2010-04-30

1年以上ぶり このエントリーを含むはてなブックマーク 

気がついたら1年以上も書いてなかった。日記じゃなくて年記だね。
ま、ちょっと、いろいろあったんです。

でもしまったなー。
2009年7月に、カルチエミュジコの初の新作委嘱コンサートをやったのに、そのこと全然書かなかったよー。ウィレムであんなに一人盛り上がりしたのになー…。ちょっとそこまでさかのぼるか。

去年のコンサートは、〈カルチエ・デテ2009 エディット・カナ=ドゥ=シズィ コンセール・ポルトレ QUARTIERS D'ETE2009 EDITH CANAT DE CHIZY CONCERT PORTRAIT〉。デテってなんやとか聞かんといて。ポルトレはポートレイト、一人の作曲家の作品だけ集めたコンサートつーことです。
http://quartiersmusicaux.blog77.fc2.com/blog-category-12.html

なぜ委嘱なんてことを思い立ったかは、カルチエミュジコのブログにも書かれているけど、
http://quartiersmusicaux.blog77.fc2.com/blog-date-20100215.html
1998年、パリのペニッシュ・オペラとの出会いに遡る。その時はコンサートの企画のキの字もなかったんだけど。サン・マルタン運河に浮かぶ動力付の二つの艀(はしけ)船の劇場で、その時の演目は現代ものではなかったけれど、細長い艀の中の中の15M×5Mの細長い空間の、長手方向に3列客席をしつらえて、残った異常に細長い舞台空間を見事に使いこなして、ピアノ伴奏だけの小さなオペラの演出に舌を巻いたのを思い出す。その時のチャーミングなバリトン歌手リオネル・パントルとは、後に東京でジョルジュ・アペルギスの声のための作品で再会して、一層驚かされることになるのだが。

演出家ミレイユ・ラロッシュ率いるペニッシュ・オペラは、近代(とそれ以前)の埋もれた佳作の発掘と、新作の上演を二本柱にして、小さいオペラとコンサートを続けている。図書館で楽譜を閲覧して探すという文化的な背景の違いに驚かされつつ、上演リストにはフェラーリ、アペルギス、ルヴェルディといった現代の作曲家たちが名を連ね、その名前を当時は知らなかった私は、驚くべきであることにさえ気がつかなかった。 
http://www.penicheopera.com/

そこからカルチエミュジコの新作委嘱シリーズまでは、まだまだいくつものミッシング・リングがあるかもしれないが、まあとりあえずおいておこう。個人的には、現代の演奏家が現代の聴衆の前で、古典ばかりを演奏することの奇妙さを思わないでもなかったし、現代美術より現代文学(とはあまり言わないネ)より遠いところにいる現代音楽が、もう少し近くにいてもいいかという気がしないでもなかったし…。

そうして、フランスの作曲家に新作を委嘱したい、その作曲家を選ぶのに協力してほしいとミレイユに頼むことになり、2008年、ヴァイオリンのゆりえさんがペニッシュ・オペラの”ランディ・ドゥ・ラ・コンタンポラン”のコンサートで、ミレイユに紹介されたのが、2009年のエディットであり、今年のレジスであった、というわけだ。

はー。
で、去年のエディットの話。

アカデミー初の女性作曲家とか、ブザンソン指揮者コンクールの審査員とか、すごい肩書きなんだけど、日本ではほとんど知られていないエディット・カナ=ドゥ=シズィ。いろいろすっとばしますが、委嘱だけじゃなくて、全部彼女の作品のコンサートをやろうということになって、招聘のための助成も申請したけど全部はずれて、たまたま5月にブザンソンの日本での予選のために来日したエディットに会うことができて、その後エディットが「7月行く!」と言ってくれて…コンフェランスもできて(誰も来なかったけどさ)、作曲家立ち合いのもとリハーサルもできて、7月11日の横浜でのコンサートにこぎつけたのだった。

エディットは案外普通のおばさんで、一緒に来た夫のフランソワ(映像作家)も普通のおじさんで、二人してビールかっくらって、朝から熱心にリハーサルに立ち合ってくれたのでした。

で、彼女の音楽は…。
最近、ちょっとは分別がついてきて、身の程をわきまえはじめて、オイラのごとき耳で音楽のこと語るのは、すごい不心得者だということが、そこはかとなくわかりはじめた。噴飯ものですよね。でも身の程知らずを貫きますので、音楽ご専門の方は、ご飯噴いてください。すんません。ここで聴けます。
http://www.edithcanatdechizy.com/
実は、CDで最初にエディットの音楽を聴いた時は、あんまりピンとこなかった。わりと神経逆なで系?とか思って。でもコンサートで実際に、彼女の音楽の響きの中に身を置くと、違うんだよね。緻密で。いらついて畳みかけるみたいに聴こえてた音が、アンサンブルの楽器の豊な対話であったことに気がついた、云々…。

委嘱作品は、ヴァイオリンのための『砕けてもあり、、、』(EN MILLE ECLATS pour violon seul)。上田聴秋の「砕けても 砕けてもあり 水の月」という俳句にインスピレーションを得たという、オクシダーンとオリアーンの異文化交流的な。よかったです。

ということで、カルチエ・デテ2009終了。
これで今年のレジス・カンポの番宣にとりかかれる。

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