骰子の眼

cinema

岡山県 その他

2015-08-04 13:20


瀬戸内の手作り映画祭「宇野港芸術映画座」でイスラムを知る

クラウドファンド8/6まで実施中、今の世界を見ることで戦争や日本の現代世界の中の位置づけを考える
瀬戸内の手作り映画祭「宇野港芸術映画座」でイスラムを知る
「宇野港芸術映画座」2012年開催より

2009年から直島への玄関口、岡山県玉野市の宇野港で開催されている国際インディペンデント映画の野外上映イベント「宇野港芸術映画座」が8月7日より開催。5回目の開催となる今年は、開催前日8月6日23:59までクラウドファンディング・サイトMotionGalleryで、チケットやパスなど特典付の支援プロジェクトも行われている。

今回は、webDICEで連載「Filmmakers in N.Y」の執筆者であり、この映画祭の共同主宰者でもあるタハラレイコさんに、今年の見どころを紹介してもらった。

「宇野港芸術映画座」スタート以来のテーマは「生きる・創る・映画」

皆様、お久しぶりです。一身上の都合により、しばらく「Filmmakers in N.Y」の連載をお休みさせていただいておりました。というか、自分たちの作品制作と生活と娘の大学受験でちょっと忙しかったからなのですが。生まれも育ちもブルックリンっ子の娘も無事受験が終わり、この秋からニューヨークを離れます。また、連載開始できたらなあ、と考え始めております。

さて、今日は、夫で映画制作の相棒でもある上杉幸三マックスが2009年に故郷の岡山県玉野市宇野港で外国人用のゲストハウスを始めたことをきっかけにその翌年から二人で始めた手作り映画祭、宇野港芸術映画座(Uno Port Art Films、略称UPAF)の今年の見どころをご紹介したいと思います。今年で第五回になるUPAFですが、その間に、街が本当に変わりました。そのあたりも含めて、直島ついでじゃなく(ついででもいいけど)宇野に来たくなるように、街の新文化の紹介も兼ねて書いてみようかと思います。

UPAF設立以来の大きなテーマは「生きる・創る・映画」。基本コンセプトは、制作者の人生が間接的・直接的に投影されていて、ソウルフルで質のいい作品、そして世界の映画祭やアート・シーンで高く評価されていながら、日本には届きにくい作品をお届けする、というもの。特に、商業映画で見慣れた西洋社会以外からの作品、アジア・アフリカ・ラテンアメリカ・中東などからの作品を積極的に選びます。また、忘れられているが非常に重要な名画も、毎年1作品は入れるようにしています。私達自身が映画制作者なので、制作者が、世界中の仲間の制作者のことを思いながら作るミニ映画祭でもあります。宣伝から上映、スカイプQ&Aまで日英バイリンガルなので、英語OKの外国人のお友達も、是非お誘いください!

トレーラーシアター
「宇野港芸術映画座」で使用しているトレーラーシアター

今の世界を見ることで日本の戦争や日本の現代世界の中の位置づけを考える

「生きる・創る・映画」の大テーマのもと、毎年ゆるくミニテーマを設けて、それにあった作品を幾つか含めるようにしてきました(第2回は「核とわたしたち」、第3回は「途上国フィクション」、第4回は「障がい者と映画」)。今年、第5回UPAFのミニテーマは、「イスラム」です。

最初は、終戦70周年にちなんで、戦争特集にしようかと思ったのですが、第二次世界大戦のみに絞って過去を見るより、今の世界を見ることで日本の戦争や日本の現代世界の中の位置づけを考えた方が、戦後70周年の意味がよりあるのでは、とマックスと話し合い、では、近年世界を賑わわしており、世界を知る一つのカギでありながら日本人にあまり馴染みがないテーマは、ということで「イスラム」を選びました。

もちろん「イスラム」を数本の映画でわかるなんてわけもないのですが、植民地、独立、戦争、資源、冷戦以来の経済モデル、そして世界を驚愕させるテロ、色々な意味でイスラムは避けて通れないテーマ。少しでも理解を深めることができたらとの願いで、フィクション・ドキュメンタリー・実験映画、多ジャンルで中身の濃いユニークな作品を、アルジェリア、キプロス共和国、アメリカ、インドのカシミール地方から集めました。他にも、当局に認可されず中国では上映できないものの世界中の映画祭で大絶賛の中国インディペンデント・ドラマ映画、福島に残ることを選択したお母さん達のドキュメンタリー、元ヤクザの刺青牧師が前科者の信者さん達を救う元気いっぱいドキュメンタリーなど、ソウルフルな作品を上映します。また、無料上映ながらうならせる作品が集まったのが、子供のプログラム。大人も十二分に楽しめます。

