骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2011-04-15 16:58


[CINEMA]『ピンク・スバル』クロスレビュー「この作品から見える日常生活や気質は、きっとイスラエルの人たちの本質を突いている」

日本語、英語、アラビア語など、多国籍の言葉が飛び交い、日本の下町のようにパワフルな人々が動き回る。
[CINEMA]『ピンク・スバル』クロスレビュー「この作品から見える日常生活や気質は、きっとイスラエルの人たちの本質を突いている」
映画『ピンク・スバル』より

主人公ズベイルの人生の夢であった買ったばかりのスバル・レガシィを車泥棒に盗まれるところからスタートするこの物語は、舞台となるイスラエル国内にあるパレスチナ人の住む地域の猥雑な街並みとともに、そこに住む人々の日常をつぶさに捉える。埃っぽい街角や、はっとするほど美しい死海の海岸線といった忘れがたいシーン、そして家族全員で食事を取り、子供たちと戯れ、労働にいそしむ。世界のどこにでもある家族の風景は、ニュース番組の画面からは決して感じることのできないアラブの国のリアルを伝える。

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映画『ピンク・スバル』より

愛する妹の結婚のために奔走するズベイルと、彼を中心とした人間模様と悲喜こもごもを丁寧に描いていくことで、幸せとはなにかという極めてシンプルで普遍的な問いかけを投げかける。彼がピカピカの新車を“ミス・レガシィ”としてあがめる(“彼女”を演じるジュリアーナ・メッティー二はズベイル役のアクラム・テラウィの妻だ)一方で、最終的に家族との繋がりを獲得する祝祭感を主軸に据える。そうすることで、複雑な民族問題をバックグラウンドにしながら、「ケ・セラ・セラ」(なるようになる)というテーマ曲がぴったりな、あっけらかんとポジティブな後味を残すところに、小川和也監督の手腕が発揮されているように思う。

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映画『ピンク・スバル』より

▼『ピンク・スバル』予告編





映画『ピンク・スバル』
4月16日(土)より渋谷アップリンク他全国順次公開

製作:コンパクトフィルム(イタリア)、レボリューション(日本)
プロデューサー:宮川マリオ、田中啓介、宮川秀之、高鍋鉄兵 ほか
監督:小川和也
脚本:小川和也、アクラム・テラウィ、ジュリアーナ・メッティー二
撮影:柳田ひろお
スチル:m.s.park
音楽:松田泰典
挿入歌:雪村いづみ「ケ・セラ・セラ」
エンディング曲:谷村新司「昴」
2010年/イタリア・日本/アラビア語・ヘブライ語・英語・日本語/16mm/カラー/シネマスコープ/98分
原題:Pink SUBARU
後援:イスラエル大使館、駐日パレスチナ常駐総代表部

公式サイト


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