骰子の眼

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2016-09-13 19:35


世界の“難民”は過去最多の6,530万人(2015年)、UNHCR難民映画祭で難民のリアルを知る

アフガニスタン難民の少女ラッパー描く『ソニータ』ほか映画祭スタッフのレコメンド
世界の“難民”は過去最多の6,530万人(2015年)、UNHCR難民映画祭で難民のリアルを知る
映画『ソニータ』より © Rokhsareh Ghaem Maghami

映画を通して世界の難民問題について知る映画祭、UNHCR難民映画祭が9月17日(土)より札幌・仙台・東京・大阪で開催される。世界中から集められた映画を通して難民や国内避難民、無国籍者が置かれた状況への理解を深めることを目的として実施されている。

本映画祭の主催で、難民の保護と支援を行う国連機関・国連難民高等弁務官(UNHCR)は、毎年発表しているグローバル・トレンズ(年間統計報告書)の2015年版で、家を追われた人の数は過去最多の6,530万人になったと発表している。今年の映画祭で上映される作品は、ドラマやドキュメンタリーなどそれぞれの手法で「難民たちの今」を描いている。また、慣習による結婚を拒否したアフガニスタン難民の少女が、ラッパーを目指す姿を描く『ソニータ』や、今年の国際ベルリン映画祭で金熊賞を受賞したジャンフランコ・ロージ監督の新作で2017年2月にビターズ・エンドの配給により公開が決定している『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』など、日本初上映作品もラインナップされている。

webDICEでは映画祭スタッフによるレコメンド文章とともに、上映される作品のなかから9作品をピックアップして紹介する。




日本初上映

『ソニータ』

映画『ソニータ』より © Rokhsareh Ghaem Maghami
© Behrouz Badrouj

タリバンから逃れるためアフガニスタンから難民としてイランへ逃れた少女ソニータ。テヘランのシェルターで教育を受ける彼女の将来の夢はラップ・ミュージシャン。しかし、祖国に住む親は兄の結婚資金を得るためにと、彼女に政略結婚を命じます。周りの女の子も政略結婚により、学校に来なくなります。そもそもイランでは女性がソロアーティストとして活躍することもできません。それでも夢を捨てきれない彼女の運命を変える出来事が起きます。ソニータの芯の強さとたくましさは観る人の心を動かします。

監督:ロクサレ・ガエム・マガミ
イラン、ドイツ、スイス/2015年/91分/ドキュメンタリー
2017年日本公開予定
配給:ユナイテッドピープル
上映詳細についてはこちら
http://unhcr.refugeefilm.org/2016/sonita/




『シリア、愛の物語』

映画『シリア、愛の物語』より

シリアの獄中で出会った2人の活動家アマルとラグダ。やがて2人は恋に落ち、出所後には結婚、3人の子どもにも恵まれます。監督ショーンが2009年に彼らに出会ってから、5年に渡って記録された家族の肖像から浮かび上がる難民の姿が綴られています。シリアから避難した先でも、シリアのために活動を続けたいと願うラグダ。最後に選択した道とは……。難民の幸せは一人ひとり異なることを改めて実感する作品です。

監督:ショーン・マカリスター
イギリス/2015年/80分/ドキュメンタリー
上映詳細についてはこちら
http://unhcr.refugeefilm.org/2016/a_syrian_love_story/




日本初上映

『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』

映画『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』より ©21Unoproductions_Stemalentertainement_LesFilmsdIci_ArteFranceCinéma
©21Unoproductions_Stemalentertainement_LesFilmsdIci_ArteFranceCinéma

地中海に浮かぶ小さな島に暮らす12歳の少年サムエレ。ただ、彼が暮らすその島は他とは違います。彼の島、ランペドゥーサ島は、この数十年間アフリカや中東から船でやってくる移民や難民にとってのヨーロッパの玄関口です。日々この人道危機を目の当たりにしてきた島の日常に、カメラは静かに寄り添います。

