2012-08-16

『プンサンケ』クロスレビュー:ギドク的なビターな作品 このエントリーを含むはてなブックマーク 

キム・ギドクが脚本を書き、その愛弟子であるチョン・ジェホンがメガホンを取り、キドク組とも言うべきクルー達によって撮影された作品であるせいか、キム・ギドクのカラーが色濃く出ています。主人公が一言もしゃべらない設定も、彼の生い立ちや不法に国境を越えて運び屋をしている理由などのバックグラウンドが一切説明されないところもキム・ギドク作品ではおなじみです。それに内容のビターさもキム・ギドクっぽい。
とはいえ、スピーディーでスリリングなストーリー展開はチョン・ジェホン監督ならではです。エグさもキム・キドクが自身で撮った作品よりやや控えめですから、キム・ギドク作品が苦手な人や彼を知らない人にも観やすいと思います。韓国国内ではいつも観客動員が少ないキム・キドクフィルムの作品にしては観客が多かったのもそのせいでしょう。カーアクションとか大規模な爆破とか大勢のエキストラを動員したバトルといったお金のかかる派手なシーンがないにもかかわらずスピード感とかスリル感を出しているところはすごいと思います。ただ、最初から最後まで緊張感がずーっと続くので、観終わってどっと疲れてしまいました(笑)。
主人公を演じるユン・ゲサンは、演技が上手くなりましたね。一言も発しない主人公の内面を顔の表情やちょっとしたしぐさで表しています。スクリーンデビュー作「バレエ教習所」の時とは段違い(笑)。キム・ギュリ(キム・ミンソン)やキム・ジョンスなど他の役者たちもしっかりと役を消化していて、作品の完成度を高めています。
ただ、キム・ギドクの作品が好きな人にとっては、少々物足りないかもしれません。エグさが控えめなところもそうですが、映像がね。本作は景色は素晴らしいのですが、キム・ギドク独特の耽美的な映像の美しさには及びません。そこがちょっと残念かな。

キーワード:

キム・ギドク


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