映画『アルマジロ』より
国際平和維持活動の名の下に派兵されたデンマークの若者たちアフガン戦争最前線に密着撮影したドキュメンタリー映画『アルマジロ』が2013年1月19日(土)より公開。それに先立ち、12月16日(日)の衆議院解散総選挙の前日となる15日(土)、渋谷UPLINK ROOMで先行上映会が開催された。
この先行上映会は、今回の総選挙で自民党が公約に「憲法改正により自衛隊を国防軍として位置づける」と掲げるなど、国防の問題が原発問題やTPP参加の是非、増税問題に加え、非常に重要な争点となっていることから、今作を観て、徴兵制、防衛軍、憲法改定についてどのように考え、行動していけばいいか、というディスカッションの場として催された。
当日は、「原発事故に続き、徴兵制などと政治家が発言し、子どもの命を何も考えていない日本でこれからどう子どもを守っていけばいいか考えたい」という母親や、「もっと広く平和について国防について考えてみたい」という自衛隊院を恋人に持つ女性など、10代から70代まで、約30名が参加した。
ナビゲーターである今作を配給するアップリンクの浅井から、『アルマジロ』が制作されたバックグラウンドについての解説の後、ディスカッションがスタート。活発な意見が交わされた。
「戦地に送り出す家族の側から観ていて、いたたまれない」
「デンマークは18歳から32歳の男子を対象に徴兵制が行われており、『良心的兵役拒否』が認められている。兵員数は2万5千人、予備兵役が1万2千人、強度防衛軍が5万1人、合計8万人が従軍。日本は平成21年度のデータでは日本の自衛隊は23万人となっている」(浅井)
「一筋縄ではいかない気がしている。平和活動として使われている、というときに、これが本当に平和活動として使われるのかもう少し議論が必要な映画だという気がする。もう一度観ようと思っているけれど、もう少し考えなければいけない。複雑だなと思った」(男性A)
映画『アルマジロ』総選挙直前イベントが行われた会場の渋谷UPLINK ROOM
「国連の平和維持活動の一貫として、アメリカを含む同盟国がアフガンで平和のための戦っている」(浅井)
「平和という言葉自体が2つも3つも解釈がある。国連が言っている平和維持活動と、徴兵というものに反対するという意味の平和と、この映画で描かれているように各国がやっていることの平和と、平和の意味が違うように思う」(男性A)
「どちら側に対しての平和か、というのは僕も思います」(浅井)
「紛争地域には、こういう国際的な援助が必要だと思うんですが、そこにデンマークの少年たちが来て、自己充実を感じてまた戻っていく。私には子どもがいるのですが、送り出す家族の側から観ていて、いたたまれない。国防軍になって日本から送り出すことになったら、と思うとすごく考えさせられる。」(女性A)
「日本だけはお金を払えばいい、というのは間違っていると思う。徴兵制は必要だし、日本軍も必要だと思うし、憲法から改正する必要があると思います。平和を維持するために、同じように戦うことが必要。人間はみな同じですから、人は死んでも、こちらは撃たない、というのはおかしいので。この映画を観て、集団的自衛権の解釈を拡大して、戦争に行くこともいとわない」(女性B)
「私は31歳なんですけれど、いままで選挙に行かない主義で。育った時から不況とか就職できないとか金がないという時代に生きてきて、非常に退屈で、なにか起きても他人事でした。サリン事件やバスジャック、阪神大震災、そして今回の311の事故が起きても、被害に遭われた方には不愉快に感じられるかもしれないですが、外から見ているワクワク感、何かが起きて世の中が変わることがおきないかと生きてきました。震災、津波の映像を見たり、原発の放射能の問題が起きた時、多くのSF映画で描かれているような、大きな社会変革が起きるんじゃいかと思っていました。今回の選挙で徴兵制、国軍という言葉が出てきて、日本国民として当時者なんだけれど、傍観してしまうというか。特に徴兵制度、憲法改正については、昔は言っただけで首がとんだけれど、いまはそれを飛び越えて、軍隊さえ持とうという議論になっている。今まで敏感だったものを飛び越えてしまって、意外と平気で受け入れている。
