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投稿者:Y_pub


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終了巨匠ニコラス・レイ幻の遺作「We Can't Go Home Again」デジタルリマスター版で日本初の劇場公開

『理由なき反抗』など1950年代にハリウッドで大ヒット作を生んだ巨匠ニコラス・レイが最晩年にNY大の学生とともに作り上げた実験的な作品。

  • 日程
    2013年06月15日 ~ 2013年07月15日

  • 時間
    15:00

  • 会場
    K's cinema


We Can't Go Home Again
2013年6/15(土)~、新宿K's cinemaにてロードショー!
http://wcgha.com

1948年、“They Live By Night”(邦題:『夜の人々』)というまるでゾンビ映画のようなタイトルの犯罪映画で監督デビューしたニコラス・レイは、しかし夜の人というよりも夜明けの人であったと思う。何かが生まれる前の、兆しの人と言ったらいいか。揺るぎない確信に満ちた決定的な形を持つのではなく、何が出てくるか分からない曖昧さの中で、「その後」への予感に満ちた時間と空間を持つ映画を作り続けた。ヴィム・ヴェンダースの協力で出来上がった『ニックス・ムーヴィー』(78)の中にちりばめられた、彼の最後の長編『We Can't Go Home Again』の断片は、当時それを観た我々の誰をも興奮させずにはおかなかった。一体何なんだこれは!としか言いようのないその断片は、まさにそれらが向かうその先の風景を我々の脳裏に焼き付けたのだ。夜明けの向こう側の風景を……。
それは未だに誰をも戸惑わせるだろう。6面マルチのスクリーンで繰り広げられる、制御不能の可能性の躍動は、着地点のないまま時間を動かし引き延ばす。夜は明けないのではなく、夜明けが更新され続けるのである。映画はまだ生まれてさえいない。そんな確信に捕われる。フィルムの終わりが現実になった今、誕生の予感を更新し続けるこの映画を観ることは、我々に残されたたったひとつの希望であるだろう。----樋口泰人(boid主宰)

"もし映画が滅びてもニコラス・レイだけは再び映画を発明できるだろう――もっと望ましい形で"(ジャン=リュック・ゴダール)

「We Can't Go Home Again」について:
 1972年、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校の映画学科に講師として招かれたニコラス・レイが、トム・ファレル(『パリ、テキサス』ほか)をはじめとする学生たちをキャストやスタッフに起用して監督した『We Can't Go Home Again』は、1950年代に数々の大ヒット作を世に送り出した“ハリウッドの巨匠”=ニコラス・レイという一般的なイメージとは全く異なる“鬼才”として、最晩年に未知の領域へと踏み込んで魅せる、最後の傑作長編劇映画。

「映画のつくり方は教えられない。映画とは体験だからだ。」学生たちを前にニコラス・レイはこう語り、長編作品を撮ることで映画製作について教えるという彼の授業が始まった。2週ごとに学生たちは役割を交替することでクルーのそれぞれの仕事の立ち回りをおぼえていった。製作が進みクルーがまとまってゆくにつれ共同での生活や製作、人生と授業との線引きが薄れて関係は深まり、監督と交錯する学生たちのストーリーが、映画の構成要素となっていった。この作品は、レイの世代(裏切りの世代)と、彼の学生たちに代表されるような、社会とのかかわりから退いて自分のことだけ考える(セルフ・イメージを探究する)ようになった若い世代との間の運動の探究だ。これは何の映画なのかと聞かれるとレイはこう答えた。「我々が探していること。我々が探している自分自身について、つまりアイデンティティーについてだ。」

1973年に本作がカンヌ国際映画祭で上映された後も、レイは追加撮影や編集を繰り返した(編集作業にあたってはフランシス・フォード・コッポラが自身の所有するアメリカン・ゾエトロープ社のスタジオを提供)が、未完のままこの世を去る。
その後も一般劇場公開される機会もなく、永い間にわたり謎に包まれた“幻の遺作”となっていた。今回公開されるのは、1976年の時点で編集されたヴァージョンにもとづきデジタル復元されたもの。

本編は、その当時の政治状況を反映したドキュメンタリーという当初の製作意図を残しながらも、ナム・ジュン・パイクのヴィデオ・アートにも影響を受けた、過激な実験映画へと変貌を遂げている。
上映はマルチ・スクリーンで、複数の映写機を用意して学生たちの作品をコラージュにしてスクリーンに同時に投影する方式をとった。映画祭出品にあたってはリアプロジェクション投影したものを再撮影することで1本のフィルムにまとめている。8mm、16mm、35mm、ビデオと、あらゆる規格で撮った9万フィート以上の素材を、リアプロジェクション映像から統合されたイメージと一緒に35mmフレームに収めた。90分の上映時間のなかで、見る側は3~4時間分の映像を見ることになる。この複数のイメージにより、我々のものではない人生や考えを直線的に反映し、他人の物語と、それに影響された我々の個々の物語とが同時に展開する。この映画は政治状況と当時の文化を彼らの日々の生活や感情、個人や共同体のスピリットの影響を通して記録した新しい形の“ジャーナリスティック・フィルム”だ。