さて、毎年資金繰りには苦労しっぱなしなのですが、今年は一昨年NPO法人化したこともあって、張り切っていつもより沢山助成金に応募しました。しかし結果は芳しくなく、現在MotionGalleryでクラウドファンディング・キャンペーン中です。30日足らずの短いキャンペーンで、開催前日の8月6日までなので残りわずかです。遠方の方でもUPAFの息吹を味わっていただけるように、今年のラインアップから2人の制作者に協力してもらって、開催後に2週間限定で作品の視聴ができる特典も用意しました(『国境蒸発』と『鳥はどこを飛ぶ』後述参照)。UPAFの様子がわかるビデオも作ったので、皆様、是非のぞいて、ソーシャルメディアでのシェア・拡散、お願いいたします!なお、税金対策の寄付控除をご希望の方には、UPAFはメセナ協議会の助成認定プログラムに指定いただいていますので、対応できます。その場合は、info@unoportartfilms(レイコ&マックス)までご一報ください!

それと、クラウドファンディングを通じてご支援いただいた「学童保育サロン 環優舎さま」から、読者の皆様にシリーズパスを2枚プレゼントいただきました。先着2名さまでご贈呈します。上記までご連絡ください。念のため、宿泊は付いていないです(近所のマンガ喫茶に一晩1,300円で泊まれる情報を今日ゲットしました。シャワー500円)。

unnamed
「宇野港芸術映画座」シリーズパス

では、14本の珠玉の上映作品をご紹介します。

【長編作品】

『アルジェの戦い』

アルジェリアの独立までの闘争を描く

映画『アルジェの戦い』より
映画『アルジェの戦い』より

監督:ジッロ・ポンテコルヴォ
音楽:エンニオ・モリコーネ
脚本:ポンテコルヴォ&フランコ・ソリナス
アルジェリア=イタリア/1966年/121分
フィクション

世界中で名作中の名作と讃えられ、アメリカでは大手配給からブルーレイで発売されているのに、日本では絶版のこのスケールの大きな名画を、UPAFが新たに日本語字幕を付けてお届け。映画ファンの中には「ずっと観たかった」という方も多いのではないでしょうか。1962年、8年間の血みどろの武力闘争を経てフランスから独立を勝ち取ったアルジェリア。独立3年後の首都アルジェ、もと「原住民(ネイティブ)居住区」で、実際の住民や独立運動指導者を配役し、彼らが生き抜いた戦いを再現。フィクションながら、鳥肌もののリアル感。公開年ヴェネチア映画祭グランプリ、日本でもキネマ旬報第一位、フランスでは5年間上映禁止、そして2003年米ペンタゴンで特殊作戦部隊長のために特別上映。植民地、独立、イスラム、テロリズム…現代世界を知る上で重要な作品でありながら日本では何十年も忘れ去られているレアもの。今回、ワールドワイド権利者がUPAFの主旨に賛同してくださって実現する、超特別上映会。

政治的視点から見ると、武力による独立の成功例として世界中の虐げられた人々を鼓舞した作品、映画史的視点から見ると、ポンテコルヴォ、ソリナス、そしてモリコーネが組んで、ロッセリーニが提示した政治的要素の濃いイタリア・ネオレアリズモの手法をアルジェリアに持って来て作った、大変ユニークな作品。監督はヨーロッパ人ながら、70年代にラテンアメリカを中心に世界に広がった映画ジャンル『サード・シネマ』(西洋ブルジョアの価値観で創られた映画からの脱却を目指し、世界的な労働闘争・独立闘争・市民権運動のために映像アートを使おうとしたムーブメント。大切なジャンル/理論ながら、現在は忘れられている)からの絶対的支持を得た珍しい作品でもあります。でも、こんな難しいことを考えなくても、文句なく、すごい。真剣に、これは見逃せないと私達は思います。