この映画の宣伝でも『これはフィクションではない』といっているが、湾岸戦争や災害は、私にとってはフィクションなんです。でもこの映画は、フィクションだとは思えない。自分が兵士として従軍して行ってきたような気持ちになった。相手が撃ってきたときは身をかがめて震えてしまうような映画だった。ドキュメンタリーでもフィクションでもない、現実をそのまま観た感覚を受けました。どこで起きたか分からないものじゃなくて、本当に起きたことを体験してきた、そういう感覚になる映画でした」(31歳、男性B)
「兵士として殺しあっていることの裏を想像する力を、どうやって培っていったらいいか」
「すごい映画だと思いました。空爆が終わった2002年から毎年アフガニスタンに行っていて、見慣れた風景で、アフガニスタン人の仕事仲間の事務所も危険だったりする時期があったので、非常に実感がありました。自分としては、自分としては見てきたことを、いろんな機会に話してきたんですけれど、なかなか伝えきれない。こういう臨場感のある映像で伝える機会を与えてくれたことをほんとうに嬉しいなと思います。
アメリカ軍はタリバンを攻撃し総統するために現地に行っているのとは別に、ISAF(国際治安支援部隊)という組織は人々の暮らしを守る治安維持のために行っているというのが大前提で、でも住人は『帰ったほうがいい。あなたたちにタリバンを追い出すことはできない』と言う。タリバン軍は10万人以上いて、それだけの人を雇用できるだけの組織力と金がある。でもISAFとアメリカ軍を足しても10万人もいません。
30年戦争をやっている国で、みんな家族がいる。むごたらしく殺されていく兵士たちにも家族がいる。人を殺しているのが現実で、私は戦争にぜったい反対だし、日本人が海外に行って人を殺さないことに賛成だし、憲法改正にも徴兵制にも反対の立場を持っています。ただ、徴兵制のある他国に『徴兵制を止めろ』といま主張するつもりはないですけれど、現地の感覚を見て、この映画を観て思うことは、そこの意識のなかでアフガニスタンの人の生活は欠如している。生死をそこに送り込むこと、人を殺すこと、兵士として殺しあっていることに関して、死んでいる人のバックグラウンドが、映像でかなりのものが見えているけれど、その裏にはさらに見えないものがある。そこを想像する力が僕らにはぜんぜんない。それをどうやって培っていったらいいか感じています。
そしてこの会場でも実際いろんな意見があって、自分が思っていることがみんなと同じ感覚ではないんだな、ということにもびっくりしています。この映画を観たときに、平和を維持していると観たか、アフガニスタンという国を破壊していると観たか、どちらかというのは興味があります。現実としてISAFはアフガニスタンの治安を維持できていないと思うんです。成功譚なのか失敗譚なのか、そういう問題ではないのかもしれないけれど、興味を持ちました」(男性C)
映画『アルマジロ』より
「アフガンの人たちにとっては、タリバンと維持軍どちらが勝っても平和にはならない。どうしようもない」(女性C)
「この映画だけを見て、憲法改正して、軍隊を出していいという意見なら、間違いなく無責任だと思う。今の選挙もそういうところがあると思う。アフガニスタンのこともタリバンのことも観ただけでは分からないし、普通の情報では入ってこない。中東ではアメリカで悪者とされている人たちが最終的に利用され、オサマ・ビン・ラディンのように殺される。全体的な世の中の流れを見て日本も負担したほうがいい、その先にあるそこの国の生活や思想をぜんぶひっくるめて本当に思うなら、そこの理由を聞いてみたい。ほんとうに考えていかないといけないし、日本はもっとちゃんと考える人たちだったんじゃないかと、今の動きが残念です」(男性)
「ぶっちゃけ、あまりににもなよなよしている人間が多いと思っただけです」(女性B)
「そういう考え方には、よその国で紛争があったら日本も協力するべきだという考えが根本にあると思うんです。憲法改正は選挙が始まったときに出てきたことで、今その話をすることかなって。改正はともかく、せめて議論は将来的にしていかなくちゃいけないことだろう。映画を観て思ったことは、結局舞台となる村は根本問題なにも解決してないんだなということ。例えばあの村に日本の自衛隊がいったら、アメリカ軍のいうことを聞いて適当に雑用をこなすだけではないか。紛争地帯をとりかこむ状況が複雑なので、相手が構えたら撃ってもいいかもしれない。でも銃を降ろしたら、それは撃てない、とかせっかく種を蒔いた畑が台無しじゃないか、とか。そんなところで、日本の国防軍はやっていけないんじゃないか。そして、最後に期間を終えて家族と抱き合う顔を見ると、結局、人間は戦争をしたくないんじゃないか、と思う。でも『また行きたい』という人が出てくることについては『ハート・ロッカー』を観たからか、とか、いろいろ考えたりします」(男性D)
