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日程2014年08月10日 ~ 2014年09月10日
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時間10:30
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会場ラピュタ阿佐ヶ谷
日本のSF・特撮映画の歴史は、金字塔「ゴジラ」誕生まで、戦前より脈々と円谷英二の師・枝正義郎や、低予算B級映画の筆頭会社、極東キネマや大都映画など、パイオニアが試行錯誤のもと築き上げてきました。
名画座ラピュタ阿佐谷は2014年8月10日より、『戦前日本SF映画小回顧』と題しまして、高槻真樹・著「戦前日本SF映画創世記」で紹介された名作・奇作のうち、27作品を9プログラム編成で特集上映いたします。
「五郎正宗孝子伝」は忍術映画全盛期、円谷英二の師・枝正義郎が撮影した貴重な一本。刀工・五郎正宗が父と再会するまでを描きます。また、“目玉の松ちゃん”と愛されたスター・尾上松之助が、ガマに変身し雲に乗り空を飛ぶ、牧野省三監督作「豪傑児雷也」や、江戸初期、幕府転覆の陰謀を阻止すべく八剣士が立ち上がる「忍術 戸隠三剣士」は、洗練された殺陣が見どころの極東キネマ代表作です。
さらに、片岡千恵蔵主演・マキノ正博監督作「續清水港」や円谷英二が渾身の特撮技術を尽くして制作された山本嘉次郎監督の超大作「孫悟空 前後篇」など豪華ラインナップです。
前代未聞!!希少価値の高い、戦前日本SF映画27作品が大集結する本特集にご期待ください。
「今回は出来がいい」と評判のハリウッド版「ゴジラ」が夏の話題を独占しています。奇しくも今年はゴジラ生誕60周年。戦後突然出現したように見えるゴジラですが、源泉となるSF的想像力はどこにあったのでしょうか。その謎に挑んだ研究書、高槻真樹「戦前日本SF映画創世記」(河出書房新社)で紹介された数々の名作・奇作のうち、上映可能なものをできる限り集めてみました。これが新発見への第一歩となれば幸いです。
text by 高槻真樹
※適正映写速度が作品によって異なるサイレントフィルムに関して。当館では映写機の仕様上、24fpsでの上映となります。あらかじめご了承ください。以下に記載の上映時間も映写速度24fpsの場合です。
【トークイベント】
8月17日(日)10:30『忍術 戸隠八剣士』『權三助十 天狗退治』上映後
ゲスト:高槻真樹さん、添野知生さん
【活弁付き上映】
8月31日(日)『争闘阿修羅街』 弁士:山城秀之さん
9月6日(土)『密林の怪獣群』 弁士:山内菜々子さん
【上映日程】
8.10(日)~12(火)五郎正宗孝子伝/國士無双
8.13(水)~16(土)豪傑児雷也/渋川伴五郎
8.17(日)~19(火)忍術 戸隠八剣士/權三助十 天狗退治
8.20(水)~23(土)豪傑児雷也/渋川伴五郎
8.24(日)~26(火)怪電波の戦慄 第二篇 透明人間篇/弥次喜多 岡崎猫退治/河童大合戦
8.27(水)~30(土)忍術千一夜
8.31(日)~9.2(火)争闘阿修羅街/モダン怪談 100,000,000円/石川五右ヱ門の法事/荻野茂二作品
9. 3(水)~ 6(土)玩具映画/密林の怪獣群
9. 7(日)~ 9(火)續清水港(清水港 代参夢道中)
9.10(水)~13(土)玩具映画/密林の怪獣群
9.14(日)~20(土)孫悟空 前後篇
【上映作品】
8.10(日)~12(火)
五郎正宗孝子伝
1915年(T4)/天活/白黒/無声/36分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■監督:吉野二郎/撮影:枝正義郎
■出演:澤村四郎五郎、市川莚十郎、中村吉三郎
忍術映画が盛んに作られた日本映画初期の非常に貴重な一作。尾上松之助と覇を競った澤村四郎五郎の主演で、円谷英二の師・枝正義郎の初期の撮影作品。刀工五郎正宗が父と再会するまでを描く。特撮は終盤に少しあるだけだが、洗練されたカメラワークに驚かされる。工程が未分化な時代で、枝正義郎監督作品とするのが妥当との見方もある。
