2016年11月7日(月)〜11月13日(日)にフィリピン南部ミンダナオ島のジェネラルサントスで開催されたサラミンダナオ・アジアン映画祭では、日本から長編部門に富田克也監督『バンコクナイツ』が、短編部門に吉田孝行の映像作品『ぽんぽこマウンテン』が選出され、現地で両作品は併映されました。その富田克也監督『バンコクナイツ』が、テアトル新宿ほか全国で絶賛公開中です。
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吉田孝行作品『ぽんぽこマウンテン』
(撮影・編集:吉田孝行/2016年/10分/HD/16:9/白黒)
「ぽんぽこマウンテン」とは、日本のとある公園に設置されている白い色のエア遊具のことである。雪山のようなトランポリンであり、その上で子ども達は、ぽんぽこ飛び跳ねて遊んでいる。本作は、曲線のあるユニークな風景の中で、無邪気に遊んでいる子ども達の姿を、動画と静止画の組み合わせによって表現したモノクロの映像作品である。作品の冒頭に引用される「子供心を失った者は、もはや芸術家とはいえない」という彫刻家コンスタンチン・ブランクーシの言葉に着想を得て制作された。
【吉田孝行プロフィール】
1972年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。映画美学校に通い、様々な映像作品の制作に携わる。山形国際ドキュメンタリー映画祭2011でヤマガタ映画批評ワークショップに参加。東京フィルメックス2014でアジアの映画人材育成事業「タレンツ・トーキョー」のコーディネーターを担当。日本で唯一のドキュメンタリー専門誌「neoneo」編集委員。共著に『クリス・マルケル―遊動と闘争のシネアスト』『アメリカン・アヴァンガルド・ムーヴィ』など。最新の映像作品『ぽんぽこマウンテン』が、映画祭、ヴィデオアート祭、展覧会など、世界14カ国、17の国際フェスティバルに選出されている。
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【推薦の言葉】
「ぽんぽこマウンテン」という遊具で戯れる小さな少年少女が描かれる作品の後半で、背後に樹々を配したロング・ショットの美しさといったら。しかし、一見単純と見える曲線の美を生み出しているのは、それまでのショットの的確な配列であり、とりわけ静止画の導入が、時間の推移のなかで無償の官能性を呼び込んでもいる。時間と無時間が葛藤し、映画の原理に思いを巡らせる、極めて野心的な小品だと感嘆した。———筒井武文(映画監督・東京藝術大学教授)
【推薦の言葉】
ドキュメンタリーマガジンneoneo の出身者から、新しい才能が登場した。ドキュメンタリーとビデオアートの境を易々と越境し、ラブ・ディアスを思わせる端正な白黒ショットのなかに、鑑賞者を過去の記憶へといざなう瞑想的な作品だ。———金子遊(映像作家・批評家)