あれからどうもやはり虫に縁づいているようで、
ふとシンクの縁にかけてあるキッチンの炊事用手袋に目を落としたら、
なんだか不明の黄色い小さな幼虫がはっていたり、
キッチンの引き出しを開けたら、年にいっぺんぐらいしか出会わないゴキに遭遇したり、
ドアを開けたらはばたきながら小さな蛾が飛び込んできたりと、
どうにも虫との出会い率がふだんより高過ぎてちょっと気色悪かったんだが
(田畑の中の一軒家じゃあるまいし)、
意味もわからないままある晩アパートに帰ってくると、
今度は薄暗い外灯の下で、通路に蝉の死骸が転がっているのを発見し、
その横に立ち止まっていたコオロギが、私が歩いてきたのに驚いてぴょんぴょんはねながら暗がりに消えていったりするのを見て、
なんだか虫の湧いて出る夢の中とさして変わらないのを感じ、
これだけ日常生活にいわゆる異物が侵入するということは……と考えて、
あ、ねずみ、と思い当たったとたん、
その晩、天井裏でタタタタという音がし、
やっぱりねずみが現れた。
夢うつつに聞いている分には、
前と同じでなにも不快ではなく、
しかし以前よりも縦横無尽にタタタタ、タタタタと天井裏を駆け回るようすは、
まさにねずみの運動会という感じだったのだが。
おかしな前触れとともに、ほぼ一年ぶりに戻ってきたねずみ。
そして前よりも屋根裏を物色し回るようす。
さて、どうするかな。