『国境蒸発(仮題)』

世界情勢の縮図としてのキプロスを捉えたビデオ・エッセイ

映画『国境蒸発』
映画『国境蒸発』より

監督:イヴァ・ラディヴォイヤヴィッチ
キプロス共和国=USA/2014年/73分
エッセイ・ドキュメンタリー
日本初公開

セルビアで生まれたイヴァは、ユーゴ紛争とNATO空爆を逃れて家族で移り住んだキプロス島で十代の多感な時代を過ごした。クリスチャンのギリシャ系住民とイスラム教のトルコ系住民の対立で70年代以降島が南北に分断統治されているキプロスでは、現在トルコが占領する北部に中東やアフリカ、アジアからの主にイスラム系移民/難民が大量になだれ込み、緊迫状態が続いている。

地中海の青、フラミンゴのピンク、EUへの活路を求めて命からがらたどり着いたまま虚無の日々を送るイラク人女性の黒いヘジャブ、ネオ・ナチ運動で激しくシャウトするギリシャ系若人達の黒いシャツ。世界情勢の縮図としてのキプロスを、世界を旅するイヴァの繊細な視点が捉えた美しいビデオ・エッセイ。この5月、ブリュッセルのEU議会で移民問題が話し合われた際に上映された、今まさに旬の作品。エグゼクティブ・プロデューサー:ローラ・ポイトラス(アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作『Citizenfour(原題)』監督)。ロッテルダム国際映画祭、サウス・バイ・サウスウェスト映画祭、ホット・ドックス、人権映画祭(ロンドン、NY)他、多数。6月アメリカ劇場公開、この夏UPAFで日本上陸!スカイプトーク予定。


『鳥はどこを飛ぶ(仮題)』

ガザ地区初のパレスチナ人女性ビデオジャーナリストによる貴重な記録

映画『鳥はどこを飛ぶ』より
映画『鳥はどこを飛ぶ』より

監督:フィダ・キシュタ
パレスチナ自治区/2013年/58分
ドキュメンタリー
日本初公開
15歳以下のお子さんにはお薦めしません。

イスラエル軍のブルドーザーに家を潰され、永遠に終わらない戦火のガザ地区で育ったフィダは、やがてビデオカメラを武器として手にとり、ガザ地区初のパレスチナ人女性ビデオジャーナリストになった。この映画は、フィダが長年にわたって撮りためた、西側先進国のニュースでは決して伝えられない映像を、一つの作品に仕上げた貴重な記録映画。

パレスチナ人と言えばまるで全員が兵士のような印象を受けるが、作品に出てくるのは皆、農民や漁民など、普通のパレスチナ人。でも彼らの暮らしは普通とはほど遠い。全く罪のない人々が何十年にも渡り囚人のような生活を強いられているのを、世界は見て見ぬ振りをしてきた。なぜ?この、時に衝撃的な映像を直視する責任は誰にあるのだろうか。何人もの家族を一度に目の前で殺された少女モナに、フィダは自分の過去とパレスチナの将来を重ねる。モナの心の傷は癒えるのだろうか。この作品で、希望を描きたかったとフィダは言う。そのかすかな希望を、遠い日本の私達は、読み取ることができるだろうか。本当に、日本は遠いのだろうか。日本初公開、フィダとのスカイプトークも予定。お見逃しなく!


『聖者の谷(仮題)』

インド・カシミール地区を舞台にしたラブストーリー

映画『聖者の谷』
映画『聖者の谷』より

監督:ムサ・サイード
インド(カシミール地方)/2014年/83分
フィクション
日本初公開

カシミア発祥の地カシミールが誇る美しい避暑地のダル湖を舞台に、現地の貧しい船頭と、アメリカで環境学を学ぶ美しいサイエンティストとのふれ合いを描いたほろ苦いラブストーリー。ロマンチックな光景に生々しく対照的に映るのはカシミールの現実。インドからの分離独立を訴えるイスラム教徒(カシミール地方は主にイスラム教)たちのデモ、それに対しインド政府が出した外出禁止令の中で生きる人々。撮影中に現実に起こったそれらの事件をその場で物語に取り込むことに決めて脚本を書き換え、主人公にも現地の住人を抜擢したリアルな映画。サンダンス映画祭の観客賞&アルフレッド P. スローン賞、インディペンデント・スピリッツ賞ノミネートーベスト・シネマトグラフィー、ほか。日本初公開!ムサとのスカイプトークも予定。


