パルデン・ギャツォのことを、少しでも多くの人々に知ってほしい、そんな願いから、『雪の下の炎』を製作しました。パルデンは、「良心の政治的囚人」として中国占領下のチベットの監獄で、むごい拷問を受けながら、33年間を生き抜いたチベット僧です。何も悪いことはしていないのに何十年もの間、自由を奪われる、そんな人生がこの世の中にあることを想像できますか?
パルデン・ギャツォ(左)と楽 真琴監督
パルデン・ギャツォは1959年の民族蜂起の際に逮捕された、数千人に及ぶ「良心の政治的囚人」のうち生き残った、わずか30%の中のひとりです。脱獄を試みては捕まり、懲役を延期され、それでも危険を侵してチベット解放を訴える運動を続け、再逮捕され、さらに懲役を延ばされる、そんな繰り返しのなか、彼は決して自分の意志を曲げませんでした。釈放後、インドに亡命して10年以上たった今でも、彼は自らの命よりも大切なもののために闘い続けています。それは母国チベットの再独立、そしてその志を遂げられずに、彼の目の前で牢獄で死んでいった同胞たちに誓った約束です。
2005年夏、アメリカで行われた「フリー・チベット・ウォーク」にパルデンが参加する様子、さらに2006年2月には、チベット人青年会議団が主催した、イタリア、トリノでの断食ストライキの模様を撮影しました。2008年の北京オリンピックに対する抗議の意味を込め、冬季五輪開催にあわせて決行されたこの断食ストライキには、パルデン・ギャツォと2人の若いチベット人が参加しました。周囲の心配をよそに、自らの命をかえりみず、不屈のパルデンが時に涙や笑いをまじえながら、参加した若いチベット人たちを鼓舞する様子をカメラに収めたのです。
パルデン・ギャツォは自らの運命を受け入れましたが、断固として降伏しようとはしませんでした。彼にはハリウッド映画に登場するヒーローのような華やかさはありませんが、人間ひとりひとりが持つ精神のはかり知れない可能性を私たちに見せてくれます。だからこそ、パルデンのライフストーリーは国境や宗教を超え、苦悩と挫折を体験した全ての命に、雄弁に語りかけることができると思うのです。
いま、私たちが生きるのが苦悩と戦いに満ちた時代であるからこそ、彼の精神がひとりでも多くの生に触れることを祈りながら、この映画をお届けします。
(文:楽 真琴監督 ※パンフレットより抜粋)
『雪の下の炎』
2009年4月11日(土)より渋谷アップリンク他、全国順次ロードショー
監督:楽真琴
出演:パルデン・ギャツォ、ダラ・イラマ法王14世、他
2008年/アメリカ・日本/75分
配給・宣伝:アップリンク
公式サイト
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