もしかしてこれで終わり?
ってのは、もう『モースト・ビューティフル・アイランド』で免疫ができていたから大して驚きはしなかったけれど、
ほんとに、こんなのでいいんですか?
これじゃ、なんのひねりも奥行きもないじゃないですか?
ただ、暴力夫はコワイねってだけで、その暴力夫のキャラの掘り下げも、夫婦関係がいかに悲惨なものだったかっていう下敷きも、今後ジュリアンに残るだろう精神的外傷の深刻さも、なんにも描いていない。
もう、「壊れた人」は「壊れた人」って片づけるだけで、いい世の中になっちゃってるのかな。
役者はみんな頑張っていたとは思うけど、これだとジュリアンもほんとにただのすぐれた「子役」にしかならないし。
これだったら、個人的にはまだ『モースト・ビューティフル・アイランド』のほうがましだったと思うが、
一つだけ引っかかったのは、
「あなたは病気よ」
「病気はおまえだ」
という夫婦の言葉の応酬。
こっちをテーマにして、どんどんトラップにはまっていく夫婦の心理を描いてもらったほうがまだ物語としてはおもしろくなったんじゃないかと思うけど、
あくまで暴力夫は暴力夫で、危険きわまりない存在、というベタな内容のままで終わったのだった。
ただ、制作の動機には、フランスではDVで亡くなる女性が多いという現実があるらしく、
これはまだその現実を突きつける段階に留まっている作品なのかもしれないが。
ただ今、UPLINK吉祥寺でも上映してますね。