(C)PvHFilm 2008
館長、建築家、学芸員等、それぞれが各々の思惑を抱いて美術館の改築を計画するなか、猛烈に反対し工事を中止させる市民達。
決まっては立ち消える計画を延々と繰り返し、だんだん疲弊して行く関係者達のその苦悩は、そのままこの映画のストレスに繋がっている。進みそうで進まないのらりくらりとした工事の様子を観客はドキュメンタリーとしてそのまま体験する事になるのである。
(C)PvHFilm 2008
だがそれを越えるほどに魅力的なのが美術館、そして絵に対し、本物の情熱と夢を持った人々が活き活きと描かれている点だ。
「緊張する」と言いながら目をキラキラさせてレンブラントの絵画を修理する修復家、
「この美術館のなかにいることが俺の望みだ」と鼻を膨らませて言い放つ頑固な警備員、
日本から送られてきた金剛力士像の梱包をまるで涎を流さんばかりの様子でといていくアジア美術担当の学芸員。
(C)PvHFilm 2008
入り組みすぎた様々な事情から美術館完成へはなかなか近づいていかないが、彼らのその熱だけは確かに伝わってくる。その熱こそがこの映画の見所であろう。
そして熱といえば工事に反対する市民達の熱量も日本人からすればうらやましくなるほどに強く感じられ、市民一人一人の力の強さをまざまざと見せ付けられる。今作は美術館を工事する側から描いているが、逆に反対する市民側から描いたとしたら、また違った面白さがあったかもしれない。
いずれにしても、いつ訪れるともまったくわからない美術館の開館をひっそりと眠るように待つ名画たちがとてもせつない。 観賞されるのを今か今かと待っている彼らが今も人目に触れない状態であることこそ、この物語の最大の不幸であるだろう。
(C)PvHFilm 2008
映画『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』
8月21日(土)、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開!
監督:ウケ・ホーヘンダイク
脚本:ハンス・ドルトマンス、ウケ・ホーヘンダイク
撮影:ウケ・ホーヘンダイク
編集:ハイス・ゼーヴェンベルヘン
製作・提供:ピーター・ファン・ハイステ
配給:ユーロスペース
2008年/オランダ映画/120分/オランダ語・英語・スペイン語/カラー/デジタル
公式サイト