2011-04-16

『ピンク・スバル』クロスレビュー:どんな悲劇だって「物語」になる このエントリーを含むはてなブックマーク 

 生きる事は不条理であって、常にソレとの背中合わせだ。だからいつ自分の身に「決して耐え切れない悲しみ」が起こったとしても、まったく不思議ではない。ただ、そんな事を言ってもいざソレに直面した時、誰もがそんなに冷静でいられる訳がない。人は、悲しみ、もがき、泣き、八つ当たりして、呑んだくれたりもするだろう。「俺の人生は呪われている」などと冷静な時には考えられない様な事を、大真面目に叫んでいたり(笑)。
 「ピンクスバル」の主人公・ズベイルは、自身に降り掛かった「人生最大の悲しみ」に、ヨロヨロになりながらも何とか立ち向かっていく。そんな彼に、手を差し延べてくれる者、一緒に悲しんでくれる者、責任を感じる者、ほくそ笑む者、様々な人間がそこに関わり話は進んでいく。光が見えたり、消えたりしながら・・・。そして、そんな光景を見ながら教えられる事がある。どんな不条理や悲劇だって「物語」になるんだって事を。悲しみの道中にだって笑える瞬間がり、新たな出会いもある。フィクションとはいえ、1本の映画になってしまうほどの。そう考えると、順風満帆なんて面白くも何ともないよな。いや、多分そんな人間なんていない。殆どの人間はつまずいたり、壁にぶち当たってきた筈だ。だからこそ「ピンクスバル」を何時、誰が見ても、きっと心をダイレクトに刺激されると思う。特に主人公・ズベイルの愚直で滑稽な姿は見ていてカッコ悪くて、カッコよく、愛くるしいキャラクター。そんなに強い人間ではいが、何とか立ち向かう姿は、圧倒的大多数の「そんなに強くない人間」の共感を得るだろう。そして、この映画の舞台となっているは、イスラエル・パレスチナという今も紛争地帯として、キナ臭い匂いプンプンの国々。自分とは生きる世界が違う人達と勝手に誤解していたが、映画を観ているうちに自然とそれは解かれていく。よく考えれば当たり前の事か。どこの世界にだって日常があり、僕等と同じような事で、喜んだり悲しんだりしてるんだ。現にこの映画は、戦争で仲間を失ったとかの類の話ではなく、大切なものが盗まれて、それをどうにか取り戻そうという、日本でだって当たり前に起きている事件の話なんだから。何より想像もしていなかった美しい風景は必見!

 最後にこの映画を見終わった後、僕に3つの感情が芽生えた。1つは、イスラエル・パレスチナという「危険」な国へ行きたくなってしまった事。2つめは、スバル・レガシーという車が欲しくなってしまった事。最後は、こんな変化球をデビュー作で投げ込んでくる小川和也という若い映画監督の才能に今後目が離せなくなってしまった事だ。レガシ~

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ピンクスバル


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