『グザヴィエ・ドラン/わたしはロランス+トム・アット・ザ・ファーム Blu-ray BOX』映像特典『ドラン先生の公開授業』より
グザヴィエ・ドランの主演作『エレファント・ソング』が6月6日(土)より公開される。現在、監督作『Mommy/マミー』が公開中、そして現在開催中の第68回カンヌ国際映画祭の審査員に選出されているドラン。今後の監督作としても、マリオン・コティヤールやレア・セドゥなどが出演するフランス語作品『Juste La Fin Du Monde(日本語タイトル:まさに世界の終わり)』と、ジェシカ・チャスティンやスーザン・サランドン出演の英語作品『The Death and Life of John F. Donovan』が控えている。
『エレファント・ソング』は、ある精神病院で起きた医師の失踪事件の謎を探る入院患者の青年マイケルと病院長グリーンとの緊迫したやりとりを描く物語。ドランは、ニコラス・ビヨンによる同名の戯曲に惚れ込み、プロデューサーのリチャード・グードゥローとレニー・ジョー・グードゥローに「この男は僕自身だ」と出演を熱望したというだけあり、彼の演技を堪能することができる作品だ。今回は彼が今作への思い、そして共演するブルース・グリーンウッドそしてキャサリン・キーナーについて語ったインタビュー記事を掲載する。
主人公マイケルを人間的でかつ傲慢な感じにしたかった
──最初に、出演のきっかけから教えてください。
劇作家のニコラス・ビヨンがすべての仕掛け人なんだ。彼のお父さんと僕が友だちで、この戯曲が映画化されると話していたんだ。それで戯曲の脚色をしているところだと。「ホントなの?」と僕が聞くと、彼は「うちの息子が脚色を手掛けていて、プロデューサーもいるし、すべてそろっている。ただ監督はまだ決まってないんだ」と言っていた。それで、戯曲を読んだんだ。すぐにこの役に恋してしまったよ。俳優にとって、楽しんで出来るし、難しくもある役なのはすぐに分かった。それで、どうしても演じたいと思ったんだ。僕はプロデューサーに電話をして、僕のエージェントも一緒に、ランチをしたんだ。そして、こう言った。「この男は僕なんだ。僕自身だ。だれが監督することになっても、僕にこの役を任せてくれないか。やりたいんだ。本当に楽しんでやれるし、そうできると信じてる」と。プロデューサーは言った。「分かったよ、名案だね」と。最終的にシャルルがこのプロジェクトの監督に決まって、僕たちは一緒に仕事をすることが出来たんだ。僕も一緒に仕事がしたかったしね。こういう風に実現していったんだ。
映画『エレファント・ソング』より
──マイケルの役作りについて、どのように取り組みましたか?
本当に時間がなくて、というのは現場に入る3日前まで『Mommy/マミー』を撮っていたんだ。でも、精神障害について調べるよりも、マイケルを奇妙で、人間的で、かつ人を巧みに操る、傲慢な感じにしたかったんだ。彼は、ただ人を操るのが巧みで、人に自分を印象付けたがっているだけで、マイケル自身が役者なんだ。唯一僕が心がけたのは、なにをしていても楽しむことだった。過剰な演技との境界は紙一重で、つまり役者としての自分がやりすぎになるのと、役が演技するのが過剰になるのとの境目が難しい。
彼を演じることはとても楽しいことだったよ。おもしろいことを言うし、見かけも変わっているし。シャルルは僕のアイデアすべてを受け入れてくれた、すべてだよ。台詞じゃなくて、アイデアをね。彼は楽しむのが好きだし、役者を尊重し、愛している。僕がやり過ぎたりしたときは言ってくれるけど、でも、僕のアイデアのほとんどをおもしろいと思ってくれて、受け止めて、取り入れてくれたよ。
予期できない何かを生み出すのは脚本じゃなくて俳優なんだ
──ブルース・グリーンウッド、キャサリン・キーナーら共演者との撮影現場はいかがでしたか?
