政治は舞台であり、政治家は役者である。
なかでも選挙は、最高に絵になる舞台と言えよう。
「史上初!? 衆院選ドキュメンタリー映画」と銘打たれた『ムネオイズム2.0』。
これまた最も役者的な政治家・鈴木宗男が主役である。
彼がまみれた数々の疑惑について。自民党的政治について。ロシア外交について。
映画は政治家・宗男について多くは語らない。ただひたすら“選挙屋”としての彼の一挙手一投足を追うのみだ。
しかし、その挙動から目が離せない。
選挙戦が過酷になればなるほど、彼の小柄な体からとめどもなくエナジーがほとばしってくるように見える。
谷亮子にとってのオリンピック、小林幸子にとっての紅白歌合戦のように、宗男にとっての存在意義が選挙。いや、選挙こそ宗男そのものなのだ。
金子遊監督のプロダクション・ノートには、この映画を通して「ニッポンと北海道の政治について関心を持ち、投票権という自分の権利について再考いただけたら幸いです」とある。
否。政治的無関心も、東日本大震災も、関係ない。
ただただ、鈴木宗男という稀有すぎる役者がギラギラと光り輝く舞台を追う、その高揚感のみにフォーカスした、ある意味ストイックな映画だ。
鑑賞後、私は逃れられない宗男の魔力に憑りつかれ、はからずしもこのオッサンに日本の未来を預けたくなってしまった。
そんな催眠効果を秘めた、取扱注意作品だ。