作品には一貫したストーリーは存在しない。学生とともに映画をつくる様子とフィクションとが、モザイク状にコラージュした映像と音響の破片によって構成され、鑑賞のたびに見え方、聴こえ方が変転する、万華鏡のような目眩く「教育」映画。

製作・監督:ニコラス・レイ / 脚本:ニコラス・レイ、スーザン・レイ / スタッフ:スティーヴ・アンカー、リチャード・ボック、ピア・ボード、チャーリー・ボーンスタイン、ダグ・コーエン、ダニー・フィッシャー、スタンリー・リュー、ルーク・オパール、ヘレン=カブラン・ライト/キャスト:ニコラス・レイ、リチー・ボック、トム・ファレル、ジル・ギャノン、ジェーン・ヘイマン、レスリー=ウィン・レヴィンソン/1973-2011年/アメリカ/カラー/93分/BD

ニコラス・レイ (Nicholas RAY) 
1911年8月7日アメリカ合衆国ウィスコンシン州生まれ。フランク・ロイド・ライトの下で建築を学んだ後、ニューヨークで左翼演劇活動に関わる。ラジオ番組や宣伝映画の制作を経て、RKOに入社。1947年に監督した『夜の人々』でデビュー(公開は1949年)。1950年代に入り、『大砂塵』(54)や『理由なき反抗』(55)を監督して大ヒットとなる。『暗黒街の女』(58)を最後にハリウッドを離れ、ヨーロッパに活動の場を移す。『北京の55日』(63)の撮影時に心臓発作を起こして以降は商業映画の撮影第一線から退く。
1972年にニューヨーク大学の講師に就任してからは、学生との共同制作に取り組む。ヴィム・ヴェンダースやジム・ジャームッシュ、ジャン=リュック・ゴダールなどヌーヴェル・ヴァーグやニュー・ジャーマン・シネマ以降の監督たちにも多大な影響を与えており、特にヴェンダースは1978年に『ニックス・ムーヴィー水上の稲妻』をレイと共同監督で製作、その死の直前の姿も作品の中に残している。1979年6月16日、肺がんで死去。

★フィルモグラフィー
1945 Sorry Wrong Number (TV)
1949 『夜の人々』 They Live by Night
『暗黒への転落』 Knock On Any Door
『女の秘密』 A Woman's Secret
1950 『孤独な場所で』 In A Lonely Place
『生まれながらの悪女』 Born To Be Bad
1951 『太平洋航空作戦』 Flying Leathernecks
『危険な場所で』 On Dangerous Ground
1952 『死のロデオ』 The Lusty Men
1954 『大砂塵』 Johnny Guitar
General Electric Theater (TV)
1955 『追われる男』 Run For Cover
『理由なき反抗』 Rebel Without a Cause
1956 『熱い血』 Hot Blood
『黒の報酬』 Bigger Than Life
1957 『無法の王者ジェシイ・ジェイムス』 The True Story Of Jasse James
1958 『にがい勝利』 Bitter Victory
『エヴァグレイズを渡る風』 Wind Across The Everglades
『暗黒街の女』 Party Girl
1959 On Trial (TV)
1960 『バレン』 The Savage Innocents
1961 『キング・オブ・キングズ』 King Of Kings
1963 『北京の55日』55 Days at Peking
1973 『守衛』 The Janitor(オムニバス映画"Wet Dreams"の一篇)
1974 『We Can't Go Home Again』
1978 Marco (Short)
1979 『ニックス・ムーヴィー - 水上の稲妻』 Lightning Over Water

同時公開!ニコラス・レイの妻スーザン・レイ監督によるドキュメンタリー『あまり期待するな』
『We Can't Go Home Again』をはじめとする晩年のレイの企画に深くかかわっていたニコラス・レイの妻、スーザン・レイ。本作は、スーザンがニコラス・レイ生誕百年を機に監督したドキュメンタリー。『We Can't Go Home Again』のメイキングという位置づけで、実験的なこの作品を様々な意味で大きく補完するのと同時に、巨匠でありハリウッドの異端児であるニコラス・レイの人間性と、彼が残した多大なる功績を後世に伝える作品となっている。
未発表のメイキング映像と当時のスタッフ&キャストの証言によって、謎の作品として扱われていた『We Can't Go Home Again』が製作された経緯を紐解いてゆくのと同時に、ジム・ジャームッシュ、ビクトル・エリセなど、ニコラス・レイを敬愛する映画作家たちの貴重なインタビューをふんだんに盛り込んでいる。
タイトルの『あまり期待するな』は、『We Can't Go Home Again』のなかで、ニコラス・レイがトム・ファレルとの会話のなかで発している言葉で、製作の初期段階で仮タイトルのひとつとなっていた。

製作:ニコラス・レイ財団、スーザン・レイ/監督:スーザン・レイ/撮影:ピーター・マッキャンドレス/編集:トム・ハネケ/ナレーション:スーザン・レイ/音楽:ティム・レイ、ストーミン・ノーマン・ザムチェック、マーカス・デ・プレット/原題 Don't Expect Too Much / アメリカ / 2011年 /カラー/ 70分)

http://wcgha.com

キーワード:

ニコラス・レイ / We / Can't / Go / Home / Again / 映画


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