A Single Man
監督:トム・フォード
出演:コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、ニコラス・ホルト、マシュー・グッド…
2009年/99分/アメリカ
世界的なファッションデザイナー、トム・フォードの監督デビュー作。原作はクリストファー・イシャーウッドの同名小説。
上映館が少ないせいなのか、前評判がいいのか、好天の週末のせいか、トム・フォードやコリン・ファースが意外と人気者だからか、それともそれとも…と怪しんでしまうくらいバルト9は満員でした。
<舞台はロサンゼルス。1962年11月30日の金曜日、今日も新しい朝がやって来た。しかし、イギリス人の大学教授ジョージ(コリン・ファース)は8カ月前に16年暮らした恋人ジム(マシュー・グッド)が交通事故で突然亡くなって以来、癒えるどころか日に日に深くなる悲しみに苦悩していた。そして、今日こそ自らの手で終わらせようと決意する…>
トム・フォードの美学が詰まった映画。ただただその一言に尽きると思う。
インテリアに調度品、リネン類、ちょっとした食品や文房具の類いに至るまで…もちろんコリン・ファースのまとったシャツの洗練されたダンディズム…その隅々に完璧な美意識が行き渡っている。
ゲイであることが今よりもっとずっと生き辛かった当時、それでも男たちはそのデリケートな関係を育みながら愛に生きていたのだ。
かつては恋人だった時期もあるけど今は親友のチャーリー(ジュリアン・ムーア)を筆頭に、女たちはゴージャスに装えば装うほど愚かで痛々しく、愛を求めてなおその醜態を晒すのだ、おお。
愛の問題を男だ女だゲイだ動物だ…と区別するものではないと常日頃私は考えている。
それでも、何と言うか、ゲイの愛の方がピュアに見えて来るのはどうしてだろう?
…野暮なこと書いてしまいましたw
トム・フォードはやたら自分自身と重ね合わせて「ミドルエイジ・クライシス」みたいなことを言ってたようだけど、彼の場合はただの「ミドルエイジ・クライシス」ではなくて「スーパーリッチ・ミドルエイジ・クライシス」だと思うよ。
つまり普通じゃないってことです(それも才能だ)。ごく平常のトーンで「お金と複数の家と23年来のパートナーと友人を手に入れた」なんて言える人はそういないと思うから。本来、映画はブルジョワジーの道楽だったわけだから、彼のような人物の映画産業への参入はまさに王道でしょう。
これからの活躍も楽しみです。