いま「君の名は。」より話題の邦画アニメ「この世界の片隅に」をご存じだろうか。
http://konosekai.jp
広島県呉市生まれで、呉市育ちのワタクシとして、この映画「この世界の片隅に」はトンデモない映画だったけど……。
先月「この世界の片隅に」見終わって“ぽか〜ん”とした感触を、新神戸オリエンタル劇場ではじまった、演劇集団キャラメルボックスの完全新作「ゴールデンスランバー(伊坂幸太郎原作・世界初舞台化)」でイキナリ味わってしまった。
ホント、この2時間は「この世界の片隅に」終了後と同じように“スゴイもの”を見せられているような気になった。
ゆえに昔、キャラメルを見ていた人にこそ見て欲しい。
伊坂幸太郎原作ファンの期待も裏切らないと思う。
■東京公演は、サンシャイン劇場(2016年12月10日〜25日)
http://www.caramelbox.com/stage/goldenslumber2016/
■【キャラメルボックスが世界初舞台化、伊坂幸太郎原作『ゴールデンスランバー』の神戸初日と二日目の感想まとめ!!】 - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/1055023
■キャラメルボックス『ゴールデンスランバー』ダイジェストPV
https://youtu.be/bz990NMdavk
【まえふり】
演劇集団キャラメルボックスというと、
特にアングラ演劇よりよりのよりの演劇ファンだと眼中にないおちゃらけ劇団そうだ。古参の演劇評論家が1990年代は小バカにしていた記憶もある。
演劇は哲学的であるべきと語る平気で評論家もいたし。
そのなか、エンターテインメントに徹して“劇団活動”を続けたのがキャラメルだ。
常に観客目線で、早期に借金作って独自のチケットシステム作ったり、託児サービスやったり、高校生向けの安価チケットを出したり、まぁ、様々なことを取り組みを取り入れてきた。
まぁ、エンターテインメント劇団と呼んでしまうと“演劇的”にますます軽く見えてしまうんだけど、それ以外に語る“言葉”がなかった背景(演劇的ゼロ年代)もあるとして。
実際、ゼロ年代を語るほど詳しくないんだけどね。
そのなか、先日新神戸オリエンタル劇場ではじまった、完全新作「ゴールデンスランバー」は、キャラメルが培ってきた“演劇的チカラ”が一気に解放されたというか、本領発揮というか、スーパーサイヤ人というか、エヴァというか。
気づいてはいたけど“演劇的魅力満載”なのである。
ちなみに、このレビューの原点として、ワタクシの演劇感を書いておくと。
演劇は常に「役者と観客の間で起こるもの」であり、常に実験的でなくてはならないと思っている。それが映画と違って“その瞬間だけ”を問われる演劇の宿命(鴻上尚史氏が演劇をやる理由)。
ゆえに初日と千秋楽でまったく違うイメージの芝居にもなるし、変わっていくのが演劇というものだと思う。
毎回変わるのが、演劇というヤツだ。
【原作モノに強いことを意外と再認識】
キャラメルは意外と原作ものを手がけている。
例えば、2017年一発目は、内田けんじ「鍵泥棒のメソッド」。個人的には映画を意識しすぎて、2014年版はイマイチだったが。次回はさらなる実験をするに違いない。
http://www.caramelbox.com/stage/kagidorobou-method-2017/
また、以下も知らない映画ファンには知って欲しい。
東野圭吾原作・福山雅治主演だった「容疑者Xの献身」を、2009年に舞台化。その後、韓国で映画化されて、原作者から圧倒的評価を受けているけど、舞台版をDVDで見ても、福山雅治主演版より圧倒的に緊迫感があり、映画版よりインパンクト大。
そのうえで、今回初の「ゴールデンスランバー」の舞台化。
再度映画を見てみようと思うけど、「容疑者Xの献身」と同様に映画を越えているのではないか。
メディア特性的に“演劇”が越えて当たり前なのなんだけどね。
なんにしても原作モノにやっぱり強かったと再認識。
演劇界における「野木亜紀子(脚本家)」なのだ。
【キャラメル演出の到達点】
なんでも“原点”に戻ったという今回の演出。
シーン(場)については、劇団最高数だという。
そのぶん役者の使い方もトンデモなく大変になる。
これが実感として分かるのは、やはり同業者だけなのかもしんない。
>若い男性から「僕たちが小劇場でやっているタイプの芝居を、何倍もの大きさ広さのこの劇場で僕たちより遥かにハイテンポ・ハイスピードでやっていらっしゃるのを見て、そのための役者さんたちの訓練とかこれまでの稽古のことを思うと気が遠くなりました」と。演る側同士の褒め言葉。
https://twitter.com/KatohMasafumi/status/804613059511603200
キャラメルがさまざまな観客サービス導入していることは書いたが、実は“演出”も毎回挑戦しているのである。
それが今回は、大爆発。
映画版より面白いと評価された「容疑者Xの献身」の演劇アプローチをさらに越えているのではないか。
例えば、今回は「劇団初の公演中・撮影タイム」があったのだけど……。
観劇前はホント“いつでも撮影OK”なんて大丈夫なのかなと心配したけど。
実は撮影タイムは“演出”のひとつだったというオチ……でビックリ。
ネタバレなのであれだけど、うまい。
ホントにうまい。
個人的にはもっと自由に使える画像配布(ダウンロード)も欲しいところだけど。
今回「劇団初の公演中・撮影タイム」さえ、演出のひとつに巻き込んだ展開は今後、さまざまな演劇・劇団にまたしても影響を与えそう。
【まとめ】
ホント、すごい瞬間に立ち会ったという感じだった。
舞台そのものの展開と演出が挑戦的だったし、キャスティングも含めてハマっていた。
必見のステージだ。