2013-11-04

『マイ・マザー』クロスレビュー:グザヴィエ・ドランという存在 このエントリーを含むはてなブックマーク 

『I killed my mother』

このタイトルを意味するシーンは序盤で出てくるのだが、このタイトルには様々な意味が含まれているのだろう。

なんとなく、ただ辛辣な映画なのかと思っていたが、割とコメディ的な要素もあり、とてもエンタテインメントな作品に仕上がっていた。
イメージ的、抽象的映像の羅列(と言っていいかわからないが)にややだるさを感じてしまったが、『わたしはロランス』にも通ずるスローモーションと音楽、モノクロの自分撮り、8ミリ風の映像、コマ撮りと様々な映像表現を駆使し、作品世界を構築している。

思春期のドラン演じる息子・ユベールは悪趣味で口煩い母親に刺々しくぶつかり続け、また母親も本人以外の口から息子がゲイだと聞き、息子に向かって「あなたは親にはならないだろう」などと、言ってはならないことを言ってしまう。試写会の後のトークショーで、思春期の息子と更年期に差し掛かっている母親の「ホルモンのぶつかり合い」という表現があり、上手いこというなぁと思った。
ドランの書く台詞(あるいは会話)には、こうした芯をつく台詞がある。例えば『わたしはロランス』でも、カフェでスザンヌ・クレマン演じるフレッドがぶしつけな質問をする店員にブチ切れるシーンがある。
そのスザンヌ・クレマンは今作でも教師役で出演している!端役ではあるけれど、とても重要であると思う。ドラン作品では。スザンヌ・クレマンはとても魅力的な俳優だ。画面に出てくるだけでひき込まれる。

『マイ・マザー』はグザヴィエ・ドランの半自伝的な物語である。
「映画は僕にとって、人生に対する復讐の手段」だと言うドランは、今までに人や世界を恨みながらも本当は真逆の思いを人々に、世界に対し持っていたのではないかと思う。この作品を観て私は優しさや渇望を感じた。グザヴィエ・ドランはただクリエイティブな才能があるというだけではない、なんと言ったらいいのか・・・おそらく自分をさらけ出し、だからこそたくさんの人を引きつけてしまうのだろうな。作り手だったらそんなの当たり前ではあるけれど・・・。それでも、やはり人の事は作品を観ただけではわからない。
東京国際映画祭で上映のあった『Tom at the farm』はまた今までの作品とは全く違った雰囲気の作品だった。とても不可解で怪奇、とも言える。
現在、五作目となる『Mommy』の製作中であるらしい。
おそらくこれからもグザヴィエ・ドランの作品はどうしても気になってしまうと思う。

キーワード:

グザヴィエ・ドラン / Laurence / Anyways / I / kiiled / my / mother


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