「陶酔状態になっている様子に、虚しさを感じられるか、そうでないか」
「今までいくつかの作品で、アフガンでもイランでもソマリアでも、PKOが行われている地域を扱った映画はたいてい送り込んだ側の視点で描かれている。『アルマジロ』は、『あんた方兵士やタリバンは撃つだけ。死ぬのはみんなワシらだ』というアフガンの住民の言葉をきちんと取り入れている。その監督の姿勢に共感できる。西アフリカのシエラレオネのザ・レフュージー・オールスターズの歌の中に『2頭の象が戦うときに、踏みつけられるのは足元の草だ』というフレーズがあって、内戦でも紛争でもPKOが入り込んだ争いでも、巨大な軍の戦いに巻き込まれて被害を受けるのは、この映画で畑を踏みにじられ、牛を殺され、家族を奪われ、家を破壊されて行き場もなく、手に持てるものだけ持ってとぼとぼ歩く人たちなんです。その姿をきっちり描いている。そこと派遣された人たちの、一種妙な陶酔状態になっている様子に、虚しさを感じられるか、そうでないかが分かれ目なのかもしれません。こういう場を持つことで、そして繰り返しご覧になることで、自分のなかで芽生えた疑問を徹底的に話し合う、時間をかけてじっくり考える素材として、この映画は議論を深めるためにすごくいいと思いました」(女性D)
「戦争に対して麻痺していく気持ちが怖いと思いました。最後に兵士たちが『また行きたい』と思うのが理解できない。戦場で経験したものが麻薬的な快感があるはずで、当事者ない人も同じ感情で見ている可能性があるのが怖い。仕事で100年前の戦争を調べていて、戦争に対する見方で、その戦争を称える人がいて、上司もそう思っていて、でも私はそう思わない。自分がその戦争に関わっていると、いいところしか見ないし、悪いところは麻痺してしまう。いまの時代も、9条の話や徴兵制が復活するとか、昔は議論になったけれど、いまは議論にならない。仕事先でも聞かないし、選挙の話題もならない。この映画で戦争とはなにかが伝わってくる。それを教える努力をすべきで、選挙権がある人は選挙に行くべきだと思います」(女性E)
映画『アルマジロ』より
「今まで右も左も、連合赤軍、三島の恰幅とか、思想することで自分ができるんじゃないか、という高揚感があったと思う。いまインターネットで反対・賛成を語っている人も気持ちいいんじゃないか国軍にする、ということは、ぜったいできないと思う。交戦権を認める、ことは憲法を改正しなくてはいけない。いまの制度で憲法改正することは不可能になっている。実際は無理なことをいって、国民を高揚させ人気をとろうとしている。賛成することも反対することも、クスリ打たれてハイにさせる、陽動されているんじゃないかって思ってしまう。私は選挙に行かないです」(男性B)
「憲法を改正するには、衆議院と参議院の3/2以上の賛成で発議が出て、国民投票の投票した数の過半数の賛成で認められるので、そんなに難しいことじゃない。それをさらに憲法を改正して、過半数にハードルを下げようとしているので、そんなことをしていいのかと。実は今週の月曜日に自民党の憲法改正草案( http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf )を見たんです。第一条を見たら、『天皇は、日本国の元首であり』とあって、見間違えたんじゃないか、大日本帝国憲法と並べてあるんじゃないかとびっくりしたんです。平和活動が、現実的にはこういうことなのか、正義を道具にしていて、本当にアフガンの人たちのためにどういうことをしていくことが平和になるのか、ということを考えさせられました。安倍晋三さんが政見放送で『供たちに正しい行いとは何か、正義とは何かということを植え付けて行く、そういう真っ当な教育を取り戻していきたい』と言ったんです。この映画を観てそれを思い浮かべました。ここで描かれていることを正義として、憲法も基本的人権を軽くされていって、そうした状況に取り囲まれているんだということをつい最近分かって、自分はどうしたらいいのかということを考えています」(女性F)
