2011-04-15

『ピンク・スバル』クロスレビュー:どこにいたっていつか「スバル」は見つかるはず、パレスチナ/イスラエルを舞台にした一台の車をめぐるどたばた人情劇! このエントリーを含むはてなブックマーク 

ケ・セラ・セラ
心配せずに神様の手に任せましょう…

パレスチナ自治区に留学中、噂には聞いていた「車泥棒」の話が映画になる?
監督は日本人?突然の雨に降られつつUPLINKへと、わくわくしながら足を運んだ。

実直に20年働いた主人公ズベイルはやっと夢のブラック・メタリックのスバル・レガシィを手に入れ、もうすぐ妹も結婚する。この上ない幸せに胸をときめかせ、街では新車を披露してお祭り騒ぎ。ところが翌朝目覚めたら…スバルが、ない!!!そこから始まるこの映画では…強い色を持ったキャラクター達がパレスチナ/イスラエルの街を奔走、そのおおらかな景色のなかに彼らがユーモアたっぷりに溶け合う。音楽だってちゃんぽん!

確かにここでみる日常は、遠い地での日常は、
日本で生活している私たちにはなかなか伝わってこない。ただちょっと旅をするように…その地にはどんな音楽が流れていて、何を食べていて、どんな車が走っていて、家族とどんなことを話しているのかな?と少し想像力を働かせてみる。すると、どこにいたっていつの時代だって、そばにいる人を喜ばせたいという気持ちはきっと変わらないんじゃないかな、ということに気づく。そういう当たり前のことをこの映画は改めて気付かせてくれるのかもしれない。私たちに“スバル”のストーリーがあるように、彼らにも“スバル”のストーリーがあるって。

ただパレスチナ/イスラエルに「日常」があるのも当たり前だけれども、日本では「非日常」とされる占領が60年以上の時を経て見えづらい形でもこの地で日々の当たり前となっていることを忘れてはいけないと思う。それはモロッコ系イスラエル人のジョーダンが20年ぶりにトゥルカレムの生地屋を訪れることに見えるかもしれないし、パレスチナ/イスラエルの車事情に見えるのかもしれない。ちらっと映像にある検問所かも。

そんな現実の中でも人々は歌い、踊り、泣き笑い、生きている。
ケ・セラ・セラ!インシャーアッラー(アラビア語で「神がお望みであれば」)!悪く言えば適当、良く言えば大らかな人たちに出会ってみたい人や振り回されてみたい人(笑)にぜひおすすめです!

妹や婚約者を喜ばせたい、友達を助けたい、お客さんを助けたい、車に乗りたい…それぞれの立場もそれまでのけんかも超えてみんなの“幸せ”が重なった時、それはピンク・スバルを取り戻した時。イスラエル、パレスチナが同じかたちの“ピンク・スバル”を見つけられるのはいつになるのだろう、諦めなければきっとみつかるはず。

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shiori

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