(c)2008「ノン子36歳(家事手伝い)」Film Partners
三十路半ば、バツイチ出戻り、実家の神社で家事手伝いのノブ子(通称ノン子)。やる気なしのノン子の前に、神社の祭りでヒヨコを売ってひとやま当てようという若者、マサルが現れた。世間知らずで、情けないけど、ひたすら一途で真っ直ぐな年下クンに、笑顔を忘れたオンナが、閉ざしていた心と体を少しずつ開いていく・・・。
■DIRECTOR'S STATEMENT
無限にある映画創りの要素の中で、僕にとっては「俳優との出会い」が占める割合は極めて大きい。プロとしてどうかと思うが、ハッキリ言ってそれによって作品の出来が左右されることもある。今回は一人の女優との出会いがあった。彼女無しには、この作品は成立しなかった。
女優とは、坂井真紀、その人である。
『青春☆金属バット』では特殊メイクで巨乳役を、前作の『フリージア』では冒頭5分で無残に撃ち殺される役を演じてもらった。シャレの通じない人にならオ ファーした時点で怒られてもおかしくない役どころだが、坂井さんはどちらも嬉々として演じてくれた。
こうなると坂井さん主演で一本撮らなきゃ気が済まなくなる。そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、『青春☆金属バット』の木村俊樹プロデューサーから「真 紀ちゃんで何か、男と女の話って出来ないかなあ?」と声を掛けられた。待ってましたとばかりに僕は一本の短いプロットを引っ張り出してきた。実はこれ、数 年前にラブコレクションという企画で『揮発性の女』を撮った時に考えたもう一本のプロット。女性映画に挑戦したいという想いで、脚本家の宇治田と共に考え た。当時はカタチにならなかったが、以来ずっと心のどこかに引っかかっていた。
このプロットに坂井さんが乗ってくれたことで、「ノン子」は静かに動き始めた。
とはいえ、それからの道のりは決して平坦なものではなかった。映画作りにおいてはままあることだが、数々の胃が痛くなるような困難が待ち受けていた。何度 も多摩川に身投げしたいと思った。しかし、そんな時でも常に、坂井さんは僕を信頼して待っていてくれた。時には背中を押してくれさえした。その気持ちに応 えるべく、現場に入ると僕は、思う存分、ありったけの愛を込めて坂井真紀を陵辱した。
結果、今までで最も大切な映画が完成した。
(熊切和嘉)
『ノン子36歳(家事手伝い)』
2008年12月20日(土)より銀座シネパトス、ヒューマントラストシネマ文化村通り、千葉劇場、他ロードショー
監督:熊切和嘉
出演:坂井真紀、星野源、鶴見辰吾、津田寛治、佐藤仁美、新田恵利、宇津宮雅代、斉木しげる
2008年/日本/105分/R-15
配給:ゼアリズエンタープライズ