駒井哲郎の展覧会を横浜美術館でやっていたのを今頃知って、
この間見てきたけれど、
一番初めに飾ってあったこの自画像がとても気に入った。
第二次大戦中の暗い世相を反映して暗い画風になっている、とかいう説明がかたわらにあったような気もするけれど(※)、
暗いというより、どこにつながっているのかわからない洞のような黒い瞳に吸い込まれそうになる。
吸い込まれたら、別の世界に行くのだろうか。
そう言えば、同展で展示されていた夢の光景を描いたシリーズでは、
駒井哲郎は、瞳の中に幻想的な光景が立ち現れると感じていたようだった。
この瞳ではさもありなん。
とてもすてきな絵。あ、でもろくろっ首みたい。
--------------------------------------------------
(※)
しかし、ほんとにそんなこと書いてあったっけな、と思って、
どうも気になるから、もう一回行ってみたら
(も一回、絵も見てみたかったし)、
全然違った。そんなこと、どこにも書いてなかった。
ネット上でこの図版を探している時にどこかで読んだのかもしれないけれど、
書いてあったことは、
「虚ろな眼で空を見据える駒井の姿からは、知性あふれる繊細さと共に心の暗部に狂気を抱えた、二面性を持つ若き芸術家の不安定な内面と、銅板画という日本においてはほぼ未開拓の分野で闘おうとする青年の孤独感が感じられる」
だった。
そうか、「繊細さ」と「狂気」と「不安定な内面」と「孤独感」ね。
まったくの記憶違いでした、ごめんなさい。
ところでこの自画像は1942年作で、wikiによると、
東京美術学校(現在の東京藝大)の卒業制作として描かれたものだという。
現物を目の前でもう一度見てみると、確かに眉間の陰りなど、図版で見るよりずっと濃く描かれているのだった。
でもやっぱり私にとってはすてきな絵――すてきな人を描いたように見える絵――だ。
(2018.12.11追記)