とにかく素晴らしかったよ。キャサリンと一緒に仕事が出来たことは素晴らしかった。僕らはスケジュールがなかなか合わなくて、飛び飛びにしか会えなくて、一緒にいられたのはほんの短い時間だったけど、すぐに強いきずなを感じたよ。僕たちは、性格がよく似ていたからね。
映画『エレファント・ソング』より、キャサリン・キーナー(右)とグザヴィエ・ドラン(左)
映画『エレファント・ソング』より、ブルース・グリーンウッド
ブルースは、とてもすてきな相手役で、最初、僕らは意図的に距離を置いていた。映画の中で、マイケルとグリーン院長が初めて会うシーンの前までは「僕らもこのシーンの前に会わないようにしよう」と言い張ったんだ。でも、完全に失敗だったよ。そのシーンの撮影でものすごく緊張してしまって、2人とも台詞を全部忘れてしまったんだ。言うならば、最後のカットで「初めまして、グザヴィエです」と自己紹介し合うような感じだったよ。ただ、撮影期間を通じて、僕たちは魔法がかかったようにどんどん親しくなっていった。彼は自分の家族の話をして、僕は恋愛の話をしたんだ。
映画『エレファント・ソング』より
ではあらためて、演じることの魅力について教えてください。
映画において、予期できない何かを生み出すのは脚本じゃなくて俳優なんだ。きれいな照明やセットや衣裳もいいセリフも、俳優が左右する。観客の心に響かせるのは俳優という人間の能力だ。違うタイプの映画もある。『怒りのキューバ』や『鶴は翔んでゆく』といった傑作は知的な刺激を与える。こういう作品は映画の見方というものを変えてくれる。そして映画を通して人生や周囲の人に対する考えを変えさせるのは俳優の力だ。撮影現場でなければその力が生まれるかどうかわからない。
僕が本当に自分の情熱を傾けていると感じるのは、演技すること。監督をしている時でさえ、僕を気持ちがひどく高ぶるまで乗っている状態にしてくれるのは、撮影していて演技が素晴らしかった時で、「いいぞ!いいぞ!」と興奮してしまう。それこそ僕を導いてくれるものであり、目指しているものだ。だから、監督として、それらしい恰好をしている時でさえ、僕はやっぱり俳優なんだ。
(プレスより引用)
【関連記事】
女装とは自由の本質を露呈させる行為― 男装をやめた東大教授、安冨歩さんが語る『わたしはロランス』(2015-04-30)
http://www.webdice.jp/dice/detail/4679/
あの強烈なテンションの秘密!『Mommy/マミー』グザヴィエ・ドラン流演出法を明かす(2015-04-08)
http://www.webdice.jp/dice/detail/4646/
ドラン新作にマリオン・コティヤール、レア・セドゥ(2015-04-29)
http://www.webdice.jp/topics/detail/4680/
カンヌ国際映画祭審査員にグザヴィエ・ドランが(2015-04-22)
http://www.webdice.jp/topics/detail/4672/
男たちの関係は残忍で美しい、ドランが語る『トム・アット・ザ・ファーム』(2014-10-17)
http://www.webdice.jp/dice/detail/4439/
ロマンチックで、恐ろしいほどリアルな「愛」の描き方。『わたしはロランス』グザヴィエ・ドラン監督(2013-09-06)
http://www.webdice.jp/dice/detail/3969/
映画『エレファント・ソング』
2015年6月6日(土)より、新宿武蔵野館、渋谷アップリンク他、全国順次公開
マイケルは美しい青年だった。14歳のときオペラ歌手である母が目の前で自殺し、その後、現在に至るまで精神病院に入院している。彼は病院で一番の問題児とされており、ゾウにまつわるあらゆることに異常なまでの執着を示していた。ある日、彼の担当医であるローレンスが失踪した。手がかりを知るのはマイケルだけ。マイケルのことをよく知る看護師長のピーターソンは「マイケルは茶化すだけで真実を話さない」と助言するが、院長のグリーンは彼に事情を聞くことを試みる。すると、話をする代わりに、と彼は3つの条件を提示した。グリーンは条件を飲むが、マイケルはゾウやオペラについての無駄話で、話をそらすばかり。「母を殺した」「ローレンス医師から性的虐待を受けていた」など、嘘か本当かわからないようなことをほのめかす。いつしかグリーンはマイケルの巧妙な罠に取り込まれていった……。
監督:シャルル・ビナメ
脚本:ニコラス・ビヨン
撮影:ピエール・ギル
編集:ドミニク・フォルタン
出演:グザヴィエ・ドラン、ブルース・グリーンウッド、キャサリン・キーナー、キャリー=アン・モス、ガイ・ネイドン、コルム・フィオールドン、ほか
配給:アップリンク
2014年/カナダ/100分/シネマ・スコープ/DCP
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/elephantsong/
公式Facebook:https://www.facebook.com/elephantsong.jp
公式Twitter:https://twitter.com/elephantsong_JP
▼映画『エレファント・ソング』予告編
【完全初回生産限定版】
グザヴィエ・ドラン/わたしはロランス+トム・アット・ザ・ファーム Blu-ray BOX
発売中
TCBD-0456
価格:10,800円(税込)
発売元:アップリンク
販売元:TCエンタテインメント
★映像特典★
●『ドラン先生の公開授業』
パリの映画館forum des imagesが開催した、グザヴィエ・ドランのマスタークラス(公開授業)を約2時間収録
●『トム・アット・ザ・ファーム』監督インタビュー(10分)、日本版予告編、本国版予告編
●『わたしはロランス』グザヴィエ・ドラン監督の解説付き未公開シーン(53分)、日本版予告編、本国版予告編
★封入特典★
●『わたしはロランス』ビジュアルブックレット
●グザヴィエ・ドランのポートレートカード4枚セット
●『トム・アット・ザ・ファーム』オリジナルステッカー
【仕様】
3枚組(Blu-ray:2枚+DVD:1枚)
©Xavier Dolan, Clara Palardy/©2012 Production Laurence INC / MK2 SA / ARTE France CINEMA
Amazonでのご購入は下記より
http://www.amazon.co.jp/dp/B00T77LBEG/webdice-22
渋谷アップリンク2階のUPLINK MARKETでは、オリジナル限定特典(『わたしはロランス』A3サイズポスター)付きで発売中
販売価格:7,900円(税込)
http://www.uplink.co.jp/market/2015/37070
映画『Mommy/マミー』
新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA、109シネマズ二子玉川、センチュリーシネマ、シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、京都シネマ、シネツイン にて上映中、ほか全国順次公開
監督:グザヴィエ・ドラン
出演:アンヌ・ドルヴァル、スザンヌ・クレマン、アントワン=オリヴィエ・ピロン
配給:ピクチャーズデプト
提供:鈍牛倶楽部、巖本金属
2014年/カナダ/フランス語/日本語字幕/138分/DCP/カラー/ドルビーデジタル/1:1
© 2014 une filiale de Metafilms inc.