2013-10-07

『潔子爛漫』を見てる・3―萌えどころ編・蒼太より弥彦― このエントリーを含むはてなブックマーク 

今さらですが、ここに書いていることはすべて「ネタバレ」というものです。
すでに放映された部分だから断らなくてもいいかと思っていたのだけれど、
後追いで見る人々のためには、念のために断っておいたほうがいいかと思って。

で、その潔子を救えるだけの「お金」を出したのは、
彼女を取り巻く男たちの一人、渋澤弥彦という豪商だった。

口では助け舟を出すのを拒みながらも、裏で潔子の父親の釈放のためにお金を積んだのも彼だったし、
潔子が妾にされそうになった時に、大金を積んで自分のほうに引き寄せたのも彼だった。
結局、潔子は最初っから、この男に守られていたようなものだったのだ。

しかし、この物語の本筋は、幼なじみの蒼太と潔子の恋のゆくえのはず。
途中からこのドラマを見始めた私は、
豪商の立ち位置はどうなるのかと思って見ていたが、
まんまと潔子を後妻にしたうえに、子供まで身ごもらせてしまった。
表向きと違って人のいいところのある男だから、
どうせ妻にしたところで、なんのかんのと理由をつけて蒼太と結ばれるまで手は出さないんじゃないか、と踏んでいた私の予想は、ここでもろくもくずれた。
だがその頃には私も心の底で、もういっそ潔子は弥彦といっしょになってくれたほうがよっぽどいい、と思っていたし、
おなかに子供ができたらできたで、間違っても流産するような展開にはしないでほしい、などと願うようになっていたのであった。

というのも、この脚本は、初めから合田雅吏演じるその弥彦にスポットが当たるようになっていて、
本来なら王子様役であるはずの石垣佑磨演じる蒼太は、どうしたって見劣りがしてしまうようにできているからだ。

蒼太はいつも威勢よく登場しては、なんだかんだと大見得を切るが、
結局は力不足で敗退するし、
二言目には「きぃちゃんは僕が守る」と言うものの、その約束が守られたためしは今のところ一度もない。
こんな口先ばかりの男より、
涼しい顔して札ビラを切って、窮地に陥ったヒロインをいつも救ってくれる男のほうがカッコイイに決まっている。
しかも、四十代とはいえ、なかなかのイケメン。
私なんかは実際は、こういう役どころの男は、もう少し不細工な人にやってもらって、重厚感を出してもらったほうがいいんだが……。

というわけで、元々の合田雅吏ファンのみならず、
視聴者の書き込みには弥彦に「ときめいてたまらない」だの、「胸がキュンとする」だの、「ステキ」だのという言葉があふれていて、
たいていの女性視聴者は、本来のヒーローよりも第二のヒーローのほうに萌えまくっているのだった。

しかし!
萌える要素となっているこの男の「不器用さ」は、ほんとに萌えどころだろうか。
潔子への思いを素直に表せずに、憎まれ口ばかりたたいているが、
「おまえはお飾りの妻だ」だの、「金で買っただけだ」だの言われて、うれしい女がどこにいるだろうか。
しかも、夫が寝るのを寝床を敷いて待っていた妻が、「お休みなさいませ」と三つ指突いて挨拶しても、返事もしない。
ふてくされたように背を向けて、一人で寝入ってしまう。
こういうのは愛情を表せないというのではなくて、積極的に人を傷つけている、と言うのです。
潔子の嫌う、「誰かを傷つけるようなことは私は許せません」の行為に該当するもの。
男女の仲だから、ということで許されることではないのですよ、ほんとうは。

さらには、自分が一方的に思いを遂げておきながら、おなかの子の父親が別の男ではないかと疑うとはあさまし過ぎる。
そんな、無理やりやられて、裂傷(生々しいかな)のできている体で、その晩、また別の男とすぐできるわけないでしょー?!
この点では、弥彦に説いてかかった若輩者の蒼太のほうにめずらしく軍配が上がりましたね。
自分のしたことが相手をどれほど傷つけているかにも思い至らず、嫉妬に狂うなんて、ひとりよがりもはなはだしい。
だいいち、男の嫉妬はほとんどの場合所有欲か支配欲の現われなわけで、温かい愛情でなんてあるはずがないんだし。
この姿が、もし胸キュン用として用意されたのであったなら、
そういう無批判的なファンタジーの再生産でいいのかな、とも思うのだけれど、
お昼のドラマの楽しみはやっぱりそういったファンタジーを堪能するところにあるのかも知れない。
それに、その状況で身ごもるということ自体、使い古されたリアリティーのない筋立てでしかないと言えばそのとおりだし。

だけど、女は傷ついている男と、自分を助けてくれた男には、
リアルだろうとフィクションだろうとほだされやすいものなのでね。

物語は、ふだんはひどいことばかり言っている弥彦が身を挺して自分を守ってくれたことによって、
彼の胸に秘めた思いを潔子が知る、という展開になるのであった。

そうは言ってもわかりやす過ぎる伏線によって、
どのみちこの後、弥彦が先立つことは間違いなく、
話の筋から言っても、最後には潔子と蒼太が散々な寄り道の末にいっしょになるのだろうけれど、
その弥彦が亡くなる回で、また多くの弥彦ファンが胸をかきむしられるような思いをすることは想像に難くない。

いいけど……なんだか、蒼太を演じている役者さんは損な役回りだね。

写真は本日放映の第26話から。
自分をかばった代わりに大けがをした弥彦に、潔子がかいがいしくお粥を食べさせるシーン。

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10月8日の付記。

なんだ、結局流産してしまうのね。
それもよくある展開だけど、そんなにほかの男との子供が純愛の障害だろうか。
それは、女の夢にとって? それとも、男のほうにとって?

どうせ、最後は蒼太といっしょになるのなら、もはや子供抱えていっしょになってほしかった
(いや、ほしい? まだ、いっしょになってないし)。

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Reiko.A/東 玲子

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