8.10(日)~12(火)
國士無双
1932年(S7)/片岡千惠藏プロダクション/白黒/無声/16分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品/8分 ※16mm ○マツダ映画社所蔵作品
■監督:伊丹万作/原作・脚本:伊勢野重任/撮影:石本秀雄
■出演:片岡千惠藏、瀬川路三郎、渥美秀一郎、伴淳三郎、山田五十鈴
伊丹万作監督の伝説のノンセンス時代劇。正体不明の男が剣豪の偽者に仕立てられ、なぜか本物を倒してしまう。全編不条理な展開の連続で、「メンタルテスト」なる字幕も登場する。完全な状態では残っていないため、今回は二種類の断片を連続上映し、現存最長版に近づける試みを行う。マツダ版には、FC版にはない、二度目の対決シーンがある。
8.13(水)~16(土)、8.20(水)~23(土)
豪傑児雷也
1921年(T10)/日活大将軍/白黒/無声/14分 ※16mm
■監督:牧野省三
■出演:尾上松之助、市川壽美之丞、片岡長正、大谷鬼若、片岡松燕
一世を風靡した尾上松之助による映画初期忍術映画の代表作。ガマに変身し、雲に乗り空を飛ぶなど、現在に続く特撮技術とSF的想像力の源泉が詰め込まれている。不完全な断片だが、当時の熱気をうかがい知ることができる貴重な一作。固定カメラに書き割りの背景と演劇的な演出方法は評論家層の批判の的になったが今も魅力は尽きない。
8.13(水)~16(土)、8.20(水)~23(土)
渋川伴五郎
1922年(T11)/日活大将軍/白黒/無声/65分 ※16mm
■監督:築山光吉/撮影:松村清太郎
■出演:尾上松之助、嵐瑠珀、片岡松燕、尾上松三郎、中村仙之助
松之助の忍術映画のうち、ほぼ全編が残された唯一の作品。力自慢の柔術家・渋川伴五郎が土蜘蛛退治に挑む。歌舞伎の様式美をうまく生かしながら、特撮を駆使した対決場面は迫力満点。序盤の相撲、クライマックスの剣戟とめまぐるしく変わるアクションの連続はサービス精神満点で、当時喝采を受けたのも当然と納得できる。
8.17(日)~19(火)
忍術 戸隠八剣士
1937年(S12)/極東キネマ/白黒/58分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■監督:山口哲平/原作:坂間清彦/脚本:夛陀羅三平/撮影:松本靜八
■出演:雲井龍之介、市川壽三郎、綾小路絃三郎、靜田二三夫、五十鈴桂子
ロボット時代劇などインパクトの強いアイデアの連打で存在感を見せた戦前B級映画の雄・極東キネマの代表作。江戸初期、幕府転覆を目論む福島正則の陰謀を阻止するべく、戸隠八剣士が立ち上がる。松之助時代の素朴な特撮を、凝りに凝った編集と洗練された殺陣で一変させた。全編を埋め尽くす奇想は、これぞ極東という魅力に満ちている。
8.17(日)~19(火)
權三助十 天狗退治
1938年(S13)/極東キネマ/白黒/25分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■監督:山口哲平
■出演:綾小路絃三郎、伊勢原浩太郎
フィルムセンターに残された数少ない極東作品のひとつ。何度も映画化されている講談ネタ・駕籠かき権三と助十コンビの弥次喜多もの。強盗団の旅芝居に、知らずに加わった二人が巻き起こすドタバタを奇想たっぷりに描く。「戦前日本SF映画創世記」では取り上げていないが、ほとんど上映の形跡もないため、今回あえて選んでみた。
8.24(日)~26(火)
怪電波の戦慄 第二篇 透明人間篇
1939年(S14)/大都映画/白黒/34分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■監督:山内俊英/脚本:大井利與/撮影:下村晴夫
■出演:水原洋一、水島道太郎、藤間林太郎、夢路妙子、四方利男
洒脱なパロディ的演出でB級映画の王者として君臨した大都映画による、戦前初の商業SF映画「怪電波殺人光線」のトーキーリメイク版。謎のロボットを巡り敵味方入り乱れた争奪戦が展開される。現存するのは二部作の後篇のみだが、主人公ロボット・人間タンクの存在感は十分楽しめる。なお「透明人間」というが、透明になるのは人間タンクである。
