「CGアクションものなら、香港映画やハリウッドの領分」なんて思っている人が、この映画を見たら、考えを変えざるおえないだろう。それくらいにこの「ラ・ワン」は、ハリウッドにも香港にも負けない、よくできたCGアクション大作だ。
まず戦うのがゲーム・キャラ、という設定がいい。あらかじめゲーム画面以外に特製フィギィアを作っておいて、そこにキャラの魂を入れるというのは、ホラー映画の設定をうまく引用した演出でうならされた。いきなりゲームが動いてアクションが始まる、というのではなく、ストーリーの流れの中から次第にアクションへと展開していくから、見ている側は違和感なく、CGの映像へと入っていける。この作品の監督は、相当にエンタテイメントの外国映画から学んでいるものが多いようだ。
ただ、ゲーム・キャラ以外の人間のキャラ設定を説明するために、映画が始まってから40分近くを要してしまっていたのは、少し冗漫なものを感じた。致し方ないことだが、これを15分くらいにまとめていれば、もっと引き締まった、いい作品になっていたと思う。これからご覧になる方は、最初の30分から40分に、かったるさを感じつつもお付き合いする気持ちで見ていただきたい。
いきなり、と言えば、インド映画は突然ミュージカルが始まる、ことで有名だ。しかし、それは先入観だと、これまでも何本かのインド映画を見てきた者として言っておきたい。
インド映画は、とりあえず万人が見ることができることが基本線だ。だから、露骨なラブシーンや愛の語らい、というシーンを入れるのはあまり好まない。そのかわりに、男女が好きあっている、というのを表現する意味も含められた、万人が見られる楽しいミュージカルを取り入れている。だから、ダンスをする主演の男性や女性は、時として、とても艶かしい、セクシーに踊る場合がある。
今回の「ラ・ワン」でも、主演の男女の愛の表現としてミュージカルが出てくる。そういうシーンが入っていいところでミュージカルになるから、特に違和感など感じない。ハリウッドや香港のアクション映画でも、どこかで必ずラブシーンが入ったりするものだから、その変わりというふうに解釈すれば、突然にミュージカル、なんて思わないはずである。
ともかく、「ラ・ワン」はこれまであまりインド映画を見てこなかった人にもおすすめしたい、エンタテイメントの面白さに満ちた作品だ。またCG特撮も、ムンバイの駅舎が崩れるシーンが圧巻!!。見どころの多さに圧倒されることうけあい、の大作である。