去年、今年と二年続けて、なぜか年が明けて初めて見る映画は吉祥寺のバウスでのになり、
そのついでに去年と同じく、その手前にあるドイツパン屋のLindeの、
命のパンを地元でもないのに早くも味わうことになったんだが
(レシートに、"私が命のパンです"と書いてある。初めて見た時にはびっくりしたけど)、
買ってみたチーズ入りプレッツェルが、
なんだかフィリングのチーズが蟹みそみたいな味で……
いや、単に私が蟹みそを知らな過ぎるだけなんだろうとは思うけど……。
さて、それはさておき、選んだ映画はメジャー映画の『キャプテン・フィリップス』。
これがどうしても、去年you tubeで予告編を見てから見てみたかった
(のに、今まで見ていなかったわけだが)。
というのも、責任感のひときわ強い船長が、海賊と対決したあげく、一人海上を小型ボートでさまよう話かと短い予告編から勝手に思い込んでいて、
たとえ、最後はアメリカこそ正義、のアメリカ流勧善懲悪で終わることが予測されようと、
その重圧感やサバイバルのスリルを私も味わってみたく、やっぱり見なければ、と行ったんだが、
話はだいぶ予想とは違った。
ってか、これ、後から手にしたチラシに書いてあることとも違うよ。
「2009年、ソマリア沖。20人の乗組員を救うために海賊の人質となった船長の4日間」
ってなってるけど、「人質とならざるを得なかった」んであって、進んで人質となったわけじゃない。むしろ、親切が仇となってはめられたに等しい、見ればわかるけれど。
それに、「乗組員を救った感動実話が完全映画化」ともなっているけれど、
そういった、感動ものとも全然違うと思うんだよね。
確かにフィリップス船長はリーダーとしては厳しいほうで、機転も利き、当然責任感も強いほうだとは思うけれど、
格別、チラシに書いてあるようなずば抜けた「勇気」があったわけでも、強い家族への愛に支えられていたわけでもなくて、
ただ、船長として自分の務めを懸命に果たそうとしたらこうなった、という物語に私には見える。
だから、トム・ハンクスの演じる普通の人間としての船長の恐怖感や、失意の表現が秀抜で、
これをきりっとした顔立ちの男優に、きびきびとカッコよく演じられたら、この映画のよさは半減し、それこそアメリカのナルシシズムで終わったと思う。
そういう意味で、期待していたものとはまるで違ったものを見たことになるのに、すごく見たかいのある映画となった。
まあ、物語の幅はとても狭い。フィリップス船長が閉じ込められた救命艇と同じくらい狭く、前半は海賊と船員たちとの攻防戦、後半は軍隊による船長の救出劇に終わる。
それだけの話なんだけど、海賊の小船が洋上に現れてから、船長が人質となるシーンまでは胸がどきどきしっぱなしで、サスペンス映画としてはなかなか作りのいいものになっていた。
この映画は宣伝文句が9.11以後の常套句である「勇気」だの「家族愛」だのを使っているだけであって、
中身はそんな美談でもないし、アメリカ中心主義もそれほど鼻につかない(チクッくらい)。
なにもこんな安っぽい言葉でパッケージングする必要はなかったのに、と思うと、
ともかく人を引き寄せさえすればいい、と嘘の言葉を平気で使う人たちがここまで増えてしまったのが残念でならない。