Alamo Draft Houseの館内
9月にトロント国際映画祭に行った際にニューヨーク、特にブルックリンに最近できた映画館を視察してきた。今回Airbnbを利用してブルックリンのブッシュウィック地区の部屋を拠点にした。ブルックリンのおしゃれ地区となったウィリアムズバーグス比べて電車で2駅ほど奥にあるので、まだ栄えていないが、ガイドブックによると、家賃がまだ安いせいかアーティストが集まり、ヒップなスターが集う地域に激変している地区らしい。
さて、映画館はいわゆるシネコンではなく、日本でいうミニシアター規模のものを選んで回った。最近のトレンドでもある飲食をしながら映画を観るところはどこも賑わっていた。ポップコーンとコーラを片手に映画を観るという文化のアメリカなので、テーブルが個別にあって飲食をオーダーして映画を観るというのはその延長とも言えるので違和感はないのだろうが、そこで上映される映画はインディーズ系でもある種のエンタメでないと食べながら観るには向かないと思った。
滞在中、交通手段は主にウーバーを利用。ウーバーは、日常利用には高いが、旅行者としてマンハッタンから深夜ブルックリンに戻ってくるときにはウーバーは便利だった。ちなみに競合のリフティも利用して、運転手に違いはあるかと聞くと、別にないという答えだった。ウーバーを多く利用した感想は、運転手はウーバーのAIに使われるロボットと化していた。たまたまかもしれないが、愛想もなく、会話もなかった。特にウーバー・プールという乗り合いシステムを選ぶと、通常より安いのだが、運転手も途中誰を乗せるのかはウーバーAIの指示通り走らせ、スマホのナビが誰々をピックアップしに行きますと喋り、運転手もそれに従った運転するだけだった。
(文・写真:浅井隆)
①Nitehawk
(via http://ourbksocial.com/dine-in-movie-theatre-in-brooklyn/)
スクリーン数:3
座席数:92、60、34
まず最初に紹介するのはブルックリンのホットスポット、ウィリアムズバーグのNitehawk。3スクリーンで座席にテーブルがあって上映中に飲食できる。シネマは2階、1階にはバーがある。
Nitehawkで観たのは『神様なんてくそくらえ』サフディ兄弟の『グッド・タイム』。ロビーで「この映画館の前でロケしてたよね」とかいう会話が聞こえてくるNYで撮影した御当地映画ということもあり満席。上映中にもテーブルにメモすれば座席の列をすり抜けてホールがオーダーしたものを届けてくれる最近流行っているスタイル。ピザからパフェまでOK。
■Nitehawk公式サイト:
https://nitehawkcinema.com/williamsburg/
②Syndicated
(via http://syndicatedbk.com/)
スクリーン数:1
座席数:60
次に紹介するのはブッシュウィックにあるSyndicated。ウィリアムズバーグがあまりにもトレンディな地域となり、そのトレンディさがMUJIの出店などで一般化してきて、家賃もマンハッタンと変わりなくなったのでアーティストなどはこちらに移り住んでるとか。Syndicatedはそのブッシュウィックのメインストリート(と行っても20メートル位)にある映画館。
秘密クラブのような小さなドアの奥は工場だった空間をリノベしたカフェレストラン。その日はアメリカで『ツイン・ピークス The Return』最終回連続2話を勝手に壁に投射してみんなで楽しむ趣向。ドリンク代だけでOK。放送開始時刻には近所の人が集まってきてほぼ満席に。
カフェの奥にはレストラン・シアター。テーブル付きのスタジアム型客席。DCPで新作を上映。上映前に注文を取り来て上映中にドリンクや食事が出てくる。食べながら観るので上映作品は選ぶけど、この体験は自宅のテレビで見るより友達や恋人と一緒に観るのは楽しい。
Syndicatedのユニセックス・トイレ
キッチンをのぞいたが、映画の上映前に一度にオーダーが入るのに対応してかなり大きなキチンだった。
■Syndicated公式サイト:
http://syndicatedbk.com/
③Videology
(via http://www.brooklynvegan.com/videology-is-no/)
スクリーン数:1
座席数:約30
ブルックリンのウィリアムズバーグにあるVideology。入り口は普通にパブで奥に映画館。といってもブルーレイ上映でカフェ風の作り。普通のテーブルに椅子が並ぶ。ドリンク付きで22ドルは高い。ドリンク付きなのに、席に座るとオーダーを取りに来る、その日のスイカカクテルはあとで出て来るので、まず何かどうぞという訳だが断った。観たのは『ダーティ・ダンシング』、友達ときてワイワイ映画に反応しながら旧作エンタメを楽しく観る。これなら日本でもできそう。上映権をどう処理しているのかは聞きそびれた。
■Videology公式サイト:
http://videologybarandcinema.com/
④Spectacle
(via http://bedfordandbowery.com/2015/10/spectacle-theater-seeks-help-to-stay-in-williamsburg-after-tumultuous-summer/)