監督:ジャンフランコ・ロージ
イタリア、フランス/2015年/114分/ドキュメンタリー
2017年2月、Bunkamura ル・シネマにて公開予定
配給:ビターズ・エンド
上映詳細についてはこちら
http://unhcr.refugeefilm.org/2016/fuocoammare/




『罠(わな)~被災地に生きる』

映画『罠(わな)~被災地に生きる』より

2013年11月、巨大台風の直撃で多数の犠牲者と被災者を出したフィリピン、レイテ島の海岸に面した都市タクロバン。実際の被災地を舞台に撮影された本作は、心に深い傷を負った生存者たちの交差する人生を描いています。家族の死の悲しみが癒える間もなく、人々は身も心も疲弊し切っている様子が描かれ、復興の大変さを物語っています。無力感の中、それでも心の正常を保ち、日常を取り戻そうと懸命に生きる人々の姿を丁寧に描いたヒューマン・ドラマです。自然の描写の美しさにも目を奪われます。

監督:ブリランテ・メンドーサ
フィリピン/2015年/97分/ドラマ
上映詳細についてはこちら
http://unhcr.refugeefilm.org/2016/taklub/




日本初上映

『今はまだ、帰れない君へ』

映画『今はまだ、帰れない君へ』より

1948年に故郷を追われて以来、代々シリアに暮らしてきたパレスチナ難民は現在のシリア危機によって更なる避難を余儀なくされています。戦禍を逃れてレバノンにたどり着いた人々は二重の意味で難民となり、パレスチナへ帰郷するという願いは今まで以上に儚い夢となりました。本ドキュメンタリーでは、そこから更にヨーロッパへの移住を選択した人たちを含む様々なパレスチナ人へのインタビューから、知られざるパレスチナ難民の置かれた状況を浮き彫りにしています。パレスチナ人の祖国への強い想いが胸に突き刺さります。

監督:キャロル・マンスール
レバノン/2014年/42分/ドキュメンタリー
上映詳細についてはこちら
http://unhcr.refugeefilm.org/2016/we_cannot_go_there_now_my_dear/




日本初上映

『カフェ・ヴァルトルフトへようこそ』

映画『カフェ・ヴァルトルフトへようこそ』より

ドイツ、バイエルンの山岳地帯にある小さな田舎町に、古くから観光客たちを暖かく迎え入れてきた山小屋風のホテル「カフェ・ヴァルトルフト」があります。このホテルを経営する女性、通称ママ・フローラは、ある時期からアフガニスタンやシリア、シエラレオネからやってきた「お客様」、つまり難民として保護を求めてドイツにたどり着いた人だけを宿泊客として受け入れる事にしました。市民が保護を求めてきた人を受け入れ、交流する姿から、あなたは何を感じますか。

監督:マティアス・コスメル
ドイツ/2015年/79分/ドキュメンタリー
上映詳細についてはこちら
http://unhcr.refugeefilm.org/2016/cafe_waldluft/




『女を修理する男』

映画『女を修理する男』より

コンゴ民主共和国出身の婦人科医、人権活動家デニ・ムクウェゲの姿を追ったドキュメンタリーです。ムクウェゲ医師は第2次コンゴ内戦以来続く戦禍の中でレイプ被害にあった数多くの女性を治療し、彼女たちの精神的なケアと啓発活動を精力的に行っています。カメラはムクウェゲ医師と彼を支える人々、レイプ被害者の女性たち、そして戦乱の背景にある紛争鉱物の実態にも迫ります。さらに日々奮闘する医師の活動が国際社会でどう捉えられているのかも浮き彫りにします。ムクウェゲ医師が国際社会とレイプ被害にあった数多くの女性をつなげる存在であることに気づかされます。

監督:ティエリー・ミシェル
ベルギー/2015年/113分/ドキュメンタリー
上映詳細についてはこちら
http://unhcr.refugeefilm.org/2016/the_man_who_mends_women/




