また一ヶ月以上日記を書けなかった。
しかしそれはコロナに脅えていたわけでも、夏バテしていたわけでもなく、
あろうことか、負傷してしまっていたからだった。
なんと、前回のlive当日であった9月6日、
事前のスタジオでの調整中にどういうわけだか後ろに転倒し、
はなはだしく腰を傷めてしまったのであった
(腰椎だの、仙骨だの、そのあたりの関節だのいろいろ)。
それでその後仕事をすることは二週間はあきらめ、
負傷した翌日から、近所の接骨院に連日徒歩で通院している
(むろん、休診日は除く)。
3週間以上経ってようやく、これまでつけていたコルセットを時々はずしてもいいというところまで来たけれど、
当然まだ腰は痛いので、
洗面器に向かってまともにかがみ込んで顔を洗うこともできないし、
長いこと椅子に座り続けていることもできない。
しかもどうして転倒したのかがそもそもよくわかっていなくて、
スタジオで、"あ~、今日はいい感じ!"
と気持ちよく後ろに反ったつもりが勢いあまって引っくり返ったらしいとはいえ、
"あっ、転ぶ!"とか思って両腕をばたつかせたような記憶はなく、
気がついたら尻もちをついていた、という感じで、
そのとたん、信じられないような衝撃が背骨を「垂直に」走り抜け、
"えっ、なに!?"と驚いたのと同時に、
左にはいていたスニーカーの紐が解けていたのが目に入ったけれど、
紐が解けていたぐらいで、そんなに派手にバランスを崩すとは思えないし、
なぜそういうことになったのかがやはり解せない。
なんだか、反った瞬間にふっと気を失ったのではないかという気が漠然としたのだった。
奇しくも、その日liveを見に来てくれた、
現在、私のヴォイストレーナーを務めてくれているKさんが、
私の話を聞いて、
「一瞬、気を失ったんじゃないか」
と言ったので、やっぱりそうなのかな、と思った。
すなわち、ヴォイストレーナーに当日そう言われたということは、
背中の全面に痛みを覚えながらも、その日のパフォーマンスはからくもやり遂げたということなんだけどね。
今まで、ほかのミュージシャンやパフォーマーが、
しばらくは安静が必要だというような病気にかかっても、あるいは骨折しても、
出演が決まっていたものに対しては、決死の覚悟でやります! とか言うのを、
なに言ってんの、そんなliveに生涯がかかっているわけじゃないんだから、ちゃんと安静にしてなきゃだめじゃない!
とか思ってきたくせに、いざ自分がそうなるとやはりやってしまうものだね。
今回我が身をもって、表現者とはそういうものだと初めて知ったのだった。
しかしもちろんとても痛かったので、当日のパフォーマンスはいつもほどには形として踏み出せないものがあり、
そうすると当然、表わしたかったものとしても、それ以上に踏み込めないものがあり、
意図していたものとは違って「アーダスの野原」止まりになってしまったんだけど
(「アーダスの野原」って私にはなんか達成しきっていない感じがある)。
なにぶん、スタジオ内で尻もちをついた時、
いったん立ってみて、立てたことにちょっと安心し、脇にあった椅子に座ってはみたけれど、
痛くてとても座ってもいられず、
もう一度フロアに仰向けになって、10分間は痛みが落ち着くのを待って寝ころんでいたってぐらいの衝撃で。
その後、なんとかなるかな、と思って起き上がったら、
やめときゃいいのに、残っていた時間で練習を続け、
実はすごいショックを受けていたのに、なに食わぬ顔でスタジオを出て、
家に帰ってきてから、リハの時間まではずーっと痛みに耐えつつ部屋で横になっていて、
それから会場に出向いたというしだいだった
(会場だったViolonは歩いていけるところなんで)。
その晩はなんとかやり過ごせても、
内心、翌朝ふとんから起き出せる自信はなかった。
見に来てくれた人たちも、翌日のほうが痛みが増すものだから気をつけて、と忠告してくれた。
幸い、激痛を伴いながらもかろうじて身を起こすことはできたので、
接骨院に電話して診療していることを確かめてから、ほうほうのていで歩いていったんだが。
今は先生の施術のかいもあってか、一日一日快方に向かっていくことはわかるんだけど、
完治するにはまだまだしばらく時間がかかりそう。
しかしまあ、治っていくだけ幸いっていう状況です。