『ジューン・ブライド:ヤクザの購い(仮題)』

ヤクザから転身した刺青牧師を追うドキュメンタリー

映画『ジューン・ブライド』
映画『ジューン・ブライド』より

監督:デレク・シモダ
日本=アメリカ/2015年/81分
ドキュメンタリー
日本初公開

今年4月にロスアンジェルス・アジア・パシフィック映画祭でプレミアしたばかりのできたてほやほや、心に元気をもらえるドキュメンタリー。埼玉県の刺青牧師、進藤龍也。かつては大きな暴力団で組長代理まで務めた本物のヤクザ。今は悔い改めた敬虔なクリスチャン。母親が3代目のオンボロ・バー『ジューン・ブライド』の教会には、もと極道や前科者の皆さんが、救いを求めて続々集まってくる。岡山もかなり登場。日本初公開。


『小さき声のカノン:選択する人々』

鎌仲ひとみ監督が福島とベラルーシのお母さんたちを取材

映画『小さき声のカノン』より ©ぶんぶんフィルムズ
映画『小さき声のカノン』より

監督:鎌仲ひとみ
日本/2015年/119分
ドキュメンタリー

玉野市の移住者支援団体ラックハウスとの共同キュレート企画。『ミツバチの回転と地球の羽音』『六ヶ所村ラプソディ』の鎌仲ひとみ監督の最新作。福島に残る選択をしたお母さん達、子供達を守るために、実際何ができるのか。最初は泣いてばかりだったお母さん達が、仲間を作り強く現実に向かって行く様を描く。チェルノブイリ原発事故後に故郷の街に残って子育てしたベラルーシのお母さん達にも取材。遠く離れた安全な地域に生きる人達が、福島の子供達を守るためにできることの具体的な提言をしてくれる貴重な映画。岡山初公開!

岡山県は、福島からの移住者が多いと聞く。宇野/玉野の街にも震災以来沢山の若い家族が移住しておられる。3PMの室内上映の後には、震災以降玉野に増えている福島や関東圏からの移住者を招いての1時間のパネルトークを行い、移住にまつわる体験などをお聞きしながら、新旧の住人が話し合える場所を創りたい。福島に残った人達は今どうしている?新たな場所に移住してきた人達は今何を思っている?受け入れた街の住人に、子供達を引き続き守って行くために、具体的に何ができるのか?ガッツリ話し合いたい。また、パネルトークのある8月9日(日)3時PMの回の前には、2時PMから無料の子供映画プログラムを置き(内容、すっごくいいです!)、その後、3~6時PMまで、託児サービスも用意して、新旧住民が(または遠方からの方達も!)お子さんを連れて楽しめるイベントにしたい。


『トラップ・ストリート』

中国インディペンデント映画界気鋭の監督による秀作

映画『トラップストリート』
映画『トラップ・ストリート』より

監督:ヴィヴィアン・チュイ(文晏)
中国(南京)/2013年/94分
フィクション

デジタル地図測量士の卵リー・チュミンは、ある日街のロータリーで測量中に、薄暗い通りに消えて行くきれいな女性に出会う。彼女を忘れられないチュミンは、その薄暗い通りを再び訪れ彼女を見つける。二人の関係は少しずつ深まるが、彼女のことは何もわからない。やがて、その薄暗い通りは、計ってもデジタルマップにどうしても登録されないことが判明。彼女会いたさからまたその通りを訪れるうち、チュミンは予想だにしなかった大きな力に飲み込まれていく。

ヴェネチア、トロント、ヴァンクーヴァー、ロッテルダム、NYリンカーンセンターのNew Directors/New Filmsなど、世界の映画祭総ナメながら、中国当局の認可下りず中国では上映されていない。中国インディー映画界で実力派プロデューサーとして活躍中のヴィヴィアン・チュイの監督デビュー作。スタッフの半分はジャ・ジャンクーのクルーから、またウォン・カーウァイの照明技師なども参加で、技術的にも内容的にも大変ソリッドな秀作品。日本初公開。




【短編作品】

今年の短編は7本。3本は長編作品とカップリングで、後の4本は子供プログラム(無料)での上映。


『イスラム記号論』

映画『イスラム記号論』
映画『イスラム記号論』より

監督:フォウジア・ナジェール
アメリカ/2014年/7分
実験映画

マーサ・ロスラーの『 キッチンの記号論 』(1975、台所用品の使い方の実演を通して主婦のうっぷんをユーモラスに表現したフェミニスト実験映画)にヒントを得、パキスタン系アメリカ人監督が、身の回りのものをアラビア語で呼ぶそのシンプルなパフォーマンスで、西洋メディアが描くイスラムのイメージに疑問提起。日本初公開。『鳥はどこを飛ぶ』とカップリング上映 。


