1月10日(月・祝)、知られざるアメリカの産科医療の現状に迫るドキュメンタリー映画『ビーイング・ボーン』のイベントに産婦人科医の堀口貞夫氏が登壇しました。
『リアル!未公開映画祭』は好評につき1月20日(木)までアンコール上映が開催されています!『ビーイング・ボーン』は、明日1/15(土)の15:00からアップリンク・ファクトリーでアンコール上映!
詳細は公式ウェブサイトで!
http://www.webdice.jp/realmikoukai/
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◆レポート◆
はじめに堀口さんは、「自分は父のいた佐藤病院で1933年に出生したと思っていたが、今日のイベントのために姉に確認したら、自宅出産であったということが分かった!当時は自宅出産も少なくなく、戦後直後も自宅分娩が多かったが、1960年を境に自宅出産と施設出産での割合が50%で入れ替わり、今の日本では自宅出産は0.1%にも満たない」と自宅出産がどんどん減少していることを語りました。
そして最近発見したことの一つとして、「妊婦の死亡率はどんどん減少傾向にあり、自分が生まれた頃は700人に1人の割合だった出産時の妊婦死亡率が、今では17,000人のうち1人にまで減少している。お産は合併症などさまざまなリスクを伴うのだが、これは子どもが生めるといわれる生理が始まってから終わるまでの期間(生殖年齢)に普通に過ごしていて亡くなる人の10分の1の割合だ。産科医療がそれほどまでに発達してきたといえる」と語りました。
また多くの助産師が勤めている病院の問題点としては、「助産師が妊婦を激励しているときに、看護士の資格ももっているため病棟の仕事に連れて行かれるというのを耳にする。本来お産にずっと付き添っていてあげるべきなのにも関わらず、助産師は看護婦の仕事もできるため、看護婦さんでもできる仕事をふられてしまう場合があり、助産婦制度にも少し問題を感じる」と病院での助産師のあり方に疑問をなげかけました。
本作『ビーイング・ボーン』に関して「本作は自然分娩をすすめる映画だが、私を含む自然分娩を薦める医者のグループ内での最近の悩みの種は、自然のお産をしたいといいながら普段の生活が“自然”になってない人が多いということ。コンビニ弁当だけ食べてるとか運動をしないとか。必ずしも自然ではないというのが少し目立つようになってきた」と現代の生活にも疑問を呈しました。
最後に、「産院を選ぶポイントは、生む本人ががどう生みたいかによる。様々なリスクを考え、安全性を重視するなら病院になるだろうし、15時間ほどかかる長いお産をずっと激励してもらって付き添ってほしいのであれば、助産院になるだろう。しかし一方でリスクのあるお産ほど後々記憶として傷が残りやすいので、助産師さんのこまめなケアが必要になる」と締めくくりました。
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◆作品情報◆
『ビーイング・ボーン~驚異のアメリカ出産ビジネス~』
2008年 / アメリカ / 87分
出産は奇跡だ。通過儀礼であり、人生の自然な営みだ。
しかし出産は巨大なビジネスでもある。
女優リッキー・レイクは第1子を出産する時、自然分娩を望んだが不必要な医療介入を受けた。その後、監督のアビー・エプスタインと共にアメリカ女性の出産方法に疑問を投げかけた。
この映画では、個人的な出産の物語が驚くべき歴史的、政治的、科学的な見識、そして近年の産科医療システムについての衝撃的な統計と交錯する。エプスタイン監督は映画の製作中に自分が妊娠していることに気づき、製作の過程がより私的なものになった。
出産は生命の営みとみなされるべきか、それとも全ての分娩は高額な医療費のかかる救命救急として扱われるべきなのだろうか。
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◆『リアル!未公開映画祭』とは?◆
ビッグマックを食べ続けて話題を呼んだ「スーパーサイズ・ミー」の監督モーガン・スパーロックが、「オサマ・ビン・ラディンはどこにいるんだろう?」と質問しながらイスラム諸国を駆け回る『ビン・ラディンを探せ!』、地球上で最も隔絶された国である北朝鮮の秘密のベールを取り払う『金正日花/キムジョンギリア』、強制的に少年兵にさせられた経験を持つボクサーを追った感動のドキュメンタリー『カシム・ザ・ドリーム~チャンピオンになった少年兵~』、謎に包まれたアシッド・フォーク・シンガー、ジャンデックの正体を追う『ジャンデック』、金儲けのための出産ビジネスに迫る『ビーイング・ボーン』などなど、衝撃の事実を扱った9作品を渋谷アップリンク・ファクトリーにて12/25~1/20まで公開、他全国順次公開!(※好評につき、会期が1/20まで延長されました!)
詳細は『リアル!未公開映画祭』のホームページから
URL: http://www.webdice.jp/realmikoukai/