8.24(日)~26(火)
弥次喜多 岡崎猫退治
1937年(S12)/大都映画/白黒/無声/14分 ※16mm
■監督・原作・脚色:吉村操/撮影:広川朝次郎
■出演:大岡怪童、山吹徳二郎、大山デブ子、飯塚小三郎、谷定子
大都映画のパロディ路線の魅力が大いに感じられる一作。もともと二巻しかなく、添え物の短編らしいが、着ぐるみの化け猫の安っぽさを逆手に取ったシュールな展開がすばらしい。ヒロインの大山デブ子は、寺山修司が自作劇「大山デブコの犯罪」でオマージュを捧げた、大都随一の喜劇女優。巨漢・大岡怪童とのコンビで人気があった。
8.24(日)~26(火)
河童大合戦
1939年(S14)/極東キネマ/白黒/5分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■監督:米沢正夫/撮影:上村貞夫
■出演:雲井龍之介、林長二郎、綾小路絃三郎、片岡左衛門、小川重四郎
極東が得意とした怪人・化物路線の集大成というべき大作で、人間に変身する能力を持つ河童一味と正義の剣士が対決する。全編大量の河童が登場し、忍術と剣戟が入り乱れる。残念ながら現存するのはロシアのゴス・フィルモフォンドで発見された5分の断片にすぎないが、多数のショットが含まれ、極東らしいインパクトの片鱗をうかがうことができる。
8.27(水)~30(土)
忍術千一夜
1939年(S14)/大都映画/白黒/無声/50分 ※16mmサウンド版
■監督:大伴龍三/脚本:三品文雄/撮影:金森利之
■出演:近衛十四郎、水川八重子、クモイ・サブロー、大岡怪童、高原富士子
大都で大量に作られた忍術映画の代表的な一本。軽妙なパロディ要素を取り入れ、独自の魅力を確立した。落ちていた巻物を拾えば誰でも忍術を使える!という、あっけらかんとした朗らかさは、大手スタジオのシリアスな剣戟と一線を画した。特撮的には素朴そのものだが、近衛十四郎の軽快な刀さばきが大いに画面を盛り上げてくれる。
8.31(日)~9.2(火)
争闘阿修羅街
1938年(S13)/大都映画/白黒/無声/36分 ※16mm
■監督:八代毅/原作・脚本:吉村操/撮影:下村晴夫
■出演:ハヤブサ・ヒデト、大河百々代、大岡怪童、高村栄一、松村光夫
大都の現代劇を代表するアクションスター、ハヤブサ・ヒデトの戦前ほぼ唯一の残存作品。正義の新聞記者が、新型機の設計図を巡り悪の組織と争奪戦を繰り広げる。スタントマンの代役を使わず、主演俳優自らの曲芸師さながらのアクションが売りだった。科学要素や追っかけアクションは「怪電波の戦慄」の原型といえるもので、比較してみるのも面白い。
8.31(日)~9.2(火)
モダン怪談 100,000,000円
1929年(S4)/松竹蒲田/白黒/無声/11分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■監督:斎藤寅次郎/原作:大森文雄/脚本:池田忠雄/撮影:武富善雄
■出演:斎藤達雄、松井潤子、坂本武、吉川満子、小倉繁
ノンセンス喜劇の巨匠・斎藤寅次郎サイレント期の貴重な一作。親に認められない恋をしたカップルが赤城山で心中を図るが、なぜか大量に出現した幽霊・妖怪に追いかけられる羽目に陥る。全編矢継ぎ早な奇想の連続で、自由すぎる展開は限りなくSFに近づいている。公開当時の三分の一弱に縮められた短縮版だが、おもしろさは十分に伝わる。
8.31(日)~9.2(火)
石川五右ヱ門の法事
1930年(S5)/松竹蒲田/白黒/無声/14分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■監督:斎藤寅次郎/原作:絹川秀治/脚本:池田忠雄、伏見晃/撮影:武富善雄
■出演:渡辺篤、横尾泥海男、青木富夫、坂本武、香取千代子
石川五右衛門の子孫にあたる石川吾郎はさえない古道具屋の主人。恋人との結婚もかなわず死んでしまった吾郎は、石川五右衛門本人の霊から「助けてやろう」と持ちかけられるが・・・全編ブラックなドタバタで、独特の味わいが魅力的。「モダン怪談」でも使われている骨格標本がなぜかこちらでも使い回され、奇妙なおかしみを作り出している。
8.31(日)~9.2(火)