『パラダイス』

映画『パラダイス』
映画『パラダイス』より

監督:ナダヴ・クルツ
アメリカ/2012年/10分
ドキュメンタリー

風の街シカゴで、朝早くから体を張って高層ビルの窓を拭く男達、彼らは一体誰なのか。トライベッカ、シカゴ、シアトル、シネ・ラス・アメリカス(ペルー)、ビルバオ、メルボルンの各映画祭で最優秀短編賞受賞。サンダンス映画祭・シェフィールド国際ドキュメンタリー映画祭公式招待作品。日本初公開。『国境蒸発』とカップリング上映 。


『天使モドキ』

映画『天使モドキ』
映画『天使モドキ』より

監督:中村智道
日本/2014年/13分
アニメーション

「ある女が、何気ない日常に変化を欲していた。日常を変えるべく、ペットとして鳥を飼っているのだが、彼女はその鳥との間に生まれる子供の夢を抱くようになる。人間と鳥の間に生まれる子供は、「天使モドキ」と言われ、それは天使のような姿をしているのだが……視線、そして、ある人が置かれた状況は時として個とは何かをその人自身に問いかける。その中で自己を見つめ、時として自己を否定し、変化し、そして時として諦める。」──イメージフォーラム映画祭より

UPAFが設立当初からイチオシ上映して来た赤磐のアニメーション作家の最新作、そして、すごい力作。ちょうどUPAF開催と同時期(8月8日~)に東京下北沢トリウッドで「孤高の天才─中村智道の世界」と題し、過去の2作品と『天使モドキ』3本の劇場公開が始まるようです。東京へ、世界で活躍する中村監督の成功を祝って、UPAFでも上映します。イメージフォーラム映画祭、タンペレ映画祭(フィンランド)、岡山芸術文化賞準グランプリ受賞作品。『ジューン・ブライド』とカップリング上映 。

以下は、子供の回(40-45分くらい)に無料上映される秀作品。どれも、大人も全然楽しめます。もしかしたら、もう一本増えるかも……。


『来世』

映画『来世』
映画『来世』より

監督:カシミア・ノズコウスキー
アメリカ/2013年/11分
フィクション

親愛なるおばあさんから、「もうすぐ私は死ぬ」と聞かされる孫。来世でまた会えるように、二人が考えた作戦は。日本初公開。 フェニックス映画祭ほか。


『ウサギとシカ』

映画『ウサギとシカ』
映画『ウサギとシカ』より

監督:ピーター・ヴァックス
ハンガリー/2013年/16分
2D/3Dアニメーション

仲良しのウサギとシカが、ある日2Dと3Dの世界に分かれてしまう。二人の友情は、どうなるの?世界中の子供映画祭などで70賞受賞。


『ニエッタ』

映画『ニエッタ』
映画『ニエッタ』より

監督:ニコラス・P・ヴィラレアル
アルゼンチン/2014年/5分x2回
アニメーション

カンヌ映画祭出品、トロント国際映画祭子供特別審査員賞

突然の通り雨、小さな女の子が心の目で見た世界は……最後の驚きでもう一度絶対観たくなる作品なので、2回繰り返しで上映する。


『ウォンボ』

映画『ウォンボ』より
映画『ウォンボ』より

監督:ダニエル・アハト
ドイツ/2013年/8分
実写+CG

地球に不時着したエイリアン……犬に吠えられ野菜かごに隠れるが、おっと、あやうく夕飯のおかずに!だって、エイリアン、ジャガイモにそっくりなんだもん!ブルックリン子供映画祭、シアトル子供映画祭他。




番外編:プレUPAF

ユース・プログラム

日本はマルシェブームだが、宇野の街にも「UNOICHI:海の見える港のマルシェ」が昨年から年4回開催されるようになり、毎回3千~5千人を動員している。これを中心になって始めた方々は、過去数年間に新たに宇野に越してこられた人達。そして彼らが、UPAFを応援してくださっている方々。中には、UPAFの野外上映を体験したのが移住を決めるきっかけになったという方もいるなんて、嬉しいお話も聞く。それで、そのUNOICHIさんに沢山地元の高校生がボランティアとして参加しているから、と声をかけてもらって、今年は海の日の週末の日曜日に、プレUPAF@UNOICHIイベントを開催、普段は本開催にあるユース・プログラム(世界中のティーンが創ったビデオの秀作品を上映!)をこの日に2回上映した。写真は、以下の通り。上映後には、ブルックリンのかっちょいい黒人の女の子制作者3人とインターネット・ビデオチャットで交流、話がイマイチ噛み合ないながらも、それもお互いに文化体験、ってことで、楽しい時を過ごした。

