードが時代を行き交って連なるクロニクルで、最終公演に相応しいヴォリュームだった。キムラ緑子さん演じる"DJカオル"の佇まいや言動がとてもキュートで、声の仕事をしている僕はすっかり心を奪われてしまい、「26年間、あなたのラジオ番組を毎回聴いていた」とファンから告げられるシーンでは涙ぐんでしまう。
演劇はもちろん、表現は全て、観客の顔が全て見える訳ではない。でも、一生実際に逢う事はないけど、確実に支えてくれていたファンという方たちが存在する。僕も、自分の公演には毎回来てくれている方たちが居てくれて、アンケート欄でしか名前を拝見出来ないけど、僕はその名前を誇りとしてそれとなく覚えている。もし自分が劇団を解散するときに、そんなことを告げられたら、それ以上の喜びの言葉なんて無いんじゃないかと突き刺さる。
観客の年齢層も幅広く、紀伊国屋ホールで上演されるのに相応しい暖かな作品で、カーテンコールでも拍手が鳴り止まない。マキノさんもキムラさんも劇団員のみなさんも、みんなが眩しい。劇団解散公演なのに、劇団をやりたくなった。そんな公演だった。
東京では8月16日(月)まで。前売は完売みたいですが、キャンセル待ちで当日券もあるかも? 最終の最終は京都で28、29日にあるみたいです。是非お見逃しなく。
text hasegawaayumu(MU)
http://www.mu-web.net/
※注・ぼくは大昔に劇団を解散していて、その流れで現在やっているMU(ムー)は、ひとり劇団で、劇"団"よりはプロデュースユニットに近いです。だからそういう気持ちになるってことに自分でも驚きました。
近日では、9/21-26、渋谷ギャラリールデコで“視点”というイベントを上演します。
■劇団M.O.P.最終公演『さらば八月のうた』公演詳細
http://www.g-mop.com/history/45kouen/press/index.html
■厳選シアター情報誌「Choice!」との連動インタビュー企画“Artist Choice!”掲載、女優・キムラ緑子さんのインタビュー(取材:徳永京子さん)
http://www.webdice.jp/dice/detail/2516/(前編)
http://www.webdice.jp/dice/detail/2567/(後編)