2008-08-05

「世界は日の出を待っている」 このエントリーを含むはてなブックマーク 

 
Les Paul & Mary Fordの名曲「The World Is Waiting For The Sunrise」の邦題。ひねりもないそのままの直訳で、これほど説得力を持っていた時代というのが当時あったわけなんだよなぁ、としみじみ。40年代後期〜50年代初期のポップミュージックが、いかに光り輝いていたかを象徴するようなタイトルですね。

ここWeb DICEではTopで特集にもなっていた映画、【レス・ポールの伝説】の試写会を観に行ってきました。いやー、感動しました。なんというか、観ていてほんとワクワクするような瞬間がいっぱいあった。

僕、というか僕の家族は大のレス・ポールファン。特にウチの父は、自身の仕事道具であるメインギターが[Gibson Les Paul Custum 64' Gold Top]、ライヴで演奏する曲の一曲目はどんなときでも「It's Been a Long, Long Time」(Bing Crosby with Les Paul Trioが1945年に出したヒット曲)という熱の入れようなので、自然と僕も呑み込まれていったという感じだろう。スゴいのは、僕以外の家族はみんなニューヨークで本物のレスのライヴを観ているっていう事実(!!最近妹から聞いて判明)。御歳91歳のレス、演奏を拝めるチャンスもそろそろ少なくなりそうなので、早く観に行かないと、と思っているのですが。。。

さて、映画はレスの生い立ちを丁寧に映し出してゆくドキュメンタリー。けっこう皆さん知らなかったりするのですが、レスはあの『Les Paulというギターの製作者』という肩書き以上にいろんな偉業を成し遂げているんです。『人類初の多重録音(今現在のマルチレコーディング)の発明家』であり、『世界で初めて8chのミキサー卓を設計した人』でもあり、『テープの回転速度を変えてレコーディングする方法を編み出したエンジニア』でもあり、40年代後半に世界的に活躍した『超絶テクギタリスト』でもあり、グラミー賞を5回も取ったことのある『超大御所』と、、、、まーとにかく当時お茶の間でLes Paul & Mary Fordのテレビ番組まであったくらい『究極の有名人』だったワケですね。そのレスが活躍していた頃の映像や音楽が、これでもかってくらいスクリーンに映し出されてゆくのには圧巻。そしてその合間を挟んで、当時彼を観て感動していた有名人たちの映像とコメントが流れるんですが、またその人たちもB B KingやJeff Beck、Paul McCartney、Richard CarpenterやBonnie Raittなど錚々たるメンツが一様にエキサイトしながらレスについて語っている。そう、とにかくみんながレスを『偉大な親父』を想うような顔で語るのが、観ていて清々する。そしてその偉大さをひけらかさず、でもきちんとその実績を理解し冷静に語るレスがまたスゴい。凄すぎて現実味が無いくらいのシーンが目白押しだったなか、特にマイルス・デイヴィスとの会話を語るレスのシーンはもう絶句。自身の中で一生ループしていくような、「ポップ・ミュージックの基礎ってのはこれかもなぁ」みたいなコメントがあった。

そして一番感動するのが、合間合間に入って来る「今のレス・ポールのLive」だ。

今でも週に一回、ニューヨークのライヴハウス[iridium]で彼は演奏をしているのですが、その彼の嬉々とした演奏、そしてそのエネルギー!!会場も笑顔に溢れ、レスの茶目っ気たっぷりなMCもまた最高。なぜだかそのシーンになる度に震えが止まらなくなり、ちょっと涙しそうになった。またそれとは全然別で、レスが持っていたギター[Les Paul Recording]が異常に欲しくなってしまうオレ。「確かアレそんなに高くないよな...」なんて物欲までアタマをもたげてしまったシーンでしたが、とにかく良かったっす。

個人的にこの手の音楽家ドキュメンタリーのなかでは、一昨年くらいに出た『トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男』(あれ?これもUPLINKじゃなかったっけ!?)と同じ、もしくはそれを超えるような素晴らしいドキュメンタリー映画だった。正直僕個人、彼に対しての愛情の偏りがあるのは否めないのだが、それを差し置いても「音楽がスキなひと」、「音楽をやっているひと」、もちろんそうでないひとにも是非足を運んで観てほしい映画。これは改めて、僕も劇場で観に行きますっ、絶対。

ちなみにそのあと親父の店に寄り、親父に「今度こんな映画あるんだけど知ってる?」ってチラシ持って言ったら、「オマエに言われなくっても知っとるわ、ボケぇ」...というくらいの眼力で「ああ、知ってる。観ようと思ってた。」とさりげなく言われた。。。そうですよねー、ははは。さっとチラシ置いてそそくさと帰りましたとさ(笑。

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mito (clammbon)

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