『みんなにこの映画を観て考えよう』と簡単に言えない
「そもそも日本は第二次世界大戦で負けて、その後も歴史の検証をせず反省しないままで、憲法改正しようとか軍隊を作ろうとするのは順番が間違っている。東南アジア諸国にもひどいことをしました。EUがえらいのは、彼らなりにいろいろなことをやったにも関わらず、ちゃんと反省して敵国同士が仲直りして、EU連合を作る。そういうことをやってからなら、そういう話になってもいいと思います。この映画は、人の命について触れていない。戦争に行くという前提で作られていますけれど、そもそも人が人の命を奪うとはどういうことなのか考えなければいけない。いまの選挙のネタになっているだけ。それよりも先に考えることがあるのではないでしょうか」(女性G)
「私はほんとうに気分が悪くなってしまいました。ノンフィクションなんだけれど、フィクションとの境目がないようで、人には伝えたいけど、自分では観ることができない。皆さんの感想をうかがっても、観た後の膨らむ想像力のなかでも、呼吸が浅くなって苦しい。観ていて危惧したのは、人間がトランス状態になっていく過程がリアル描かれていて、よくカメラをそこに入れさせたなと思いました。顔つきも変わっていって、恐怖の裏返しでハイの状態に持っていく。人を殺すということに対し、任務を遂行しただけだから自分を責めない。それを母親に連絡をしたときに、母親が『どういうことなんだ』と訴えたことで、それについて軍法会議が待っているんだ、と話し合われたというところまで描いているところが、とても民主的だと思った。でも、カメラは反対側にしかないから、戦っているタリバンの側からは描けない。住民に語らせているが、私にしてみれば想定内のことだったんです。
想定外だったのは、経済的にも世の中の閉塞感が高まっているときに、保守的なところが強くなるのは世の常だけれど、トランス状態を見て興奮してしまうんじゃないか。私は、ゲームだけでも人を殺すようなものを作るのは嫌だけれど『自分もやってみたい、行ってみたい』と思う人がいるんじゃないかと恐ろしくて『みんなにこの映画を観て考えよう』と簡単に言えない、と思いました。中国や北朝鮮が同時並行的にいろんなことが起こっているので、強く言い切ってくれる人がいると、そこに流れていくことが多いとマスコミは言っています。ほんとうはフタを開けてみたら違う、と思いたいけれど、この国の人はなんでもすぐ忘れてしまう。
『まさかこんなことになるとは思わなかった』と思いつつ戦争に入っていき、それを反省したようなことを言いつつ、私は平和憲法を受けた世代ですが、その人たちではなく、新聞のアンケートを受ける人は年齢の高い人。大変だったということを忘れてしまったんじゃないか。だから改憲とか話し合うことはいいんですけれど、国民のなかでぜんぜん出ていないのに、突然花火打ち上げて、国防軍にOKしたひとはその人の子どもや孫に行ってもらわなくちゃと思うくらい、苦しくなります。改憲はほんとうにしようとしていると思います」(女性H)
映画『アルマジロ』より
「ニュースでやっている世論調査はまったくでたらめです。うちにも一回も電話かかってきたことないですし、そもそも、投票する支持政党がない人たち過半数なのに、なぜ自民党が圧勝というデータが出るのか、そこで矛盾が生じているんです。それに煽られてしまう。私はずっと支持政党がありまして、棄権したことは一回もないです。ただ今回だけは死に票になるので支持政党に期日前投票で入れませんでした。国防軍といった話を回避するために、対抗軸としてできる可能性のある党に入れました。私は唯一原子力爆弾で被曝している国がまた戦争をやろうというのは馬鹿げていると思います。自民党も維新も国防軍と言って戦争をやろうというのはとんでもない話。『なよなよしてるから戦争に行ってこい』なんてとんでもないと思いますし、ぜったい行きません。憲法9条の改悪にはぜったい反対です」(男性C)
「平和維持活動も侵略戦争も、最終的に目的が同じになる」
