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2010-06-06 22:00


木村伊兵衛写真賞、歴代受賞作を一挙公開!第1期として石内都、藤原新也、岩合光昭などの作品を展示

木村伊兵衛写真賞35年周年記念展を6月27日まで川崎市市民ミュージアムで開催中。入場無料。
木村伊兵衛写真賞、歴代受賞作を一挙公開!第1期として石内都、藤原新也、岩合光昭などの作品を展示
平良孝七 「多良間島 1975年11月 「パイヌカジ(南の風)」より」

川崎市市民ミュージアムで現在、「木村伊兵衛写真賞35周年記念展」が開催されている。これは、1年にわたりこれまでの受賞者を5期に分けて全て紹介、作品を展示するとともに、11月には2004年以降の最新受賞作品と木村伊兵衛作品の展示を行う。開催中の第1期は、6月27日(日)まで。膨大なコレクションの中から、各受賞者の作品とプロフィールを紹介するとともに、川崎市市民ミュージアム 学芸員の林司さんが、現在展示中の作品の見どころを語った。

見どころ!川崎市市民ミュージアム 学芸員 林司

6月27日まで展示している第1回(1975年度)から第7回(1981年度)までの作品が撮影された当時は、東京オリンピックや大阪万博、あるいは学生運動といった高揚と熱情から少し距離を置いて、冷静に物事を見つめる時代でした。

第1回受賞の北井一夫は、高度経済成長の中、成田空港建設反対に揺れる地元農民を記録していましたが、学生運動に挫折し、都会から取り残される地方の田舎を撮影した「村へ」で第一回木村伊兵衛写真賞を受賞しました。また、第2回受賞の平良孝七の「パイヌカジ(南の風)」は、アメリカからの返還前後の沖縄を現地の人間が記録したものとして、斬新なカメラワークとともに評価されました。この他、「メメント・モリ 死を想え」の著者としても知られ、日本のバックパッカーの先駆けでもある第3回受賞の藤原新也や、人間の皮膚や服といった体を覆う物質と時間の関係を追い続ける第4回受賞の石内都、現在も環境問題と自然を精力的に撮影し続けている第5回受賞の岩合光昭、東京の猥雑で魅力的な夜をフラッシュ一発で射止めた同じく第5回受賞の倉田精二、戦争花嫁を丹念に取材し、日本とは何かを記録し訴え続ける第6回受賞の江成常夫、日常の過ぎゆく風景を繊細なまなざしで綴った第7回受賞の渡辺兼人など、現在の写真表現の元祖とも言える作品が多数展示されています。

北井一夫
第1回(1975年度)

1944年中国鞍山生まれ。65年日本大学芸術学部写真学科中退。と横須賀の原潜寄港反対闘争の写真『抵抗』を自費出版。成田空港建設反対論争を続ける農民たちを撮影し続け、71年『三里塚』(のら社)を出版。72年から『アサヒグラフ』に「沖縄放浪」「フランス放浪」を連載。74年から『アサヒカメラ』に「村へ」「そして村へ」を連載。

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北井一夫「路地の子どもたち 長崎 平戸」1972年

平良孝七
第2回(1976年度)

1939年沖縄県大宜味村喜如嘉に生まれる。58年辺土名高等学校卒業。62年にDP社を開業、同年琉球新報社写真部・琉球放送テレビ放送部に勤務。69年『沖縄』を出版。70年琉球政府(現沖縄県庁)広報部に勤務。75年『パイヌカジ』を自主出版する。沖縄在住の写真家が宮古・八重山群島を5年間にわたし撮影したドキュメンタリーとして高く評価された。94年逝去。

藤原新也
第3回(1977年度)

1944年福岡県北九州生まれ。69年東京芸術大学油画科中退後、アジア・ヨーロッパ諸国を12年間放浪。71年から79年にかけて『アサヒグラフ』に「インド放浪」「逍遥游記」などを掲載。数年間にわたるアジア放浪を、独自の空気感で撮影した作品が評価された。

0_藤原新也
藤原新也「逍遥游記」1974年-1979年

石内 都
第4回(1978年度)

1947年群馬県生まれ。70年多摩美術大学デザイン科織りコース中退。写真を独学。75年に写真展「写真効果3」(シミズ画廊)に参加。78年に写真展「アパート」(銀座ニコンサロン)を出版。