スクリーン数:1
座席数:50
Videologyのすぐ近くにあるSpectacle。シネフィルのボランティアだけで運営しているシネマテーク。アップリンク渋谷のスクリーン1より少し大きい。旧作ブルーレイ上映。ここも権利処理どうしてるんだろう。ボランティアがポスターも手作りしているという。『IN SEARCH OF AMERICA』という作品が上映されているはずだったが、この回は観客ゼロだった。
■Spectacle公式サイト:
http://www.spectacletheater.com/
⑤Williamsburg Cinemas
(via http://bushwickdaily.com/bushwick/categories/fashion-and-shopping/924-williamsburg-cinemas-now-open)
スクリーン数:7
座席数:237、108、57、57、126、178、117
今回視察した映画館でいちばんシネコンぽかった。Williamsburg Cinemas。7スクリーン、エンタメからアート系まで。更地に建てられたビルなので機能的だが味がない。ブルックリンの映画館はどこも基本午後からの上映。ここで、午後一番に観た『BEACH RATS』主役の男の子がゲイを自覚していくという物語だが、その回の観客は他には誰もいなかった。
■Williamsburg Cinemas公式サイト:
http://www.williamsburgcinemas.com/
⑥Alamo Draft House
(via https://www.amny.com/entertainment/alamo-drafthouse-brooklyn-to-open-on-gold-street-this-summer-1.11655444)
スクリーン数:7
座席数:40、76、94、110、114、170、188
ブルックリンのAlamo Draft Houseシネマ。全米チェーンを築くここの最初の映画館はSXSWが開催されるオースティン。飲食提供シネマはここが元祖。カーペットはシャイニングのオーバールックホテル仕様で統一されている。映画ファンのための映画館作りが伝わって来る。バーの入り口には映画人のデスマスクが並ぶ。
ここで、観たのは『PATTI CAKE$』。『SR サイタマノラッパー』のニュージャージーの女性ラッパー版。ポスターはいまひとつだけど、面白い!FOXサーチライト作品なので、日本での公開を期待。
『PATTI CAKE$』のポスター
■Alamo Draft House公式サイト:
https://drafthouse.com/theater/downtown-brooklyn
⑦Metrograph
(via https://www.tiff.net/the-review/new-york-meet-metrograph/)
スクリーン数:2
座席数:175、50
さて、次にマンハッタンの映画館を2つ紹介。最初はチャイナタウンのはずれにあるMetrograph。日本の雑誌でも紹介されていてちょっと有名。175と50の2スクリーン。倉庫だった場所をアンティック風にした新しくリノベーションした映画館。映画館の周りは倉庫が立ち並び、エンタメ感はない地域。コンセッションはデザインされて楽しげで写真写りはいいが、売ってるのはポッキーでした。
2階は本気のレストラン。相当おしゃれ。昼間なのでコーヒーだけ頼みました。フロアの一角はブックコーナー。映画本が売られていた。豪華な無料パンフを出版していて新作も含めた特集上映も多い番組編成。
■Metrograph公式サイト:
http://metrograph.com/
⑧QUAD CINEMA
(via http://www.hollywoodreporter.com/news/first-look-new-yorks-quad-cinema-debuts-chic-hollywood-makeover-992771)
スクリーン数:4
座席数:トータル500
マンハッタンのグリニッジ・ヴィレッジにあるQUAD CINEMA。半年前にコーエン・メディアがオープンしたNYで一番新しい映画館。コーエン・メディアとは不動産王のコーエン氏が経営する映画会社で、アップリンクで来年配給するアニエス・ヴァルダとJRの映画『Faces Places』も製作とアメリカの配給を行なっている。デザインはシュッとしているが映画館での飲食には興味がないようで普通のコンセッション。館内は飛行機の中のようで縦長。4スクリーン。券売は自動発券機なくスタッフ2人で対応。
入口横にはカフェバーが。早めにチケットを買ったお客さんがワインを飲んでいた。こ写真のワインサーバーは自動でグラスに注げて酸化を防げるので映画館のコンセにあれば便利かも。でも館内持ち込みだとグラスをどうするか、ガラスだと危ないし。訪れたのは遅い午後の時間帯、映画館のお客さんは年配の映画ファンが多かった。
■QUAD CINEMA公式サイト:
https://quadcinema.com/