バフマン・ゴバディ監督『サイの季節』より
独創的な作品をアジアを中心とした世界から集める国際映画祭、第13回東京フィルメックスが11月23日(祝金)より開催される。オープニングには『恋愛についての4つの考察』と題し4作品が上映されているホン・サンス監督の最新作『3人のアンヌ』が登場。クロージングにはバフマン・ゴバディ監督が亡命生活のなか完成させた『サイの季節』が用意されている。特別招待作品として、アキ・カウリスマキ、ペドロ・コスタ 、ビクトル・エリセ、マノエル・ド・オリヴェイラという4人の監督が参加するオムニバス『ギマランイス歴史地区(仮題)』、ヴェネチア映画祭金獅子賞を受賞したキム・ギドク監督『ピエタ(仮題)』、カンヌ国際映画祭で好評を博したアピチャッポン・ウィーラセタクン監督『メコンホテル』など注目の作品が多数ラインナップ。各国の新進作家の作品を集めたコンペティション部門に加え、『イスラエル映画傑作選』『木下惠介生誕100年祭』など特集上映や関連イベントも行われる。
開幕にあたり、webDICE編集部内で投票を行い決定した、観ておくべき作品13本を紹介する。
特別招待作品 オープニング作品
『3人のアンヌ』
イザベル・ユペール主演、静かな海辺の町を舞台にした3つの物語
イザベル・ユペールを主演に迎えたホン・サンスの最新作。3つの物語から構成され、ユペールはそれぞれで異なるキャラクターを演じる。ホン・サンス作品の常連俳優が、ユペールと絶妙のアンサンブルでこの映画の世界を構築している。カンヌ映画祭コンペティションで上映された。
監督:ホン・サンス
配給:ビターズ・エンド
韓国/2012年/89分
http://filmex.net/2012/ss01.html
特別招待作品 クロージング作品
『サイの季節』
亡命中のゴバディ監督がクルド人詩人を描く。モニカ・ベルッチも出演
30年間の獄中生活から解放されたクルド系イラン人の詩人サヘルは妻の行方を探す。だが、妻はサヘルは既に死んだと信じ込まされていた……。『ペルシャ猫を誰も知らない』(09)以来、亡命生活を送っているゴバディの渾身の一作。イランの伝説的俳優ヴスーギが主演。
監督:バフマン・ゴバディ
イラク、トルコ/2012年/103分
http://filmex.net/2012/ss02.html
特別招待作品
『ギマランイス歴史地区(仮題)』
ポルトガルの古都をテーマにペドロ・コスタ、オリヴェイラ、カウリスマキ、ビクトル・エリセが結集
ポルトガル発祥の地とされる古都ギマランイス。多くの貴重な文化財により「ギマランイス歴史地区」として世界遺産に登録され、2012年に欧州文化首都に指定されたこの魅力的な都市を現代ヨーロッパを代表する4人の巨匠が様々な側面からとらえたオムニバス映画。
監督:ペドロ・コスタ、マノエル・ド・オリヴェイラ、アキ・カウリスマキ、ビクトル・エリセ
配給:ロングライド
ポルトガル/2012年/89分
http://filmex.net/2012/ss03.html
特別招待作品
『メコンホテル』
タイとラオスの国境を舞台にアピチャッポンが夢幻的世界に誘う
メコン川流域の静かなホテルで映画の撮影隊がリハーサルを行っている。それは人間の臓器を食う幽霊を扱った映画の企画だった……。ドキュメンタリーとフィクションの境界を軽やかに乗り越えた傑作。全編に流れるギターの調べが心地よい。カンヌ映画祭で特別上映。
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
タイ、イギリス、フランス/2012年/61分
http://filmex.net/2012/ss08.html
特別招待作品
『ピエタ(原題)』
キム・ギドクにヴェネチア映画祭金獅子賞をもたらした借金取り立ての男のドラマ
債務者に重傷を負わせ、保険金で返済させるという手段で借金を取り立てる男。孤独な男の前に、幼い頃に別れた母親と名乗る女性が現れる。疑いを持ちつつも、男は次第にその女性を受け入れるが……。ヴェネチア映画祭を異様な熱気に包み、金獅子賞を受賞した傑作。
監督:キム・ギドク
提供:キングレコード、クレストインターナショナル
配給:クレストインターナショナル
韓国/2012年/104分
http://filmex.net/2012/ss09.html
特別招待作品
『三姉妹~雲南の子』
ワン・ビンが中国の過酷な環境の中に生きる子供たちをひたすら描く
中国雲南省の山岳地帯の村に暮らす幼い三人の姉妹をとらえたドキュメンタリー。家は貧しく、母は家を離れ、父は出稼ぎで街に暮らし、姉妹は学校に通いつつも、働きながら子供たちだけで暮らしている。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門最優秀賞を受賞した。
監督:ワン・ビン
配給:ムヴィオラ
香港、フランス/2012年/153分
http://filmex.net/2012/ss10.html
特別招待作品 Focus on Japan
『BAD FILM』
20世紀末の東京を舞台に園子温監督の魅力が開花、幻の映画が解禁
(C) 2012 Dongyu Club / pictures dept. / Sion Sono
