ミュージカルを除き、音楽が主題である映画はあまり観ないようにしている私がこの「エル・カンタンテ」を観ようと思ったきっかけは、ジェニファー・ロペスが製作したということからなのです。彼女の作品をたくさん観ているわけではないですが、バイタリティー溢れる行動力というか気迫に敬服しているのです。以前観た「ボーダータウン/報道されない殺人者」は、彼女には全然似合っていないのに、この事件を明るみにさせなければというその熱意力投に大変敬服しました。そんな彼女のメッセージもあって、新型鳥インフルエンザがあの国で何故流行してしまったのか、わかったような気がしました。(誤解ならば関係者の方々,スミマセン)
今回の「エル・カンタンテ」、ストーリーや監督の演出という点では少しばかり凡調な作品といわざるえないのですが、キャストと音楽という点からみると、素晴らしい作品と思いました。マーク・アンソニー演じるエクトル・ラボーはラボーよりもラボーらしいと言ってもよいのでしょう。エンドロールの合間に出てきた本人はふっくらして、とても病人には見えなかったし、最後の致命的なダメージが映画のとおりだとするならば、写真の彼がそんなことするような人物にはゼンゼン見えませんでした。一方、マーク演じるラボーは、病的で誘惑に弱く、せつな的な感じが良く出ていました。有る意味アレだけ弱い人間だからこそ、魅力的な歌を歌えるのだろうと思ったほどです。そう、天は二物を与えず、というやつです。人間、健全な人間よりも、不健全な匂いを持つ人間を好む気持も、なんだか伝わってきたような気がします。一方、ジェニファー・ロペスの方も、映画の役と一緒で、自分がマネジメントして夫のマー君をスターにしたいという気持だったのでしょう、そんな気持が伝わってきたような気がします。希望を言えば、もう少しマークが歌を歌っているシーンがみたかったのですが。それでも、サルサ音楽の素晴らしさと、マークをスターにしたいというジェニファーの気迫めいたものが伝わってきました。