発生後1年以上が経ち、福島原発事故は第2ステージに突入したと言える。収束しない炉心溶融はむろん最大の問題だが、静かに蝕みつつある「内部被ばく」の問題とも向き合わざるをえない。
『内部被ばくを生き抜く』は、イラク戦争以来、国内外の内部被ばく問題を追い続けてきた「被曝映像作家」鎌仲ひとみ監督が、3.11後の専門医たちの証言をつなぎ合わせた、「福島原発事故による内部被ばく状況の検証映画」だ。
監督自身が明確な脱原発論者なため、その前提に沿った映像が続くのは、まあ当然だろう。それにしても、学者でもジャーナリストでもなく、内部被ばく問題の現場の最前線で奮闘してきた医師たちの言葉だけに、説得力が政治家などの比ではない。
被災者、いや国民の多くにとって、初めてとなる恐怖体験。どれだけ心配すればいいのか、どれほど安心していいものか、もちろん正解などない。
ただ「とことん正しく恐れたうえで、『でも大丈夫』と心から信じる」という相反する姿勢こそ、健全な態度のような気がしてならない。
そしてこれは、国民一人一人のレベルのみならず、それを束ねる国家にも必要な態度だろう。素早く的確な情報を調べ上げ、国民に過不足なく提供し、「最悪の事態」も想定してアナウンスする。その上で「この点はこうすれば大丈夫」という対策を練り、国民にていねいに説明する。
きちんと筋を通して説明すれば、心ある国民はパニックなど起こさないはず。国家は国民を必要以上に軽んじも恐れもせず、理性を持った大人として扱うべきだろう。
公開初日の劇場には、本作の制作会社「グループ現代」より、小泉修吉プロデューサーが登壇しあいさつした。
鎌仲監督作品をはじめ、地味ながら良質なドキュメンタリーを輩出してきたグループ現代。この先、その役割は増していくに違いない。