松本章さんの『映画の愛に☆直感』に刺激されて。
これはまたストレートな映画ですねえ。
主人公が生きたい! 死にたくない! って言っているけれど、
そっちの思いじゃなくて、映画業界への不満が。
そして、映画制作への熱意ってものが。
「もうたくさんだ! 映画は売春じゃない! 映画は芸術だ!」
って、ふだん私たちミュージシャン系が、
「なんでこんな曲が売れるわけ…?」
とか言ってるようなのの
(でも、今さらそんなこともう言わないけど)映画人ヴァージョンなわけで、
それがそのせりふのまんま、主人公の売れない映画監督の口からほとばしり出る、何度も、何度も。
とはいえ、そういった文句だけじゃなくて、
この映画を見た人が、
その芸術と言えるほどの往年の名作に興味を持てるよう、
それら名作のカットをスクリーンに巧みに盛り込んで作られている。
借金返済(これがはんぱな額じゃない)のための、
文字どおり命かけての「なぐられ業」は、
ある意味話がうまいって言えばうまいけど
(たとえ命がかかっていても、それでそんなに稼げるのならば)、
男の人は痛覚に敏感だって言うし、
格闘技にはやたらはまりやすいから、
この血まみれになってのなぐられシーンが、
それこそ、主人公の魂の叫び、根性の見せどころに見えるんだろうなあ。
なぐられるたびに、彼の頭の中には敬愛する作家たちの映画タイトルがひとつひとつ浮かぶ。
きっとそうやって歯を食いしばって痛みに耐えるんだろう。
私も収まらない痛みに襲われた時には、
そうやって呪文のようにひとつの言葉を唱えたりするもん。
私は映画人ではないから、
さすがに黒澤のお墓や溝口のお墓に手を合わせてお参りする気持ちには共感できなかったけれど、
自分もいい映画が撮りたい、映画をやりたいって気持ちはよくわかった。
こんな気持ちで映画を作ろうとしている人もいるんだってこともわかった。
まじめと言われる私が見ても実直過ぎるメッセージを、
それこそ体を張っての演技でこの映画は伝えてきてくれた。
『CUT』監督:アミール・ナデリ
http://www.bitters.co.jp/cut/
松本章さんの『映画の愛に☆直感』(第13回)
http://www.webdice.jp/dice/detail/3374/
---------------------------------------------------------
今月のReiko.AのTabelaでのタロットスケジュールはこちら。
↓
http://www.webdice.jp/diary/detail/6831/