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石内 都「アパートメント」1978年

岩合光昭
第5回(1979年度)

1950年東京都生まれ。73年法政大学経済学部卒業。動物写真家の父・岩合徳光の取材旅行に同行、19歳の時に訪れたガラパゴス諸島の自然に魅了され、フリーの動物写真家になる。ガラパゴス諸島や東アフリカなどの海外撮影「海からの手紙」(アサヒグラフ)を連載。『ナショナル・ジオグラフィック』の表紙を2度にわたって飾り一躍有名になる。

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岩合光昭「サンゴ礁の恋人たち ギンカモメ グレートバリアリーフ へロン島 1979年4月『海からの手紙』より」

倉田精二
第5回(1979年度)

1945年東京都生まれ。68年東京藝術大学美術部卒業。中学高校で絵画を教える。油絵、版画、実験映画を制作。76年ワークショップ写真塾森山大道教室に参加。80年には池袋の街、風俗をフラッシュ撮影した『FLASH UP』(白夜書房)を出版。

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倉田精二「土曜の夜 ディスコはねても 池袋・ロマンス通り 1975『FLASH UP Street Photo Random Tokyo 1975-1979』」

江成常夫
第6回(1980年度)

1936年神奈川県生まれ。62年毎日新聞社に入社。74年にフリーになり渡米、ニューヨークに滞在。78年渡米、日本人の戦争花嫁を取材。写真と文章を織り交ぜた「フォト・ノンフィクション」の方法論で『花嫁のアメリカ』(アサヒカメラ別冊)を出版。以後一貫して“負の昭和”をテーマに写真活動を続ける。

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江成常夫 トリコ・フォーク San Diego『花嫁のアメリカ』より「サンジエゴのシーワールドで、ニッポンの民謡ショーをみせてんのよ。…東京音頭なんかね」

渡辺兼人
第7回(1981年度)

1947年東京都生まれ。69年に東京綜合写真専門学校を卒業。現在同校の専任講師をつとめる。73年に初の個展「暗黒の夢想」(銀座ニコンサロン)を開催。80年に小説家金井美恵子との共著『既視の街』を発行。翌年に写真展「既視の街」を開催。

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渡辺兼人「既視の街」1980年

木村伊兵衛写真賞 35周年記念展【第1弾】
開催中~6月27日(日)川崎市市民ミュージアム

会場:川崎市市民ミュージアム[地図を表示]2階アートギャラリー
料金:無料
時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:毎週月曜(祝日の場合は開館)、祝日の翌日(土日の場合開館)

第2期【第8回~第16回受賞者】7月3日(土)~10月3日(日)

受賞者:北島敬三(1982年度)、田原桂一(1984年度)、三好和義(1985年度)、和田久士(1986年度)、中村征夫(1987年度)、宮本隆司(1988年度)、星野道夫(1989年度)、武田 花(1989年度)、今 道子(1990年度)

第3期【第17回~第22回受賞者】10月9日(土)~2011年1月16日(日)

受賞者:柴田敏雄(1991年度)、大西みつぐ(1992年度)、小林のりお(1992年度)、豊原康久(1993年度)、今村光彦(1994年度)、瀬戸正人(1995年度)、畠山直哉(1996年度)

第4期【第23回~第29回受賞者】2011年1月22日(土)~4月10日(日)

受賞者:都築響一(1997年度)、ホンマタカシ(1998年度)、鈴木理策(1999年度)、長島有里枝(2000年度)、蜷川実花(2000年度)、HIROMIX(2000年度)、松江泰治(2001年度)、川内倫子(2001年度)、佐内正史(2002年度)、オノデラユキ(2002年度)、澤田知子(2003年度)



企画展【最新受賞作品と木村伊兵衛作品を展示】
2010年11月13日(土)~2011年1月10日(日・祝)

受賞者:中野正貴(2004年度)、鷹野隆大(2005年度)、本城直季(2006年度)、梅 佳代(2006年度)、岡田 敦(2007年度)、志賀理江子(2007年度)、浅田政志(2008年度)、高木こずえ(2009年度)
同時展示:木村伊兵衛作品

川崎市市民ミュージアム公式サイト

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