「チベットに人権など存在しません。私がその生き証人です」
そう穏やかに語るチベット僧のパルデン・ギャツォ。
チベット独立をめぐって中国政府との「闘い」を描いたドキュメンタリー映画である。
1959年、平和的なデモをおこなっただけで投獄され、拷問をうける。
強制収容所での労働にも耐え、33年間を生き抜く。
61歳となりようやく釈放され、インドに亡命。
チベット独立のために、世界中をとびまわり、闘い続ける。
北京オリンピックに抗議し、ハンストを決行する…。
ろくな罪状もないのに、一人の人間を逮捕投獄し、拷問にかける…。
平和ボケした日本では、まったく考えられないことだが、
しかしこれは侵略されたチベットでは当たり前のことのようだ。
人の尊厳を踏みにじり、人権を侵害する中国政府の悪行は弾劾されるべきだろう。
とくに、ギャツォの人生を、まるまる奪い取ったのだ。
人生のもっとも大切な時期を刑務所ですごす…。
もし逮捕されなければ、ギャツォは、心ゆくまで仏教の勉強ができたはずだ。
「この年齢になっても闘い続けるのは、非業の死をとげた人たちのため」
と語るギャツォ。
この年齢ならば、日本では悠々自適の生活を送れるはずだ。
民族自決を認めず、人を人とも思わない「国家」の空恐ろしさを感じる。
もしも自分がギャツォだったならば、ここまで強い人生は送れるのか…?
人間の意志の強さ、すばらしさを感じる映画だ。