「戦争をしないために国防軍は必要だと思います。今回の選挙のためでなく、自民党がずっと前から言っていたことです。日本国憲法は戦争が負けて仮にもらったもので、独立したときに自前の憲法を持つのが普通なんです。他の国がそうしているので、日本もそうしましょう、と自民党は言ってきているんです。ただそれを9条の問題として、護憲という政党の意見にまどわされているんじゃないかと思うし、マスコミの情報は、マスゴミと言われるくらい信用ならないと言われていて、私も新聞も見ないですし、テレビのニュースでもネットや本や直接関わっている人から聞いたり、自分は直接仕入れたりしないと、マスコミが正しいわけがないというのがはっきりしている。マスコミの情報操作に載せられているのかなと思います。
自衛隊が他の国に行ったときに、明らかに違う対応をされている。日本の自衛隊だけ『帰らないでほしい』と泣きながら言われる。欧米の国は指図だけして自分は帰ってしまうけれど、自衛隊の人たちは一緒になって道路を直している。日本は、海外でもアメリカのいいなりにはなっていないんです。そこで国防軍として日本が独立国となったら、経済力や軍、人の知恵やいろんなパワーを持ってアメリカと台頭になったときに、アメリカのいいなりにならない。そのために、戦争をしないために、国防軍が必要です。中国に領国を侵犯されたり、竹島が不法占拠されたりしても、あと一歩のところで衝突にならないのは、第二次大戦の日本軍の戦いに欧米を含めた各国がすごく恐れを持っているからだと、引退された自衛隊の幹部の方がおっしゃっていました。日本と欧米では戦い方が明らかに違うんです。軍隊を持って独立国としてアメリカや他の国と台頭になって、世界でリーダーシップを発揮していくべきだと思います」(女性I)
「配給会社からのメッセージとして『これは、戦争だ』というコピーをつけています。この映画で描かれている、デンマーク軍が国際平和活動の名のもとにアフガンで行っていることは、戦争だと思われますか?」(浅井)
「それは私が判断するには高度すぎます。タリバンはイスラム教で、国連の人たちはほとんどキリスト教で、宗教的な価値観がぶつかり合っていると思うので、その話はすごく難しくて。一般的な日本人は宗教のことをあまり語らないですが、キリスト教的考え方もいろいろあるし、そうした価値観のぶつかりあいが戦争だと思いますし、消えないと思います」(女性I)
「『パラダイス・ナウ』を配給したときにいろいろな人から話を聞いて、エルサレムにはもともといろんな宗教の人がいたので、必ずしも宗教のぶつかり合いでない、土地や領土、自分の場所を侵犯されることに対して武力衝突が起こる、という意見が多かったですし、実感したことでした」(浅井)
「戦争の大義や目的を考えました。国連の平和維持活動と侵略戦争の違いは、目的で、平和維持活動は治安を守ること、侵略戦争は侵略していくこと、やっていることは銃を持って敵をやっつける、同じこと。映画に出てくるメスが戦地に行く時に家族会議で『仲間を作りたい、冒険をしたい』と言っていて、その時点で目的としては個人と活動の目的が違う。そして活動のなかで、仲間が攻撃され、自分も負傷して、敵をやっつけることに罪悪感を感じなくなったとキムが言っている。活動のなかで目的がどんどん変遷していくので、最初に平和維持活動という目的を持っていったとしても、戦地で変わっていって、最終的に人を殺すことに喜びを見出していく。これは、平和維持活動と戦争と何が違うのか、ということを考えた。ということは、目的すらも同じになっていく、戦争とはそういうものなのだと思いました」(男性D)
「私が思う戦争は、どちらの利益を取るか、ということを大義名分によって 美化しているだけだと思うんです。学校で戦争マニアの人がいて、卒業制作で戦争のドキュメンタリーを作ったりする、戦争が大好きな人で、卒業後自衛隊の陸軍に入ったんです。その人を見るとすごく怖いと思う。戦争において日本軍だけは違う、という意見がありましたが、ある軍隊だけ違う、ということはあり得るのか。私は軍隊は全部なくすべきだと思います」(女性E)
(取材:駒井憲嗣)
▼【togetter】選挙直前!映画『アルマジロ』先行上映会感想まとめ
映画『アルマジロ』
2013年1月19日(土)より渋谷アップリンク、新宿K's cinema、銀座シネパトス
ほか全国順次公開
監督・脚本:ヤヌス・メッツ
撮影:ラース・スクリー
編集:ペア・キルケゴール
プロデューサー:ロニー・フリチョフ、サラ・ストックマン
製作:フリチョフ・フィルム
デンマーク/2010年/デンマーク語、英語/カラー/35mm/105分
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