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日程2016年06月18日 ~ 2016年06月25日
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時間14:00
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会場代官山AITルーム (〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町30-8 ツインビル代官山 B-403 )
短期集中講座 MAD WORLD vol.2 : 多文化主義が今日の東京で持つ意味について考える
講師:近藤健一(森美術館キュレーター)
日時:6月18日(土)、6月25日(土)14:00-17:30 *2日間
会場:代官山AITルーム
1990年代の欧米で研究が盛んになった多文化主義ですが、2001年米国同時多発テロ事件や2015年パリ同時多発事件に象徴されるように、それは失敗だったとする説もあります。しかし、東京オリンピック開催に向けて外国人が急増する東京という文脈で、多文化主義を再考することは意味があるように思えます。日本とは違う文化に属し、「空気を読む」ことを期待することはできない彼らと共生していくためのヒントについて、多文化主義の基礎的な理論とそれに関連する現代美術作品を通じて、みなさんと一緒に考えることが、本プログラムの目的です。
第1回:差別社会日本
6月18日(土)14:00 – 15:30
本来、人種、文化、宗教は別々のものですが、国民の大半が日本人であるという自覚を持ち日本文化に誇りを感じ無宗教者であるこの国は、この3つの要素が未区分な、国際的にみて非常に特殊な国家だと言えるでしょう。同質であることを当たり前とし、それが社会的な権力と結びついて、異質なものを排除しようとするこの国は、差別に満ち溢れています。この回では、日本は本質的に差別的である、という立ち位置から、女性、性的マイノリティー、外国人といった人々に対するステレオタイプや差別が生まれる構図を、現代美術作品を通じて考え、今日の日本社会を分析します。
作家:森村泰昌、やなぎみわ、ダムタイプ、嶋田美子、照屋勇賢、金仁淑、高嶺格など
第2回:移民社会ヨーロッパという文脈の中での多文化主義
6月18日(土)16:00 – 17:30
ロンドンやパリなどヨーロッパの大都市のいくつかは、国外からの移民やその2世・3世が在住する、人種の坩堝です。この大きな原因は、非西洋地域の被植民地化とそこからの移民の流入で、生活習慣や文化が異なる人々の共存には、しばしば衝突も伴います。このような社会問題の解決策の1つとして、ヨーロッパでは多文化主義は必要に迫られたものだったのです。この回では、西洋白人中心主義が生み出した「オリエンタリズム」という言説やポスト・コロニアリズムの主要な著作の一部を読み、人種・文化的マイノリティーの作家が社会に対して異議申し立てを行う美術作品が生まれた背景について考察します。
著作:エドワード・サイード、スチュワート・ホール、小笠原博毅、ダイアナ・フスなど
作家:アイザック・ジュリアン、スティーヴ・マックイーン、クリス・オフィリ、カデル・アッティア、ハリーム・アル・カリーム、シャリーフ・ワーキドなど
第3回:異種混合。それを隠蔽・排除する力とは何か?
6月25日(土)14:00 – 15:30
人種差別や異端とされる文化への偏見の裏には「純粋で正統的な人種・文化」という概念が隠れています。最近のヨーロッパ各国の保守政権が移民受入れを制限したり、極右団体が移民排斥を訴えたりする、その拠り所の1つは、この「純粋なイギリス人」「純粋なデンマーク人」という純粋主義にあると言えるでしょう。しかし、人・モノ・情報が地球規模で移動・交換される現代社会において「純粋なもの」など存在するのでしょうか?むしろ雑多な要素の混合体としての個人が複数集まって、国家が形成されている、というのが実情なのではないでしょうか?この回では、複数の異質な文化が混合された状態、すなわち「ハイブリッド」という概念を軸に、美術作品を読み解きます。
著作:サラット・マハラジ、トリン・ミンハ、ホミ・バーバ、北原恵など
作家:ジャナーン・アル=アニ、フィオナ・タン、インカ・ショニバレなど
第4回:異質な者同士が共生するために日本における多文化主義の可能性について考える
6月25日(土)16:00 – 17:30
日本は単一民族国家である、という定説がありますが、厳密にはそれは真実ではありません。在日コリアン、華僑、沖縄、アイヌなど、日本の中には差異があり、また「ハーフ」という日本独自の特殊な概念もあります。それらの差異を「単一民族国家」の名のもとに「純粋な日本人」へと同化させようとする同一化主義で押し切ってきたのが近代の日本だったと言えますが、この方法は今後も有効なのでしょうか?この回では、江戸時代にすでに見られる日本の中のインターナショナリズムを起点に、侵略者としての側面も考慮しつつ、日本における多文化主義の可能性について考えます。意外なことに東京近郊にはミャンマー人やクルド人といった小さな外国人コミュニティーも存在する今日、現代美術作品を読み込んでみると、日本における多文化主義の芽が既に芽生えていることが分かるのです。
著作:タイモン・スクリーチ、徐京植、レオ・チン、新城郁夫など
作家:高山明、ディン・Q・レ、山城知佳子、東松照明、山本高之、呉夏枝など
[概要]
日時:2016年6月18日(土)14:00 – 17:30(レクチャー1、2)
2016年6月25日(土)14:00 – 17:30(レクチャー3、4)
会場:代官山AITルーム
主催:NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]
講師:近藤健一(森美術館キュレーター)
定員:20名(先着順)
受講料:1)一般 22,000円(税別)
2)学生/MAD受講生・修了生/AITメンバー 20,900円(税別)
*お茶とお菓子付き
[対象]
– 多文化主義という言葉はどこかで聞いたことがあっても、それがどのように美術と関係し、
なぜ今日、東京で生活する私たちにとって重要なのかピンときていないという方。
– 日本社会の排他的性質について、きちんと考えてみたい方。
– 在日コリアンや沖縄米軍基地問題に関心がある方。
(多文化主義についての理論的知識は問いませんが、一部英語の文献も使用するため、多少の英語読解力があるとより理解度が高まります。)
[講座の形式、課題]
レクチャー型を基本として、第1週と第2週の間にインターネット等でできる簡単なリサーチの宿題あり。
[ お申込み方法 ]
mad@a-i-t.net宛てに、タイトルを「MAD WORLD vol.2参加希望」とし、お名前(ふりがな)、お申し込みの種別、ご連絡先電話番号、お住まいの都道府県を明記したお申込メールをお送りください。追って、AITよりお振込先等をお知らせします。
[講師の紹介]
近藤健一(森美術館キュレーター)
1969年生まれ。ロンドン大学ゴールドスミス校美術史学科修士課程修了。2003年より森美術館勤務。ジョン・ウッド&ポール・ハリソン(2007),小泉明郎(2009),山城知佳子(2012)の個展を企画した他,ビル・ヴィオラやゴードン・マッタ=クラークの映像作品上映プログラム(2015)を企画。「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」(2008),「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?」(2010),「アラブ・エクスプレス展」(2012),「アンディ・ウォーホル展」(2014)を共同企画。2014―15年には,ベルリン国立博物館群ハンブルガー・バーンホフ現代美術館で客員研究員を務める。