プレUPAF2015より
プレUPAF2015より、地元と高松の高校生

また、その日には街の商店街でお祭りもあって、出店が出ているにぎやかな商店街のビルの壁に、UPAFの上映予定作品の予告編を映写。なかなかいい感じで、これも楽しい晩となった。

プレUPAF2015より
プレUPAF2015より、夜市の様子

宇野の街

と、UPAFの見どころ&紹介をさせていただいたが、UPAFと街、一緒に育っている感じがあるので、街がここ数年でどうなっているかも軽くご紹介したい。かなり多種多様な新しい人々がゆるやかなネットワークを保ちながら新しい文化を作り上げている感じ。もともと直島に近い立地で県内や他都市からのアーティストが移り住みつつ、現代アートを花開かせかけていたところへ、震災後に前述の福島や関東圏からの移住者がぐぐっと増えた。結果、 前衛アートや無農薬野菜や手作りクラフトを評価して楽しんでくれるコミュニティができ上がって来ている。2年前の第2回瀬戸内国際芸術祭には、宇野も公式会場の一つになって、アートによる街おこしが具現化し評価もされてきていることで、地元の人も少しずつ反応している。港に温泉温浴施設もできた(そのためUPAF野外会場の巨大な空き地は半分になってしまったが)。

街に店やイベントも増えた。街は30年来不況で、でもその前は国際港としてモダンな街だったから、時が止まったようなレトロモダンな建物も結構残っている。ちょっと港から離れると、立派な武家屋敷みたいな屋根瓦の家々が並ぶ古風な街で(植木の形がおもしろい)、そのコントラストも興味深い。ライフスタイルを提案するような遊び心のある生活用品とギフト&美味しいコーヒーの店や、DJナイト、ギャラリー展示、屋上ビアガーデン、魚市場での朝ご飯会、ゲストハウス、ゲイ・レズビアンワークショップ、移住者が日替わりで無農薬のヘルシーで美味しい食事を出してくれるカフェ、古民家を改造して作った無国籍料理カフェバー兼ジュエリー作家さんのアトリエ、はたまたご自宅で 自作・自演・自力建設『54帖の中庭』(9つの住居空間モバイルハウスに囲まれている)を本当に作ってしまった建築家さん、また、来年には作家さん数人が集まってのアトリエ/ギャラリーがまた一つ、廃屋工場でオープン、と色々起こっている。UNOICHIで瀬戸内の他の島々ともつながったりで、どこから流れ着くのやら、20代後半から30代のいい感じの方々が夏に帰省する度に増えている。近くの島々には、それぞれの時の流れ、家並み、人情があって、それも楽しい。しかも、言わずもがな、食べ物本当に美味しい……景色は瀬戸内……UPAFに来てもらえたら、直島・豊島等の瀬戸内現代アートはもちろん、宇野の新しい文化も、新鮮な瀬戸内の海の幸も楽しめます。

と、今回は宣伝三昧でしたが、この記事を読んでUPAFに来てくださる方がいたら嬉しいです。必ず声をかけてくださいね!

(文責:タハラレイコ)



「宇野港芸術映画座 Uno Port Art Films」
2015年8月7日(金)~10日(月)

MotionGalleryクラウドファンディング・ページ:
https://motion-gallery.net/projects/UPAF2015
Facebookイベントページ:
https://www.facebook.com/events/949672951762092/
公式サイト:http://unoportartfilms.org


▼『アルジェの戦い』予告編

▼『国境蒸発』予告編

▼『ジューン・ブライド:ヤクザのあがない』予告編

▼『トラップ・ストリート』予告編

▼『鳥はどこを飛ぶ』予告編

▼『聖者の谷』予告編

▼『小さき声のカノン』予告編

▼『来世』予告編

▼『パラダイス』予告編

▼『ウサギとシカ』予告編

キーワード:

映画祭 / 宇野港 / MotionGallery


レビュー(0)


コメント(0)