前回の日記、<「チェルノブイリ・ベイビー」から「福島の子どもたち」へ>に前書きをつけ、本文のあちこちに手を加えてTUP速報でエッセイとして本日配信した。本文については前回の日記と重複する部分が多いので再度貼り付けることはやめておきますが、前回の日記をまだ読んでいない方は、新しく配信されたほうを読んでください。(アドレスは下にあります)
すでに前回の日記を読んでくださったかたのために、前書き「見えない恐怖を可視化する」のみを貼付けます。
TUP速報906号
チェルノブイリ・ベイビーから「福島の子どもたち」へ
2011-4-25 17:27:35
見えない恐怖を可視化する
英国時間の2011年3月11日朝、日本の東北太平洋岸を襲った大地震の第一報をBBCのモーニングショーで知った。学校に出かける息子に「今日は携帯電話をオンにしておきなさい」と言いつける一方で、東京の家族に電話をかけ続けたがいっこうにつながらず、すっかり地震のニュースだけになったテレビ画面では津波が村や町を飲み込んでいく様がNHK経由で実況されていた。
福島第一原発が津波にやられて炉心冷却装置が働いていないらしいとのメールを受け取ったのは、地震発生後3時間ほどしたころだ。電話がつながらないので家族にメールを書き始めていたが、その情報を得て以降、文面は単に安否を気遣うものから、可能なら西へ逃げてというものに変わった。電話が通じるようになってからは呼びかけの範囲を友人にも広げ、根拠もなく煽るなと時々叱られたりもしたが、なんでもなければ笑い話になるから、できるなら逃げてと答えた。
チェルノブイリ並みの大爆発を危惧してのことだったが、幸いなことにそこまで大きな爆発はなかった。しかし、ふたつの水素爆発から6週間が過ぎたいま、環境に放出された放射能の量で言えば、事態は確実にチェルノブイリの方向に近づいている。にもかかわらず、その危機感が日本の多くの人に共有されていないのはなぜだろう。わけても政府の中枢に。
放射能は目に見えないから危険さの実感には想像力が必要だ。一般的に「おんな子ども」は恐がりなので、見えないものの恐怖については「おとこ」より敏感なんじゃないかと思う。そして、おそらく放射能は、そのような態度で怖がるべき対象だ。なぜなら、その恐怖が見えるものになったときでは何をするにも遅過ぎるし、その見えない放射能によって数年後につけを払わされるのは、しばしば「おんな」と「子ども」だからだ。
しかし、困ったことに世の中を動かしているのは、多くの場合、その鈍感な「おとこ」たちなので、見えない恐怖に説得されない「おとこ」のために、チェルノブイリから飛びだした放射能に支払いを要求された「おんな」と「子ども」を可視化してみようと思う。登場するのはふたりの若い男女とその親だ。かれらはチェルノブイリの公式の被害者には記録されていない。
前書き・本文:藤澤みどり (TUP)
本文は http://newsfromsw19.seesaa.net/article/197710036.html
または http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=938
にあります。