2012-04-10

メール紙の「震災直後と11ヵ月後の写真」から見えるもの このエントリーを含むはてなブックマーク 

さてまだ忙しい。そのうえ、忙しい原因をまたひとつ増やしてしまった。

3月31日から生後7週間(推定)の子ネコが我が家の一員になったのであります。息子のフランス語のチューターの家の前庭に(正確には工事中で窓を外してあったフロントルームの床に)、バスケットに入れて置き去りにされていた母ネコと2匹の子ネコのうち1匹を引き取ったもの。ほんとは子ネコは2匹とも引き取るはずだったんですが、取りに行く前に1匹は脱走した。

昨今の経済状況悪化に伴い、(失業などの理由で)家をダウンサイジングする人が増えていて、引っ越し先では飼えないペットの置き去りが頻発しているので、たぶんその一つだろうと想像する。日本から連れてきた黒ネコが8年前に20歳で死に(ペットロスに陥った)、以来ネコなしの生活だったけど、最高瞬間飼育数が9匹(親1匹、子2匹、その子6匹)だったこともあり、ネコのいる生活には免疫がある。とはいえ、子ネコを単独で飼うのはかれこれ28年ぶりで、こんなに元気なものだったかとその尽きないエネルギーにたまげている。

全身のほとんどが黒で、胸からおなかにかけてと4本の足の先が白い。白手袋に白ソックスで踊る『バッド』のころのマイケル・ジャクソンを思い浮かべていただくといいかも。しかし、このたとえはポリティカリーにはインコレクトかもしれない。でも日本語だからいいや。

* * *

いくらイースターマンデイの休日の夜だからと言っても(息子のイースターホリデイがあと1週間あるからと言っても)、もう明け方の5時過ぎなので寝ないといけない(これから!)。用事がたまっているので明日(もう今日だ)は外出しないとだし。

* * *

web DiceのTOPICS欄に「震災直後と11ヵ月後の写真を比較掲載」のタイトルで紹介されているデイリーメール紙のウェブページを見たので、ちょっとだけメモ。

TOPICSの当該記事
http://www.webdice.jp/topics/detail/3474/
メールの当該記事
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2099811/Eleven-months-tsunami-earthquake-ravaged-Japan-new-pictures-incredible-progress-multi-billion-pound-clear-up.html

2月13日付けの写真特集で、災害のあとによくあるbefore-afterもの(たいがいは災害の前と後だけど)。いったいどういう意図で掲載しているのかいろいろ考えてしまうが(なにしろメールだし)、ともかく「日本人ってすごいじゃ〜ん、もうこんなに<再建>してるし〜」というトーンの記事である。

タイトルだけでも、「what a comeback!(たいした復活だ!)」とか「incredible progress(驚異的な前進)」とか、全体主義国家風の賛辞全開。たしかに「clear up(片付け)」は進んでいるように見えるけど、写真の中で実際に「rebuild(再建)」しているのは、見事に立ち並ぶ電柱ばかりのようにわたしには見える(東北電力が立てたのであろう)。

個人的には、3枚目の気仙沼の街角を写した写真の向かって左側の建物が生き残れなかったのが残念だ。右の建物も左の建物もヨーロッパ風の商店建築で、右は明らかにアールデコの影響下にある曲線的な壁面デザインとガラスブロックが特徴、左はもっと直線的で右の建物よりいくらか古いかもしれない。

デイリーメールはイギリスの保守派タブロイド新聞で、主要な読者はコンサーバティブなご婦人がた。キリスト教と白人イギリス人と結婚の価値を信じ、読者層になじみの薄い新しいことや多民族国家の現状を表すようなできごとに対して年中文句を言っている。女性が読者なので、おっぱいが売り物のサン紙ほど下品ではないものの、労働党がらみのゴシップとマイノリティ差別ではどっこいどっこいだ。なので、なぜ日本を持ち上げているのかわからないんですけど、自然災害ものも守備範囲だからその流れだろう。

というわけで、日本の人びとにとっての目下の心配が、「地震と津波の後片付け」よりも「福島第一の多発メルトダウンによる放射能汚染」にあることについては(さすがに無視はできなかったみたいだけど)ちょっとかすったのみ。それも、後処理進行中とさらっと書いてあるだけだった。保守党が新世代原発推進政策だってことも関係しているかもしれない。

とはいえ、ウェブページの読者はそのような予定調和に協力する気はさらさらなく、コメント欄には放射能汚染についての容赦ない書き込みがけっこうある。でも、おおむね「日本人はすごい」の絶賛なので、いい気持ちになりたい人や自分に自信がもてないときに、英語の勉強をかねて読むといいかもしれない。

多かったのは、日本はすごいけど、それに引き換えうちの自治体の仕事の遅いこと、といった、イギリス人によくある我が身をけなすタイプのぼやき。他に、同じような「自然災害」に襲われたハイチやニューオーリンズの現状(何年たっても片付かない)と比べているものもいくつかあった(差別的なものもあった)。

コメント欄への書き込みはもう閉め切られているけど、東京在住のアンドリュー・コードさんという人の最後の書き込みをざっと訳しておく。

「この記事(写真特集)は二つのことを物語っている。1)瓦礫はすっかりきれいになった、しかし、2)復興はゼロだってことだ。片付けた瓦礫は町々の周囲にうずたかく積み上げられており、木材、車、タイヤといった具合にきちんと仕分けされている。瓦礫はゴミ処理場には入りきらず(たとえば石巻では普段のゴミの100年分もある)、写真には写っていないけれど地域の人たちは瓦礫の山によって毎日悲劇を思い出させられている。そのうえ、何万人もの人びとが、この先どうなるかわからないままに仮設住宅に暮らしている。11ヵ月でこんなにできるとは思えないほど早く瓦礫は片付いたけれど、復興はまだ始まってもいない」

現状を手短に適格に書いたありがたいコメントだと思った。原発についてのいいコメントもあったけど、今日はもう寝る。

キーワード:

震災 / 原発 / イギリス / タブロイド


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藤澤みどり

ゲストブロガー

藤澤みどり

“英国在住の文化ウォッチャー、芸術とお酒と政治好き。ブログ「ロンドンSW19から」http://newsfromsw19.seesaa.net/”


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