荻野茂二作品
「百年後の或る日」1932年(S7)白黒/無声/7分
「AN EXPRESSION(表現)」1935年(S10)彩色/無声/2分
「PROPAGATE(開花)」1935年(S10)白黒/無声/3分
○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
戦前個人映画の世界で存在感を見せた荻野茂二。今回はSF・特撮色の強い三本をセレクトしてみた。「百年後の或る日」は、現存最古のジャンルSF映画といえる貴重な作品。東洋的デザインを取り込んだ官能的未来都市像がすばらしい。他にカラー抽象アニメ「AN EXPRESSION(表現)」と植物のライフサイクルを抽象化した「PROPAGATE(開花)」。
9.3(水)~6(土)、9.10(水)~13(土)
玩具映画 ※DVD上映
「火星飛行」「探偵ターチャン殺人電波」「正ちゃんの動物地獄」
「快傑たか」「夢現三百年往来」
「忍術真田十勇士」「忍術大進軍」
大阪芸術大学の助成を得て「玩具映画プロジェクト」が収集したコレクションのうち、SF的要素を含むアニメ作品三本、実写作品四本を上映する。アニメ作品では動物専門の地獄で閻魔大王と戦う「正ちゃんの動物地獄」が、実写作品では極東作品の断片「忍術大進軍」が特に興味深い。いずれも富裕層の家庭向けに販売されたもので今となっては大変に貴重。
9.3(水)~6(土)、9.10(水)~13(土)
密林の怪獣群
1938年(S13)/大都映画/白黒/無声/41分 ※16mm
■監督:山内俊英/原作・脚本:有田彰夫/撮影:下村晴夫
■出演:大岡怪童、山吹徳二郎、雲井三郎、大山デブ子、大塚弘
「キング・コング」上陸の衝撃を受けて作られた大都映画の珍品。秩父の山奥で山岳部の女子大生と類人猿一家が出会う…設定ではあるが、類人猿らしさは皆無。山奥のマタギ一家のようになってしまった。未知の生物をどう描くかルールが定まっていなかった創成期の混乱を示す貴重な作品。今となっては異様な世界観がかえって面白い。
9.7(日)~9(火)
續清水港 ※画面上のタイトルは再公開時の題「清水港 代参夢道中」
1940年(S15)/日活/白黒/89分 ○東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
■監督:マキノ正博/脚本:小國英雄/撮影:石本秀雄/美術:角井平吉/音楽:大久保徳二郎
■出演:片岡千惠藏、廣澤虎造、澤村國太郎、志村喬、轟夕起子
現代の舞台劇演出家・石田が幕末にタイムスリップする。森の石松その人として扱われた石田は、金刀比羅宮参りをする羽目になる。石松はこの参拝の帰途で殺されており、そのことを知る石田は懸命に歴史を変えようとするが・・・森の石松もののSF的パロディであるが、太平洋戦争前夜の不安を巧妙に風刺した側面もある。
9.14(日)~20(土)
孫悟空 前後篇
1940年(S15)/東宝映画/白黒/135分
■監督・脚本:山本嘉次郎/撮影:三村明/美術:松山崇/音楽:鈴木靜一
■出演:榎本健一、花井蘭子、李香蘭、岸井明、高峰秀子
エノケン主演で太平洋戦争前夜に制作された超大作。孫悟空は飛行機で空を飛び、科学技術で身を固めた金角・銀角と戦うというSF的演出が興味深い。特撮を担当した円谷英二は、持てる技術を尽くして、初のSF的画面づくりに挑んだ。金角・銀角の基地で、数十体のロボットが駆け回るシーンが、とりわけ強い印象を残す。
☆作品情報の詳細等はラピュタ阿佐ケ谷のホームページをご覧下さい!
HP:http://www.laputa-jp.com
入場料金:一般…1,200円
シニア・学生…1,000円
会員…800円
*水曜サービスデー…一般1,000円
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映画館・ラピュタ阿佐ヶ谷
〒166-0001
東京都杉並区阿佐谷北2-12-21
TEL:03-3336-5440 FAX:03-3336-5671
E-mail:asagaya@laputa-jp.com
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