主人公はアンドレスという8歳の少年で、少年の目からみた家族やアルゼンチンの姿を描いているので、自然と映画をみているものもアンドレスと同じ立場でみることになる。
すなわち、説明的な言葉はなく、少年と同じように、交通事故で突然死んでしまった母親を思い出し、威圧的な父親に反発し、一方的に校長室行きを命じる学校の先生に憤る。
アルゼンチンの軍事政権は直接映画には登場しないので、少年と同じように、最初のうちは周りの大人たちが何をしているのか、昼寝をしなさい、となぜ言われるのかわからない。
しかしながら、徐々にアンドレスも見ている私にもわかってくる。
そして彼は昼寝なんてしたくない、という。
見て見ぬふり、という大人たちに対する彼の反抗ともとれる。
子どもは無邪気と言うが、アンドレスのまなざしはだんだん変わっていく。
かわいらしい少年だったはずの瞳はいつの間にか鋭い眼差しに。アンドレスは何も言わないが、大人たちが何をしているのかわかっている。
祖母のオルガも最後にその恐ろしさに気がつく。子どもは大人の鏡というが、まさしくアンドレスはオルガの鏡となっていた。
これはアルゼンチンだけの話ではなく、今の日本でも同じかもしれない。
そういう意味で怖いけれど、見るべき映画だと思う。