楽真琴監督(左)と難波章浩氏
今年の3月は、チベット民族蜂起50年、そして昨年のチベット騒乱から丸1年経ち、中国は外国人のチベットへの立ち入り禁止を発表した。世界から注目されている「チベット」を題材に、日本人の若き女性監督が撮ったドキュメンタリー映画『雪の下の炎』が4月11日より公開される。
本作の公開に先駆け、楽真琴(ささまこと)監督がプロモーションのため一時帰国、ロックバンドHi‐STANDARDなどの活動で若者に絶大な支持を受ける難波章浩氏と対談を行った。楽監督と、チベットの自由支援の為のベネフィット・コンピレーション・アルバム『ソングス・フォー・チベット・フロム・ジャパン』の発売を企画した難波章浩氏は、同じ日本で生まれた30代。なぜチベットか?そして音楽や映画がもたらすものとは?
2009年3月2日 『雪の下の炎』×『ソングス・フォー・チベット・フロム・ジャパン』
楽 真琴 監督×難波章浩(Hi‐STANDARD、ULTRA BRAiN)トークイベント開催
── 難波さんは『雪の下の炎』を観てどのように感じましたか?
難波章浩(以下、難波):僕は映画が本当に好きなので、映画を観ると必ず音楽が気になります。この作品もヘッドホンをしながら見させて頂いたのですが、すごく音が美しいと思いました。
楽真琴監督(以下、楽監督):とても低予算でやっていたので、NYの音楽スタジオなどは使えなかったのですが、旧ユーゴスラビアのセルビア出身の編集の子に知り合いのセルビアで大活躍しているオーディオミキサーがいて、その方が担当してくれました。だから、ファイルをインターネットでやり取りしていて、スタジオでミックスした訳ではないのでそういっていただけると嬉しいです。
── 難波さんがチベット問題に対して、強い発言をしているのをネットで見たのですが、どうしてチベット問題に関心をもたれたのですか?
難波:最初は映画『セブン・イヤーズ・イン・チベット』を見てチベットやダライ・ラマに興味をもって、その後、「僕の人生って一体なんだろう!?」という時期に『ダライ・ラマ 死の謎を解く』と出会い、その本の中にすべて答えが書いてあったんです。人生はやっぱり楽しいものだと思えたのです。そして、ビースティ・ボーイズのアダム(・ヤウク)さんから「チベタリアン・フリーダム・コンサートを日本でやるから是非参加してくれ」と話がありました。それは偶然で、すごく嬉しかったのですが、バンドとしてこういった社会性を帯びたイベントに参加することに迷いがあった。でもそこで、チベットのミュージシャン、ナワン・ケチョさんと共演させてもらい、それからは自分の音楽観が変るくらい影響を受けました。
楽監督:それを受けてそれまでチベットのことに興味を持っていなかった、ハイスタのファンの方はどういう反応を示されましたか?
難波:それがきっかけになってチベットについて探求するようになったと、言ってくれる方もたくさんいます。
楽監督:生まれた頃から戦争や弾圧のない平和な生活を送れる若い日本人には「人権」という言葉がどう響くか、ということを考えていて、チベットの「非暴力主義」というのはとても稀有な存在でこれからの世代に伝えていきたいと思うので、もっとわかりやすく、ライトに伝えられないかと、だから難波さんみたいな方が声をかけると若い人達に響くのかと。昨年itunes storeでダウンロードナンバーワンになった『songs for Tibet』というアルバムの日本盤に難波さんが参加されたと伺いました。itunes storeでは、トップページに大きく出ていたんですよね。
難波:『songs for Tibet』も、今度出る『ソングス・フォー・チベット・フロム・ジャパン』も、収益の一部はダライ・ラマによる平和推進活動を基盤にした事業の支援に使われます。アメリカではレーベルの垣根やジャンルを越えて有名なアーティストが楽曲をチベットに提供して素晴らしいなと思いました。それで、『ソングス・フォー・チベット・フロム・ジャパン』として、日本のアーティストで作れないかと、いろいろな方に声をかけました。
楽監督:参加されたミュージシャンの皆さんの反応はどういった感じでしたか?
難波:みんなチベット問題について、とても意識が高いです。なんらかのアクションを起こしたかったけれど具体的に何をすればいいのかと、こういう形で参加できてすごく良かったと言ってもらえました。
楽監督:細野春臣さんとかすごいですよね。
難波:はい。僕にとってYMOは神だったので(笑)たくさんのアーティストの方々が参加してくれたということで、「みんな同じ思いなんだ」と思いました。この映画やアルバムを通して、チベットの事を多くの人に知ってもらいたいです。
── 最後に一言メッセージをお願いします。
難波:チベット人達が早く開放されることを願っています。それに、日本がチベットの人達が訴えられない事実を伝えるチャンスを持っていると思います。一つ一つ伝えていければ、必ず開放されると信じています。
楽監督:一人の人間が小さいからといっても小さくても出来る事があると思います。自分がチベットについて、心に思ったことを伝えたり、感動したことを隣の人に伝えていくだけでも広がり、大きな流れになると思います。そして、パルデン・ギャツオさんの精神力にインスピレーションを受けてほしいです。
『雪の下の炎』
2009年4月11日(土)より渋谷アップリンク他、全国順次ロードショー
監督:楽真琴
出演:パルデン・ギャッツオ、ダラ・イラマ14世、他
2008年/アメリカ・日本/75分
配給・宣伝:アップリンク
公式サイト
『ソングス・フォー・チベット・フロム・ジャパン』 3月25日発売
日本人アーティストによる、チベットの自由支援の為のベネフィット・コンピレーション・アルバム、『ソングス・フォー・チベット・フロム・ジャパン』。発起人は、難波章浩(Hi-STANDARD、ULTRA BRAiN)。海外版『ソングス・フォー・チベット』の日本国内盤にも、邦楽アーティストとして唯一参加していた彼が各アーティストに呼び掛けをし、その呼び掛けに賛同するアーティスト18組が楽曲を提供している。
<収録アーティスト>
あふりらんぽ/ULTRA BRAiN/大沢伸一/CUBISMO GRAFICO/COKEHEAD HIPSTERS/CORNELIUS/TURTLE ISLAND
dj KENTARO/DJ BAKU/DISCHARMING MAN/HAWAIIAN6/BRAHMAN/THA BLUE HERB/BOREDOMS/細野晴臣/MONGOL800/RIZE/WRENCH・・・他