鎌仲ひとみ監督作品
「ミツバチの羽音と地球の回転」
http://888earth.net/
2011年2月より 渋谷・ユーロスペースにて、未来を作るロードショー!
ユーロスペースでの上映詳細
http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=309
【速報!!】渋谷UPLINKにて『ヒバクシャ』『六ヶ所村ラプソディー』が上映決定!
http://888earth.net/staffblog/2011/01/uplink.html
『ヒバクシャ』
http://www.uplink.co.jp/factory/log/003859.php
『六ヶ所村ラプソディー』
http://www.uplink.co.jp/factory/log/003858.php
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未来のエネルギーをどうするのか?
祝島(いわいしま)とスウェーデンでエネルギーの自立に取り組む人々の物語
全国600ヶ所以上で上映され、大きな社会的反響を読んだ『六ヶ所村ラプソディー』(06年)より4年―。『ヒバクシャ―世界の終わりに』、『六ヶ所村ラプソディー』に続く、鎌仲ひとみ×グループ現代が世に問う<三部作>ついに完成!
<ストーリー>
瀬戸内海に浮かぶ祝島の真正面に、原発建設計画が持ち上がって28年。島民は一貫して建設に反対してきた。島では海藻や鯛をとり、無農薬のびわを栽培して千年も前から生活が続けられている。最も若い働き手、孝くんは妻子を抱えて自立を模索している。その行方を阻むように着々と進められる原発計画。島民は一体となって阻止行動に出る。
孝くんの眼差しの先にはスウェーデンの取り組みがある。足元にある資源で地域自立型のエネルギーを作り出すスウェーデンの人々が目指すのは持続可能な社会。それを支えるのは電力の自由市場。原発重視かつ電力独占体制の日本のエネルギー政策を変えるためにはどうしたらいいのか?
そして、祝島の未来はどうなるのか?
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★鎌仲ひとみ監督にインタビュー【2】(2010年12月16日)
前回のインタビュー【1】では、地方から東京に押し寄せてきた映画であること、大手メディアが取材をしないというハンディについてうかがいましたが、今回は、映画に登場するスウェーデンのエネルギー政策について、お聞きしました。(聞き手:奥田みのり)
奥田)映画にでてきたスウェーデンのオーバートーネオ市は、スウェーデンという国が進んでいる方向と、同じ方向を向いている町という理解でいいんですよね。
鎌仲)そうです。一番北にあるので、一番ハンディがあるのですが、先導しているわけです。(補足:風力、バイオマスなどを使い、電力の半分を自然エネルギーでまかなっている)
奥田)そうすると、オーバートーネオ市と祝島を比較した場合、祝島は国(日本政府)が進もうとしている方向と、違う方向に進もうとしているわけで、オーバートーネオ市と国の関係とは違いますよね。それぞれのコミュニティは持続可能な方向を目指しているという点では同じですが、コミュニティをとりまく国家まで見ると、違った力学がそこにはあると。
鎌仲)そうです。でもさらに上の「世界」からみると、世界が未来にむかって進んでいく方向と、二つのコミュニティは同じ方向を見ているんじゃないかと思うのです。
奥田)なるほど。それが、地球の回転という言葉に、つながるのでしょうか?
鎌仲)そうですね。あと、地球の回転自体が、使っても使ってもなくならない自然エネルギーの源になっていることもあります。四季が生まれるのも、太陽の周りを地球が回っているからだと、スウェーデンの波力発電やっている人がいっていましたよね。「マザーネイチャー(Mother nature)」が、エネルギー転換をしてくれるとも。風や波のエネルギーに気がつくということ。単に、風がふいているだけだと思っていたことが、実は、エネルギーの集積だということに気がつけば、それを利用するという発想になっていくと思うのです。
奥田)映画をつくられてからの、スェーデンの状況の変化は?
鎌仲)基本的には、脱原発に向かっていますが、新しく原発を建ててはいけないことになっていた点に変化がありました。現在、スウェーデンに原発は10基あるのですが、これ以上は増やさないというのが基本で、これは変わっていません。ただし、このうちの1基が廃炉になったときに、電力会社が建てたいのであれば、政府はこれを止めない、というように変わりました。
しかし、エネルギー庁長官は、建てられないだろうといっています。建てようとすることを、無理矢理止めることはしないけれど、その代わりに援助もしない。なにか問題が起きたときは、無制限の補償を電力会社がするというルールをつくってあるから、といっています。資本主義社会でもあり、民主主義の社会において、それを止めておくのが不自然だともいわれていました。日本の場合は、原発で何かあっても、補償は500億円だけなんですよ。
奥田)電力会社の上限が?
鎌仲)はい。500億円で原発事故が補填できるはずがないじゃないですか。日本はすごく甘いです。
(インタビュー【3】に続く)
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補足):日本では、「スウェーデン 脱原発政策へ転換」といった報道がされていますが、鎌仲監督の話から、廃炉になった際に、新しく建てることは止めないが、補助はしないというルールがあることがわかりました。どうやら、新しく建てる場合も、新しい地域に建てることはできないようです。
『スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」』の著者である小澤 徳太郎さんが行ったプレゼン「スウェーデンの環境・エネルギー政策:原子力問題の捉え方」によると、以下のことが説明されています。(参考URL:http://www.hilife.or.jp/wordpress/?p=4451)
1980年3月23日に行われた、スウェーデンの国民投票によると、最も原子力に好意的な案でも、「すでに着手してしまった原発12基を認めただけ」「新規増設はしない」という考えだった。その後、99年、2050年に原発が廃炉となり、現在は残る10基が稼動中である。
電力会社は、将来、原子力が不要になるエネルギービジョンを描いている。水力発電、コジェネレーション、背圧発電、風力発電、太陽光発電で、合計130TWh/年という計画であり、原子力への依存なしに、化石燃料を最小限にし、達成可能であると考えられている。
政府のエネルギーシナリオでは、2050年までに達成する、3つのシナリオを用意している。「省エネシナリオ」「バイオマスシナリオ」「風力シナリオ」のいずれも、石炭、原子力、石油の占める%が少なくなる計画である。
日本のメディアは「スウェーデンの脱原発政策の転換」と報道するが、小澤さんの理解では、「スウェーデンの持続可能な社会を支えるためのエネルギー体系の修正」であり、「誤報というより、不十分な報道」と指摘している。
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(写真提供:鎌仲ひとみ監督)