2016-06-13

笠友紀写真展「浜通り雨のあとの余瀝」 このエントリーを含むはてなブックマーク 

本展では福島県の浜通りと呼ばれる海沿いの地域、南相馬市や双葉郡などを撮影した写真が展示されます。笠友紀は昨年、東日本大震災で被災した地域を撮影してまとめたものを「日本東海岸」として発表しました。岩手県、宮城県、福島県を車で移動し撮影していく中で「これまで体験したことのない自然があった」と言います。震災以前にも東北の各地を訪れていた笠は、再び福島に向かい、かつての記憶を思い起こしながら、その場所の自然と向き合い撮影を重ねています。ぜひ、ご高覧ください。
   
雨雲で覆われているスカイツリーは、最上部が隠れていた。いわきまでは海沿いの国道を走る。天候が荒れると予報でも伝えている。対向車線の車も、霧のように舞う高浪の飛沫を浴びていた。
夕方を過ぎる頃も雨が止むことはなくて、街から離れた寂しい道々ではすれ違う車も徐々にいなくなっていった。その道中で無造作に車道の真ん中まで倒れた木があった。突然の出来事だったが思いのほか落ち着いていた。道路上に溜まる水がトラックに巻き上げられ、フロントガラス全体にまで凄い勢いでかかる。
福島第一原子力発電所あたりに新しくできた道の上にも放射線のモニタリングポストがあった。ここの表示では、3.7マイクロシーベルト。後の調べによると安全な放射線の数値は、「年間20ミリシーベルト」すなわち、「毎時3.8マイクロシーベルト」が目安だったが、慣れない環境では心配になる。避難指示が続いており帰還困難区域へは立ち入れない。避難指示区域の影響で一山を避けるようにまわった。この国道が今年は通過できるようになったので、南相馬まで道を変えずに済んだ。
三日前から関東で続いた雨は、福島への移動後も続いている。それは50年に一度の大雨となり途中通った茨城では、鬼怒川上流がすでに氾濫していた。
宮城県の吉田川も氾濫したとのニュース。様子を窺い、このまま留まることにした。落ちついてからは昨年振りに、鹿島駅辺りの復興商店街へ。以前に入ったところと違う店を選ぶ。場所を思い出せてよかった。
天候は依然としてどしゃ降りのままだった。宮城県富谷町は厳重警戒が続いているため、ここから北に位置する宮城県岩沼行きをとうとう諦めた。
これまで海沿いに波の高さを見ていたので海に近づきたくはなくなっていた。
小高の町周辺で出会った人は雑草がのびた畑のような所を指し示し除染が終わっていると説明する。富岡では、午後三時迄で町から離れるようにと町内放送が伝えた。途中、テレビ収録の為なのかカメラの前でアナウンサーが、背後に見える廃棄物の仮置き場を振り返り何かを伝えている。この辺りは昨年迄入ることの出来なかった場所で、道なりに進むと奥には壊れた家があった。 笠友紀

▼ 展示内容/インクジェットプリント、356×435mm、約20点

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写真展 / 写真 / 展覧会 / 個展


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