2011-02-04

鎌仲ひとみ監督に聞く【3】「自立することで、エネルギーの安全保障がうまれる」 このエントリーを含むはてなブックマーク 

スウェーデンで撮影中の鎌仲監督(写真提供:鎌仲ひとみ監督)
取材を受けているパー・レッヴィンさんの自宅の電気は風力発電だけで賄う選択をしている。自家用電気自動車も風力だけで充電しているそうだ。

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「ミツバチの羽音と地球の回転」http://888earth.net/
2011年2月より 渋谷・ユーロスペースにて、未来を作るロードショー!
http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=309

【速報!!】渋谷UPLINKにて『ヒバクシャ』『六ヶ所村ラプソディー』が上映決定!
http://888earth.net/staffblog/2011/01/uplink.html
『ヒバクシャ』http://www.uplink.co.jp/factory/log/003859.php
『六ヶ所村ラプソディー』http://www.uplink.co.jp/factory/log/003858.php

<ストーリー>
瀬戸内海に浮かぶ祝島の真正面に、原発建設計画が持ち上がって28年。島民は一貫して建設に反対してきた。島では海藻や鯛をとり、無農薬のびわを栽培して千年も前から生活が続けられている。最も若い働き手、孝くんは妻子を抱えて自立を模索している。その行方を阻むように着々と進められる原発計画。島民は一体となって阻止行動に出る。
孝くんの眼差しの先にはスウェーデンの取り組みがある。足元にある資源で地域自立型のエネルギーを作り出すスウェーデンの人々が目指すのは持続可能な社会。それを支えるのは電力の自由市場。原発重視かつ電力独占体制の日本のエネルギー政策を変えるためにはどうしたらいいのか?
そして、祝島の未来はどうなるのか?

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★鎌仲ひとみ監督にインタビュー【3】(2010年12月16日)(聞き手:奥田みのり)
インタビュー【1】http://www.webdice.jp/diary/detail/5236/
インタビュー【2】http://www.webdice.jp/diary/detail/5241/

奥田)映画にでてきたスウェーデンの男性が、電力自由化の話で、日本では消費者が自分が使いたい電力を選べないと聞いて、驚いてる表情が印象的でした。私自身は、電力の自由化は疑問に思っていたんですね。生命の維持に必要なインフラ的なものを自由化してしまうことに不安があったんです。ただ、よく考えると、電力を管理しているのは公共機関ではなく、営利企業なわけで、そうした企業が電力を管理しているのは、水道局が水道を管理しているのとは同じではありません。この映画と出会って、電力を選択できないことに、生命の危機を感じました。

鎌仲)電力の選択肢に、消費者の力が示せないわけです。原発がいやだと思っても、原発の電気を買い続けなければいけないというジレンマに陥ってしまうのです。日本では10年前、自由化の話があったのに、なし崩しにさせられてしまって。海外からは、「ガラパゴス」だとも言われています。エネルギーの構造改革ができないと評価が下がっています。

奥田)情報の面において日本は、英語の情報が入ってこないこともあって、「ガラパゴス化」といわれていますね。

鎌仲)地球全体、世界全体を見ないといけないと思います。と同時に、一人一人が、ミツバチのような存在でもあるんですけど(※1)。スウェーデンは、地域主導というか、国よりも県、県より市、市より町、町より村、当事者が決定権を持つというようになっているんです。だから、本来は、祝島の人たちの当事者としての意思が尊重されるべきなのに、それが、踏みにじられているのは、おかしいんです。

奥田)祝島がもし自立できたとしても、結局、海が続いているわけで、やはり、近くのコミュニティがどう考えているのか、常に近隣のコミュニティの影響を受けてしまうのではないでしょうか。となると、簡単に祝島だけが独立し、自治権をもつことが解決にはならないとも思うのですが。

鎌仲)それはそうなんですが、自分たちの意思が尊重されるべきですよね。あと、自立することによって、エネルギーの安全保障がうまれてくると思うのです。現在地域が直面している問題、たとえ原発の問題がなくても、祝島が直面している過疎の問題、高齢化の問題、地域経済が破綻するとかいう不安、そういうことがあって、上関町は原発をひっぱりこんだのですが、もし自分たちで発電できたら、電気代は払わなくてもいいし、その電気代の収入を地域おこしの参入にあてることもできます。今、日本のいくつかの地域は、このことに気がつきはじめているのです。それを阻んでいるのが、エネルギーの独占なんです。

奥田)10年前に消えてしまった自由化。これも、忘れずに、やっていかなければ。

鎌仲)いま、固定価格買い取り制度(※2)が審議されているんですが、先行きは、非常に不透明です。実際、骨抜きにするような案をだしてきているので、また、この先10年を失ってしまうのかという不安があります。

(インタビュー終わり)

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【補足】
※1「ミツバチの羽音はどんなに小さくても、地球の回転にすら影響を与えているかもしれない」(パンフより)
地域で始まった小さな取組みさえもが、世界に波及するような可能性を秘めているということだと私は考える。

ミツバチの羽音の「BunBun」は英語だと「buzz」。「buzz communication」には「口コミ」という意味がある。一匹一匹の働きは小さくても、その働きが集まると「ブーン」という大きな共鳴を生み出していく。(パンフより)

※2 固定価格買い取り制度
国や自治体などが導入する、再生可能エネルギーの促進政策のひとつ。電力会社に対して、再生可能エネルギーによる電力の全量を、一定期間だけ固定価格で買い取るよう義務づける。別名でFIT(feed-in tariff)制度とも。ドイツやスペインなどの導入国では再生可能エネルギーの供給量が急増。実績が評価されるようになった。
引用元:http://kankyomedia.jp/keyword/%8C%C5%92%E8%89%BF%8Ai%94%83%82%A2%8E%E6%82%E8%90%A7%93x

※3 参考記事:電力自由化から早15年電気事業の“今”を読み解く
http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/rxr_detail/?id=20090618-90007252-r25

この記事によると、「2000年には、小売の自由化制度が導入され、大規模工場など一部の大口ユーザーは、既存の電力会社以外の、どの電力会社からでも自由に電力を購入できるようになった」とあります。家庭レベルでは、電力会社はまだ選べないようです。

※4 坂本龍一さんの映画に対するコメント
「生存権の一つとして、何によって作られた電気を使うか、核なのか、風なのか、太陽の光なのか、選ぶ権利があるはず。」

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2011年1月、祝島で、エネルギー自給率100%をめざす「祝島自然エネルギー100%プロジェクト」が始まりました。→ http://www.iwai100.jp/

朝日コムの記事によると、「試算では、島で必要な電力は約1千キロワット。1台3~4キロワットの太陽電池を100基設置するのを当面の目標に、し尿を生かすバイオマス発電や小型の風力発電、太陽熱温水器も順次導入。送電線も強化し、10年ほどで島内のエネルギー生産が使用を上回る「自給率100%状態」をめざす」とあります。

映画に登場した山戸孝さんのお宅の屋根には、太陽光発電のパネルが設置されています。朝日コムのサイトに写真あり!

「反原発」の島、エネルギー自給率100%構想 山口
http://www.asahi.com/national/update/0119/SEB201101190009.html



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奥田みのり

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“フリーランスのライター Twitter→ https://twitter.com/minori_okd ”


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