1995年に丸1年をかけてHi-8で撮影されたものの、未完成のままとなっていた幻の作品。舞台は香港が中国に返還された1997年、高円寺・中央線を中心に日本人自警団と外国人グループとの抗争が過激なバイオレンスと共に描かれた傑作。当時2000人のメンバーがいた東京ガガガによって、大エキストラを動員した新宿アルタ前の群衆シーンは必見。
監督:園子温
配給:鈍牛倶楽部、ピクチャーズデプト
(C) 2012 Dongyu Club / pictures dept. / Sion Sono
日本/2012年/161分
http://filmex.net/2012/ss12.html
特別招待作品 Focus on Japan
『ひろしま 石内都・遺されたものたち』
『ANPO』ホーグランド監督が写真家・石内都を捉えたドキュメンタリー
写真家・石内都は広島の原爆犠牲者の遺品を撮りつづけている。カナダのバンクーバーで開かれた写真展「ひろしま」のドキュメンタリーは、災難の重みを静かに伝えるとともに、北米市民になげかけた波紋を追う。監督は字幕翻訳家としても活躍するドキュメンタリー作家リンダ・ホーグランド。
監督:リンダ・ホーグランド
(c)NHK/Things Left Behind, LLC 2012
配給:NHKエンタープライズ
日本、アメリカ/2012年/80分
http://filmex.net/2012/ss13.html
コンペティション
『111人の少女』
バフマン・ゴバディの姉ナヒード・ゴバディがクルディスタンの現状を交え描く力作
111人のクルド人の少女が政府が夫を見つけてくれなければ集団自殺する、という手紙が大統領に届く。これを解決するため、一人の役人がクルディスタンに派遣される……。ユニークな発想と驚くべき映像に圧倒される作品。バフマン・ゴバディの姉ナヒードの監督デビュー作。
監督:ナヒード・ゴバディ&ビジャン・ザマンピラ
イラク/2012年/79分
http://filmex.net/2012/fc03.html
コンペティション
『愛の身替わり』
ある事故をきっかけにふたつの家族の間に起こる思いもよらない物語
交通事故で一人息子を失い、しかも妻が不妊治療で二度と子供が生めないことを知った男。絶望した男は事故を起こした運転手の妻に信じ難い要求を……。『完美生活』(08)のエミリー・タンが男女の微妙な心理を描く。サン・セバスチャン映画祭コンペティションで上映。
監督:エミリー・タン
香港/2012年/88分
http://filmex.net/2012/fc04.html
コンペティション
『記憶が私を見る』
ジャ・ジャンクーがプロデュース、台湾の女優ソン・ファンが主演も務める監督デビュー作
80年代の台湾ニューウェーブを想起させる親密さをもって一つの家族の姿を描き出した、ソン・ファンの長編デビュー作。ジャ・ジャンクーがプロデューサーを担当。ロカルノ映画祭でワールド・プレミア上映され、最優秀新人監督賞を受賞した。
監督:ソン・ファン
中国/2012年/87分
http://filmex.net/2012/fc06.html
コンペティション
『おだやかな日常』
2010年最優秀作品賞『ふゆの獣』内田伸輝監督の新作は、311以降の日本がテーマ
『ふゆの獣』で2010年フィルメックス最優秀作品賞を受賞した内田伸輝の新作。首都圏の同じマンションの隣同士に暮らすふた組の夫婦を主人公に、震災後に日本で実際に起こった人々の様々な反応を描いた野心作。極限状況の中での家族の愛情が見る者の胸を打つ。
監督:内田伸輝
配給:和エンタテインメント
日本、アメリカ/2012年/102分
http://filmex.net/2012/fc08.html
コンペティション
『あたしは世界なんかじゃないから』
群青いろ製作、ひとつの復讐をきっかけに紡がれる群像劇
保険セールスマンの黒川は恋人に撮影のバイト話を持ちかけられる。だが、それはある女性の復讐を撮影するというものだった。交わるはずのなかった複数の男女を巻き込みつつ、ついにアパートの一室で復讐劇が始まる……。『ある朝スウプは』の高橋泉、待望の新作。
監督:高橋泉
製作:群青いろ
制作協力:カズモ
日本/2012年/112分
http://filmex.net/2012/fc09.html
コンペティション
『エピローグ』
イスラエル・テルアビブの荒廃した街に住む老夫婦による最後の旅
孤独に暮らす老夫婦ハユタとベレルは変わりゆくイスラエルの現状に絶望する。ある夜、二人は最後の旅に出発するべくアパートを出る……。理想を求めてイスラエルを建設した世代の心情を象徴的に表現した作品。監督はこれがデビュー作となるアミール・マノール。
監督:アミール・マノール
配給:和エンタテインメント
イスラエル/2012年/96分
http://filmex.net/2012/fc02.html
第13回東京フィルメックス
2012年11月23日(祝金)~12月2日(日)
会場:有楽町朝日ホール[有楽町マリオン11階][地図を表示]
東劇[東劇ビル3F][地図を表示]
TOHOシネマズ日劇[有楽町マリオン9F][地図を表示]
※上映時間・料金などの詳細につきましては、
東京フィルメックス公式サイトをご覧ください。