日本初上映

『ストーム・ストーリーズ ~戦禍を逃れた子どもたち』

映画『ストーム・ストーリーズ ~戦禍を逃れた子どもたち』より

戦禍を逃れ、オーストラリアにたどり着いたイラクやシリア、イラン、アフガニスタン、セルビアの子どもたちが通うシドニーの学校には、子どもたちの傷ついた心を癒すための特別なプログラムがあります。祖国を離れる原因となった凄惨な体験、「ストーム・ストーリーズ」を共有し、それを基に一本の脚本を紡ぎ出し、自分たちが舞台で演じるというものです。熱意溢れる教師やスタッフと共に、子どもたちは自分の体験に向き合い、練習を重ねることで、新たな社会での生活にも自信を持ち始めます。

監督:デヴィッド・メイソン
オーストラリア/2016年/72分/ドキュメンタリー
上映詳細についてはこちら
http://unhcr.refugeefilm.org/2016/cast_form_the_storm/




日本初上映

『国境に生きる~難民キャンプの小さな監督たち』

映画『国境に生きる~難民キャンプの小さな監督たち』より

私たちの生活を知って欲しい―。自身がクルド出身の名匠バフマン・ゴバディ監督は、そう願うクルド難民キャンプに暮らす子どもたちの声に応え、2つの難民キャンプから8人の子ども監督とスタッフを選び、ワークショップを通じて脚本から演出、撮影までを全てキャンプ内で行った作品です。8本のショートフィルムをオムニバス形式で上映したもので、子どもたちの視点を通じてクルド難民の置かれた過酷な状況が浮かび上がります。つらい経験をした子どもたちが編み出す作品に、現実の厳しさを感じることができます。

プロデューサー:バフマン・ゴバディ
監督:ハゼム・ホデイダ、バスメ・スレイマン、サミ・ホセイン、ロナヒ・エザディン、ディアル・オマール、デロヴァン・ケハ、マフムド・アフマド、ゾホール・サイド
イラク/2015年/73分/ドキュメンタリー
上映詳細についてはこちら
http://unhcr.refugeefilm.org/2016/life_on_the_border/




第11回UNHCR難民映画祭
2016年9月17日(土)、18日(日)【仙台】
9月24日(土)、25日(日)【札幌】
10月8日(土)、9日(日)、10日(月)【東京】
10月22日(土)【大阪】


会場:【東京】イタリア文化会館
【北海道 札幌】札幌プラザ2・5
【宮城県 仙台】桜井薬局セントラルホール
【大阪】朝日生命ホール
主催:国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所、特定非営利活動法人 国連UNHCR協会
パートナー:独立行政法人 国際協力機構(JICA)
公式サイト

<申込・入場について>
入場は無料ですが申込みフォームからの事前お申込が必要です。
お申込多数の場合、ご入場は抽選制となります。詳細はお申込後にお送りする確認メールをご確認ください。
事前のお申込み状況により、当日の席を若干数用意できる場合がございます。その場合は各作品の上映1時間前より各会場にて整理券(先着順)を配布いたします。
開場は上映の20分前となります。各回完全入替制です。
お問い合わせ:映画祭専用フリーダイヤル0120-972-189(平日10時~18時)


▼映画『ソニータ』予告編



▼映画『シリア、愛の物語』予告編



▼映画『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』予告編



▼映画『罠(わな)~被災地に生きる』予告編



▼映画『今はまだ、帰れない君へ』予告編



▼映画『カフェ・ヴァルトルフトへようこそ』予告編



▼映画『女を修理する男』予告編



▼映画『ストーム・ストーリーズ ~戦禍を逃れた子どもたち』予告編



▼映画『国境に生きる~難民キャンプの小さな監督たち』予告編


キーワード:

難民 / 映画 / 映画祭


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