骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2013-11-08 17:40


グザヴィエ・ドラン監督は感情のセッションとでも呼ぶべき振り幅と容赦の無さで母親と対峙する

肉親への愛情と憎悪がぶつかりあう様を描く通過儀礼のドラマ『マイ・マザー』クロスレビュー
グザヴィエ・ドラン監督は感情のセッションとでも呼ぶべき振り幅と容赦の無さで母親と対峙する
映画『マイ・マザー』より ©2009 MIFILIFILMS INC

監督・主演を務めるグザヴィエ・ドランが自らの故郷であるケベックのとある町を舞台に、17歳の少年と彼の母をめぐる日常を描く今作は、この後『胸騒ぎの恋人』『わたしはロランス』『トム・アット・ザ・ファーム』と作品を重ねていく彼のオリジナリティの源泉を感じることができる。スローモーション、シンメトリーな画面構成、ロックやポップスなどの音楽の効果的な使い方など演出的な面のみならず、他者とのコミュニケーションを切望しながら、その困難さを乗り越えていこうとする主人公の感情の揺れ動き、何気ない日常のワンシーンをドラマチックにしてしまうストーリーテリングの巧みさといった部分に関しても、『マイ・マザー』ではその片鱗を感じることができる。

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映画『マイ・マザー』より ©2009 MIFILIFILMS INC

なにもかもが耐えられない存在でありながら、それでも折り合いをつけようとする母親との関係を、コミカルさを交えながら描写するドラン監督の筆致は確かなものだ。自身に対して無関心で無礼な人に対する容赦ない糾弾は『わたしはロランス』でも垣間見られたが、今作はそれが肉親の母へ向けられる。冒頭の彼女の口元のアップなど、嫌悪と愛情が入り混じった感情を、映像で感覚的に描ききることのできるのは彼の才気と言うべきだろう。主人公の少年が母とのコミュニケーションにどのように折り合いをつけるのか。観客は必ずや、無邪気さや残酷さを持って思春期のいらだちを画面に叩きつけるこの処女作に感服することだろう

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映画『マイ・マザー』より ©2009 MIFILIFILMS INC

映画『マイ・マザー』
11月9日(土)より渋谷アップリンクほか、全国順次ロードショー

監督・脚本・主演:グザヴィエ・ドラン(『わたしはロランス』『胸騒ぎの恋人』『トム・アット・ザ・ファーム』)
出演:アンヌ・ドルヴァル、スザンヌ・クレマン、フランソワ・アルノー、パトリシア・トゥラスネ、ニール・シュナイダー
配給:ピクチャーズデプト
提供:鈍牛倶楽部
特別協力:ケベック州政府在日事務所
後援:カナダ大使館
2009年/カナダ/カラー・白黒/100 分/1:1.85/フランス語・日本語字幕
原題:I Killed My Mother
©2009 MIFILIFILMS INC

公式サイト:http://www.ikilledmymother.net/
公式Twitter:https://twitter.com/XDolanJP
公式Facebook:https://www.facebook.com/XDolan1ste

▼映画『マイ・マザー』予告編


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