2008-09-03

ケン・ローチの『この自由な世界で』を観る このエントリーを含むはてなブックマーク 

イギリスの人材派遣の話。テンプスタッフやリクルートと違うのは、移民相手というところ。

主人公の母親が友人といっしょに人材派遣の会社を興すベンチャー企業物語ともいえる映画でした。

EUに加盟したポーランドの人たちは、就労ビザ無しでイギリス人と同じように仕事に就く権利があるけど、イラン人はEU加盟国でないので合法では働けないというバックグラウンドがあって描かれる映画です。

人材派遣会社を興した主人公は労働者にきちんとお金を払えず、それに怒った移民の労働者は彼女を脅したりします。
個人でやっている人材派遣会社ですが、多分基本の考え方、ようするにピンハネをする仕組みは日本の会社と変わらないはずです。

劇場の壁に貼ってある各新聞を読みましたけどどのレビューも日本の人材派遣会社との対比は書かれていませんでした。
日本の労働者は飼いならされておとなしいので、この映画のような行動は起こさないのでしょうが、今後日本も外国人労働者、ようするに働く移民が増えてくるとイギリス化するのではと考えさせられました。

そういう意味で、これは日本の未来を描いた映画といえるでしょう。

日本は、政府と企業がつるんで派遣社員のシステムを作りました。
そして、派遣会社の社長がえらそうにメディアに登場し日本社会のことを偉そうに語るのをいつも違和感を覚え見てきました。
しかも労働者のピンハネで稼いだ金で作ったオフィスのなんと立派な事か。

最後にこの映画の主人公も会社を大きくするためには良心、モラルを捨てて「この自由な世界」のシステムを利用し生きて行く決心をします。

東証一部に上場し売上高2367億円というテンプスタッフ社長の篠原欣子さんにこの映画の感想をぜひ聞いてみたいものです。

ということで、もちろん、タイトルは皮肉たっぷりな

"it's a free world...."

「....」がこの映画で描いているテーマです。

邦題はこの「....」のニュアンスを「で」に込めていて『この自由な世界で』と
なっています。

さらに『この自由な世界で...』とすれば、ローチ監督がタイトルに込めた思いが
日本人にもより伝わったのではないでしょうか。

日本の未来を見てみたい方は、この映画で見る事ができます。

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渋谷シネアミューズにてロードショー中

キーワード:

ケン・ローチ / 映画 / イギリス


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浅井 隆

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浅井 隆


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